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住めば都の異世界生活  作者: ヤチマチ
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第4話 スキルと魔法

カウンターに行った彼女は数分も待たずに戻ってきて、その手に持ってきた食べ物を机に並べていった(ついでにタイショウの前にも)。

出されたのはパンとスープと茶色い長方形のもの、なんだこれ?


「…………ソ、ソ○ジョイ?」


コンビニに売ってるアレそっくりだった。

そこで手に取って見てみると。

匂いは……無臭、触った感じもソイジョ○と酷似している。


「ごめん、昨日買い出しに行けなかったから…簡単なのしか出せなくて」

「へ? ああうん大丈夫、大丈夫ありがと」


っと言った後にいただきますと続けて1番気になってる○イジョイから食べてみることにした。

アムっ

と齧ってみると。


「か、硬いっ!」


想像してたものよりも180度程斜め上の食感だった。

もしや食べ物ではないの? っと疑問符を浮かべていると。


「………………」


アリシアが信じられないものを見るような目で見ていた。


「何やってるの…?」

「あ、やっぱり食べ物……じゃなかった?」


あは、あはははっと誤魔化すように笑っていると。

アリシアが同じようにそれを手に取りスープに入れはじめた。


「これ、スープに溶かすの…」


そしてゆっくりとかき混ぜていった。

へぇーと感心しながら同じようにスープに浸し、染み込んで来たらかき混ぜると最初薄鈍色だったスープは混ぜることによってだんだんとなんというかその余り食欲のそそらない色になっていった。


「……」


割とえげつない変色に、沈黙しか生まれないでいると。


「……初めて見るの?」

「う、うん…そうだけど」

「この街じゃ、一般的なのに?」

「……」

「……」


しばしの沈黙。

さて、どうしよう。

と考えはじめる。

一応自分が異世界から来たのは隠そうとは思は無いのだがもし出会った人が私異世界から来たのなんのって言ったらどう思うだろう。

信じないよね。

しかし他に隠す言い訳が思いつかない。

再度どうしようっと考え始めること数秒。

まぁいっか!

っと正直に言うことにした。

ここまでよくしてくれたのに、本当の事を話さいのは不誠実だろうし、ここはキチンと説明したほうがいい気がする……めんどくさくなったわけじゃないよ?

それから自分が異世界から来たことを簡単にだが話した。と言っても話せる内容少ないけど。

「つまり君は、異世界人ってこと」


話し終えた後、アリシアの反応は想像してものよりも大分落ち着いた返事だった。後スープはいがいにもおいしかった。


「…そうなんだ」

「あまり驚かないんだね」

「何となく、予感はしてた」


さっきの反応と今の口振りからするにこの世界では異世界人は珍しいで済んじゃうような存在らしい。

内心ホッとしてるとアリシアが説明するように言葉を続ける。


「見たことはなかったけど。歌や伝記で、この世界の住人じゃない人達がいるのは…知ってた」

「そうなんだ……今この世界には俺と一緒の異世界から来た人はいるの?」

「ううん、この街どころか、3、400年くらい前からそういった報告も資料も、ない……らしい。

あっでも隠れてるって、可能性もあるけど……私は聞いたこと、ないかな」


そっか、いないのかーなんて思いながらも、少し気になったことが。

彼女のその説明だと異世界人達のことは本かなにかにまとめられてあるように聞こえてくる。

その考えを読んだかのようにアリシアは言葉を続けた。


「一応、この街を管理してる場所なら、異世界から来た人の資料とかあるけど……みたい?」

「うーん、そうだな——どんな人が来たのかは気になるかな」


正直今までこの世界に来た人が何をしてどんなことをしたのかは非常に興味がある。


「…それなら少しだけ、覚えてるから、教えようか?」


っとアリシアのその親切心にすぐに二つ返事を返した。

アリシアはうーんっと唸ったあと、まず1人目がと続ける。


「最初に、記されてたのが、今から…3000年くらい? 前だったらしい、詳細は忘れちゃったけど金髪の女の子だったんたって」


思ってたよりも異世界から来た人の歴史は古いのか。

視界の隅では食べ終わったらしいタイショウがアリシアの膝の上に飛び乗った。


「多分1番有名な、異世界人じゃないかな。

救国の聖女って言われてるんだけど……たしか武器を持たないで、魔物に攻め込まれてた国を、一晩で救ったとか。

他は……」


話を続けるアリシアの内容にヒロは。

なんかどこかで聞いたことあるなっと感じた。

そして異世界から来た人を題材にした(うた)や伝記はまだあるらしく。

海を割った英雄の逸話、国を敵に回した愚者の英雄譚、人々に救いをもたらした救済者の伝説、人の身で魔王を背よった異端の喜劇、世界に求められた勇者の物語等など…。

どれも異世界人がもたらしたことだと彼女は言った。


「……なんか凄いね、異世界人」


もはややってる事が異次元すぎる。


「……うん、でも記録に記されてる人だけじゃ、ないと思うから

それにスキルや、魔法が強力だったのも記録に残った事の、1つだと思うから……」


……スキル? 魔法?

なんか日本だと聞きなれない単語かでてきた。

え、まさか?という疑問符を顔に浮かべる中、アリシアは気づかずに話を進めようとする。


「そのおかげもあって、詩や伝承で今ま……」

「ちょ、ちょっと待って」

「?」

「その、ごめんねスキル? 魔法って何?」


しばしの沈黙。

可愛らし瞳が数回瞬きを繰り返し、やがて。


「君の世界にはないの?」


っと優しく問いかけてくる。

無いっというか漫画やゲームの世界でしか聞いたことがない。

だが彼女が言ってるのはそういう話ではなく現実のことだろう。


「なんかこう、手から火をグワーッて出したり、水がブシューってなったりするものじゃない?」


っと元の世界でも似たようなのはあった(?)と知ってる事を話たらなんか物凄く可哀想な子を見る目で見られた。

な、なんでだ解せぬ。

それから話を聞いたアリシアは間違ってはいないけど少し違うかなっと呟いた後に、じゃあこの世界の魔法について少し説明するねっと綺麗な姿勢を先生のように少しだけピンッとのばした。

いやもうほんと、さっきからお世話になりっぱなしで申し訳ないな。

トホホと頭を搔くと彼女はそれから魔法とはねっと続ける。


「魔法は、魔力を燃料にして発動するの、だけどただ魔力燃料にするだけじゃなくて、代唱として詠唱を唄うことで発動する。それで君が言ってたみたいに火を放ったり、水を出したりすることができるの」


っと説明してくれた。


「結構、冒険者なら複数持ってるのが、普通かな…」


とも続ける。

その後

説明、苦手だから上手くできてるか分からないけど顔を少し曇らせた。


「次は、スキルだけど……うーん」


っと今度は一度言葉が止まった。

言いよどむという感じではなく、記憶から掘り出してるといったような雰囲気だ。

しかし直ぐに説明を続けた。


「スキルは2種類存在するの、1つは普通のスキル、よくあるのが戦闘系かな? ……私なんかは痛覚の減少や、身体強化補正なんかがあるけど……人それぞれだから細かいことは、また今度でいい? ……うんっで2つ目は固有スキル」


短く説明した後、いったんアリシアは一息つく。

気持ちを切り替えるように。

そしてじゃれるタイショウを手であやしながら続けた。


「固有スキルは、特別で強力な能力なの、普通のスキルとは比べ物にならないほど……だから発現してる人も、数える程しかいなくて……ホントに稀な能力だから、君と同じ異世界人でも片手で、数えるくらいしかいなかったんだって」


っとそう締めくくって説明を終わりにした。

そんな中ヒロの心は魔法、スキル、固有スキル、この3つに釘付けになっていた。

特に魔法。

実際にあるのか、つ、使ってみたい。

男子なら、いや男なら誰でも1度は夢に見たことがあるはずだ、いや絶対にある。

そんなヒロの急にソワソワしだした様子を見て、自分にも覚えがあるようにアリシアは察したらしくさっきとは打って変わって口元にうっすらと人には分かりにくい笑みを作りヒロに昔自分にかけられた言葉をそのままそっくり問いかける。


「魔法、使ってみたいの?」

「は、ハイ!」


今日初めて聞く期待の籠った大きな声に、昔を思い返しながら彼女は魔法のための準備をするため自分の部屋へ道具を取りに向かった。





アリシアはスキルについてヒロにあえて話さなかったことがある。

強力で特殊なこのスキルは話したとおりその一つ一つが個人が所有していいものではないほど規格外で冒険者なら喉から手が出るほど欲しい逸品だ。

異世界人の詩や伝記等で有名だがアリシアが言ったとおり持ってる人は数えるくらいしかいない。

なぜこのスキルが稀少なのかは、その発現がいまだ解明されていないからだ。

偶然なのか、はたまたそうでないのか。

いまだ未確認の部分が多いこのスキルだがは、一方で確認できてるものもある、それは過去に報告された固有スキルはどれも独自性のものばかりで同じものを発現したとの記録は書かれていないとゆうことだ。

そしてその過去の記録には共通して同じような言葉が書かれている、それは固有スキルを持っていた人たち全員が口にしていたこと。

”こんな力ほしくなかった”っと。

この世界のほとんどの人が知らない固有スキルのもう一つの顔だった。





「さてと、それじゃ初めよっか」


その言葉に自分の目が輝くのがわかる。

1度上の階に上がったアリシアは、手頃なサイズの紙と他にも道具を手に持って降りてきた。


「まず最初に、君に魔法があるかどうかの確認、するね?」


アリシア曰く過去異世界から来た人達は軒並み魔法を持っていたらしい。

そのどれもが強力でまさに一騎当千と言われるほどには。

机の上に紙を置いたアリシアはヒロの横に座り紙と同様、上から取ってきたらしいナイフも同様に置いた。


「魔法や、スキルの確認方法は一つだけ、自分の血をつかうの、紙に垂し魔力を流して写すんだけど、君は出来ないだろうから…裏技を使い、ます」


そう言って先程の紙をヒロの前に広げた。

タイショウは興味ないのかヒロの足元で遊んでいる。


「この紙はね、血を垂らすだけで魔法が確認できる、マジックアイテム」


そう説明すると、自然な動作でヒロの手を取る。

アリシアの突発的な行動に困惑よりもドキドキが優ると。

次の瞬間アリシアが神速で机の上のナイフを抜剣し、ヒロの手のひらを浅く一閃した。


「へ、ちょ、あ、アリシアさぁん!」

「ん、早く垂らして、新鮮じゃないと意味ないから」

「いやいや、えっ? 新鮮って」

「大丈夫だから、早くほらっね?(ギュッ)」

「ね? じゃなくて痛い痛いっ!」


握られた手を見て女の子との手を繋ぐ行為よりも、その手のひらの流血に意識か集中する。

一瞬前のトキメキはどこへやら今度は違う意味で心臓の動機が止まらなくなった、後彼女の予想外の握力にもドキドキ(正確にはヒヤヒヤ)が止まらなくなった。

そんな中止まらない鼓動をBGMに聞きながら握られた手に目を向けていたらふとおかしなことに気づく。

切られた部分に痛みがないのだ。


「刃に、麻痺毒が塗ってあるから…痛くないでしょ?」


察したように先回りしたアリシアの言葉に。


「あ、うん」


っと驚きの返事をするのが精一杯だった。


「後、特殊な魔物の唾液も、混ざってるから全然血も止まらないでしょ?」

「アリシアさぁん!?」

「……冗談、駆け出しの冒険者とかは、ここで躊躇する人多いから、先輩達がやってあげる習慣が、あるの」


そんな冒険者のいらない豆知識を披露するアリシアの意外なお茶目さにツッコミを入れながら止血しようと布かなにかないか探そうとしたら。


「止まらないのは、数秒だから……手、動かさないでね」


そういうとヒロの手のひらに包帯らしきものを巻いてその後に血が付着した紙を手に取った。

紙は血が垂れてから数秒、光り輝くとその後染み込むでもなく水に墨を落としたよう波紋を広げ、それからすぐに文字の形状に変形し浮かび上がらせてきた。


「出来たみたいだよ、はい」


そういって渡された紙を見ると。


《魔法一覧》

火炎魔法 ブレイズ〈詠唱…その身を焦がし、求めよ〉


そう記されていた。


「火系統の、魔法だね」

「…そうみたいだね」


食い入るように眺たヒロは、内心の喜びも隠せず顔を輝かせていると、視界の下に入った文を見て今度はその顔を凍らせた。


※条件を満たしてないため発動不可


……………………………………なんぞ?

自分でもよくわからない言葉遣いになるがそんなことは気にならず目が点になった。


※条件を満たしてないため発動不可


おかしい国語の点数はいいはずなのだか、とりあえずもう1度。


※条件を満たしてないため発動不可


汚れかなと思い手で擦ってみた。


※条件を満たしてないため発動不可


疲れてるのかなと目を擦ってみる。


※条件を満たしてないため発動不可


受け入れがたい現実に目を背けるように顔を上げるとアリシアが気まずそうに視線を逸らしていた。

下は下でタイショウが構えーと言うようにズボンの裾をガジガジ噛んでた。




ヒロは思った。

もし、もし仮にだ自分がコンビニの店員だったと、そんな話をしよう。

今ならどんな客が来ようと自分は笑って接客できる、そんな気がする。

そう心から思えた。


…お客様、裾は美味しいですか?

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