一話
「朝だぞー起きろーもう8時だよーもう学校行っちゃうよー?」
やる気のなさそうな声が聞こえて来る。
って8時!? 遅刻するぞ!! 飛び起きて時計を確認するーーーまだ7時だった。
「だまされてやんの。」
そんなことを言いつつクスクスと笑う妹様は今日も可愛い。だが布団の魔力は強い。
「あと20分寝る」
「今日は異能の検査の日だから早めに起きて準備しろってお母さんが言ってたよ。」
そういえばそんなこと言ってたな。
どうせ僕に異能なんてないんだから行ったところで無駄足だと思うがな。
万年床から起き上がり、居間へ向かう。
「おはよう。明、翠。」
「おはよう、母さん。」「おはよー、お母さん。」
一家の大黒柱、我らが母、能見 加奈子である
父親は10年前に亡くなった。それ以来、一人で家計を支えている。
「明、今日学校であんたの異能の有無の検査があるらしいね。」
「そうらしいな。」
「なに、あんた興味ないのかい?」
「ないっていうわけじゃないけど。」
「兄ちゃんのことだからどうせ自分は異能なんてないとか思ってるんでしょ?」
図星。さすが妹様。
「やって見ないとわからんでしょ?もしかしたらあるかもしれないし。異能ある人っていい仕事につけるって聞いたわよ。将来安泰じゃない?」
「なんである前提で話してんだよ。」
母は僕のことを心配しすぎだと思う。それと厳密に言うと異能がある人全員がいい仕事につけるわけではない。異能には系統が存在する。
1つ目は、戦闘系統である。言わずもがな戦闘に特化した異能であり、指先から炎を出す、ありえないほどの力が出すことができる、体を石のように硬くすることができることなどがこれに当たる。
2つ目は、生活系統である。コミュニケーションや計算などに特化した異能で、テレパシー、すべての言語を理解することができる、スーパーコンピューター並みの計算能力を持つなどがこれに当たる。
3つ目は、無系統である。いまだに謎が多く、研究の対象になっている。異空間を創造できる、などの人間の理解の範疇を超えたものが多い。
戦闘系統は軍事に関わる仕事、生活系統は民間企業に就職する人が多い。
母の言ういい仕事というのは生活系統の人がつく仕事のことだろう。だいたいの親は息子を軍事には関わらせたくないだろうからな。
「というか、僕はまだ14歳なんだ。将来のこととか言われてもまだ想像がつかないよ。」
「まあそうだね。異能があってもなくても私の息子であることに変わりはないからね。胸張って受けてきな!」
生返事をして学校へ行く準備をする。
妹に急かされながら身支度を済ませる。
妹は同じ中学校なのでいつも一緒に登校している。
「それじゃあ、行ってきます。」「行ってきまーす。」
「気をつけて行くんだよ!」
今日が僕の運命を変える日になるなんて、この時は微塵も思っていなかった。