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最強の主人公は作者に反旗を翻す  作者: 無知の無知
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【最終話】一歩、次の世界へ

 最果ての村。ジェイドの活躍により少し活気を取り戻したこの村で、とある夫婦が子供と一緒に雪の砂漠を歩いている。


・・

・・・

ジェイド「ジェス、ロッタ、もう少しだからな」

ジェス「父さん、疲れた~」

アスタ「ジェス、文句言わない。パパが若い時はこんなことで弱音を吐かなかったよ」

ジェス「そんなこと言ってもさぁ…」

アスタ「最強のお父さんの血を引いてるんだから、ジェスももっと強くならないと」

ジェス「父さんってそんな強かったの?」

アスタ「もちろん!」

ジェイド「おい、母さん…」

アスタ「いいでしょ?パパは最強の勇者だったんだから」

ロッタ「パパ、最強?」

ジェイド「…あぁ、最強だったぞ!昔はもっと強かったんだからな!」

ロッタ「見た~い!」

ジェス「はぁ、今はどうなのさ」

アスタ「最強に決まってるでしょ。私達を守ってくれてるんだから」

ジェス「はーい」

ジェイド「ジェス、父さんはもっと強くなるから、一緒に強くなろうな!」

ジェス「あぁ、むさ苦しい~」

・・・

・・


「優作、さっきからご飯って呼んでるんだけど」


 生まれた年齢が先なだけの凡人、姉貴が部屋に入ってくる。はぁ、とため息をつき僕はパソコンを閉じた。この天才、志道優作は『名も無き勇者の下克上』という漫画を漫画サイトに投稿し、一躍有名になったのだ。その閲覧数…、八人。姉貴と酒井、木口、原、柿原さんが読んでくれているらしいから、実質三人にしか読まれていない。これが、天才の初投稿か…、現実の厳しさを突きつけられて滅入ってしまいそうになる。完成したときはあれだけ自信があったのに、いざ投稿してみると、名前が雑だとか、最強要素が少ないとか、技や設定が有名な漫画と被りがちとか、そもそも名も無き勇者の下克上なのに名前があるとか、どんどん改善点が出てくる。もっと時間をかけても良かったのかもしれない…。


「優作、漫画、悪くないじゃん。ちょっとなめてたかも」

「投稿数が全く伸びてないんだけど。正直な感想、どうなのさ」

「いや、プロに比べたらまだまだ稚拙だから。この程度の漫画で有名になるとか、無理無理」


 姉貴に辛辣な言葉を突きつけられる。今までと違いしっかりと読んだうえでの感想だから、なかなか胸に刺さる。


「でも、最初はこんなもんなんじゃない?ってか、次の漫画とか考えてるの?」

「いや、長年描いてきた漫画が終わったばっかりだから、なかなか次に移れないって。でも、一応考えてはいる」

「そ。ま、次はもっと面白いもの描きなよ~」


 そう言って姉貴はリビングへ向かう。確かに、次の漫画の案は考えている。しかし、なかなか面白い世界が見えない。主人公が五重人格で、その人格を変えながら戦うとか、主人公の男がヤンデレ、超ドS、黒魔術っ子、悪女に好かれて必死に命を守りながら学園生活を送るとか、それっぽいものは見えているがどうも話がまとまらない。いっそのことジェイドの続編を描いてしまおうかとも思ったが、それはジェイドに怒られてしまいそうだったので、やめた。せっかく最強の重荷から解き放たれたのだ、ジェイドにはこの先の生活を楽しんで欲しい。はぁ、もっと伸びないかな…、と閲覧数のことに頭が戻ってしまう。まぁ、クオリティはまだまだだよな。天才として、もっと頑張らなければ、凡人に落ちてしまう。これからだよな、これから。…でも全力でやり切ったつもりだ。だから、これで許してくれないかな。ジェイドがどう思ってるかは、わからないけど。

 僕は部屋の方を振り返り、扉を閉め、リビングに向かった。ご飯を食べたら、なんでもいいから少し漫画を描いてみるか。そこには予想外の出会いがあるかもしれない、そう考えると少しわくわくしてきた。待ってろ、まだ見ぬ次の主人公、ジェイドよりもすごいやつじゃないと許さないけどさ。気がついたら、僕は駆け出していた。


・・

・・・


ジェイド「…ありがとな、優作。頑張れよ!」


・・・

・・




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