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アイ・ノウ  作者: プロパノール高橋
学園編
6/6

五話

西暦22XX年4月4日


僕も今日から高校生だ。


僕が通う予定の「国立第一学園」は全寮制の学校で全国から異能者が集まってくる。本当は4月1日から入寮できたのだが諸事情あって3日も遅れてしまった。


というのも僕の異能のせいである。あれは高校合格した後のことだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「異能研修?」


「そう、あんたみたいに異能をうまくコントロールできなかった人に練習をさせてもらえるんだってさ。」


「でも母さん、僕は人と話すのが超絶苦手なんだけど。」


「第一高校の先生によるマンツーマン指導らしいよ。しかも。」


それなら行く価値はありそうだな。



3月26日


「…指定された場所ってここかよ。」


異能研修の申し込みをした後、研修場所として指定されたのはこじんまりとした山小屋だった。


「よく来たな。」


こんな山奥なのにラフな格好をした20代後半くらいの女性が話しかけてきた。

そう、この人が僕の指導教官の にいじま ヒメナ である。


「よろしくお願いします。」


「おう、まあ上がれよ。」


山小屋と言っても物置のようなもので4畳半ほどの広さしかなかった。

荷物を置いて、話を聞く。


「早速だがお前、明の異能はずばり、〈心を読む能力〉だ。」


「心を読む…?んなアホなことがあるんですかね。」


「信じろって、って言っても体感したほうが早いか。腕だせ。」


言われた通りに腕を出すと何かを刺された。


「いってぇ!なにすんだよ!」


簡易型の注射器だ。誰でも簡単に打てるけどすごく痛いやつ。


「どうだ、アタシの心読めるか?」(まあ読めるだろうけど)


「まあ読めると思うけどって思っただろ。」


「正解、納得したか?」(めんどくせえ野郎だな)


すげえ、本当に相手が何を思っているか分かるぞ。っておいこら。


「だだ漏れだぞ。」


「やべっ。」


そういうとヒメナはイヤリングのようなものを装着した。


「これは異能に干渉されないようにする世界に一つしかないアイテムだ。お前のために学園長が貸してくれたんだからな、ありがたく思えよ。」


「それはありがたいけど、なんでこんな山奥なんだよ。」


山登りが辛すぎて何度諦めようかと思った。10日分の食料とか重すぎるわ。


「それはな、こうするためだよ。」


僕の荷物を持って外に出るヒメナ。まさか…


「オラァ!!!」


僕の食料が空の彼方に消えて行った。


「ふざけんなてめえ!なんて事しやがる!」


「これから明は異能がコントロールできるまで山籠りだ、食料も異能の力を使って何とかしろ。」


つい声を荒げてしまったが、確かにあのままだと僕は異能のコントロールが出来ずにまた倒れてしまうだろう。これも学校側の配慮なのだろうか。


「ちなみに、私は学園に自由にやっていいと言われているからこの方法は私の趣味だ。」


「このクソドSがああああぁぁ!!!」


「そんなに褒めても何も出ないぞ。まあ危なくなったら助けてやるから気楽にやんなよ。ああそうだ、アタシのことは呼び捨てで構わないぞ。」


ーーーーーーーーーー


3月26日

姫奈に今日から日記をつけろと言われた。

初日なので特に書くこともない。強いて言うなら腹が減った。

気にはしないがまさかヒメナと同じ部屋で寝るとは思わなかった。

不安が募る。



3月27日

僕の異能は動物にも通じることがわかった。だが、動きが分かっても動物のスピードにはついていけない。ラッキーなことに川があった。罠を仕掛け置いたから明日には飯にありつけるだろう。



3月28日

ようやく異能にも慣れてきた、まだ完璧では無いが。

昨晩仕掛けておいた罠に魚がかかっていたのでやっと飯が食えた。魚をこんなにも美味しいと思ったことは無い。こんな状況で食べる動物の肉はさぞかし美味いんだろうな。だが僕の身体能力では一生無理だろう。



3月29日

ふと思いついたのだが僕の異能は飛び道具と相性が良いのでは無いだろうか。ヒメナが弓の使い方を教えてくれたので、今日はずっと練習していた。明日は弓を持って動物を狩ってみようと思う。異能はもう少しでコントロールできそうなんだけどな。オンオフが難しい。



3月30日

今日は弓で鹿を狩った。動物は思考が複雑では無いから練習相手にはうってつけだ。解体は難しかったが久しぶりに食べる肉はうまかった。多すぎたのでヒメナにも分けてやった。嬉しそうだったがビールはどこから出てきたのだろうか。



3月31日

朝起きていきなりヒメナにボウガンを渡された。びっくりするほど使いやすく自分のスタイルに合っていると感じた。今日は兎を狩ったのだが、途中で熊の足跡を見つけた。注意しなければ。異能のコントロールはコツを掴むことができた。もうオンオフ自由自在だ。



4月1日

ヒメナに卒業試験を言い渡された。それは「熊を狩ること」だ。本当にふざけてやがる。試験に合格しないと入学させないと言われたので、渋々承諾した。今日は熊の行動パターンや弱点などを教わった。なぜか行けそうな気がしている。明日に備えて今日は早く寝ることにする。



4月2日

熊の寝込みを襲いに行った。別に変な意味じゃなくてな。体中傷だらけになったが初撃が致命傷となってなんとか倒すことができた。これで学園に入学できる。ヒメナには本当に世話になった、だがこのような状況に追いやったのもヒメナ自身なのでプラマイゼロだ。今日でこの生活もやっと終わりだ、長かった。


ーーーーーーーーーー


「まさか本当に熊を倒すとは思わなかったよ」


「お前がいうか、それを。」


「確かにアタシは熊を倒せって言ったけど、倒せるとは微塵も思ってなかった。」


「あっそ。」


「褒めてんだぞ!少しは嬉しそうにしろや!」


「ありがとーございますー(棒)。」


「このクソガキ…」


こんな他愛のない話をしつつ下山していった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


濃い8日間だった、思い出しただけで涙が出てくる。

こんな事を考えている場合じゃない。気持ちを切り替えて寮に向かおう。



学園の門をくぐる。いままさに学園生活が始まった。




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