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01風呂はいつだって俺の味方

勢いとノリだけで書き始めました。

よろしくお願いします。


わっしゃわっしゃわっしゃ


狭い浴室に髪の毛を洗う音が響く。

俺は大学3年生の仁志岡顕(にしおかけん)

情報系の大学に通いながら、週に3回程度ファミレスのキッチンでバイトをしているよくいるタイプの普通の男子。

土曜日の今日は夕方4時から夜10時までのディナータイムで戦場のようなキッチンを必死こいて回していたのだ。

そして、その疲れを癒すように今は丁寧に頭を洗っている。


「あー先週入ったあのおっさん、やっぱりバックレてたなー。

 働き方改革で副業できるから来ましたとか言ってたけど、やっぱ昼は正職サラリー夜はファミレスバイトって働きすぎなんだよ、大人になるってヤダヤダ…」


わっしゃわっしゃしながら呟くのはバイトの愚痴。誰に聞いて欲しいわけでもないのだが、こうして声に出すと他人に愚痴らなくて済む。

愚痴を言うのは気持ちいかもしれないが、聞く方はSAN値が削られるものなのだ。俺は他人にそんな想いはして欲しくないので、いつも浴室でセルフ愚痴大会を開催する。


「さて、そろそろ頭流そう」


しっかり泡立ったシャンプーにより、浴室にフローラルな香りが充満して気持ちがいい。愚痴も汚れも流しきってくれる風呂はいつだって俺の味方だ。

目に泡が入らないように固く目を瞑った状態でも、シャワーヘッドは迷わずにつかめる。

このシャワーヘッドは、母ちゃんがこだわり抜いて買ってきた、我が家には珍しい贅沢な一品。

ヘッドと取っ手部の間にあるボタンを押したり戻したりする事で水を出したり止めたりできる優れもの。さらにヘッド部分のメモリを回せば、霧のようなシャワーや節水シャワー、粒の粗いシャワーや、強い水圧のレーザーみたいな放出もできるのだ。

何やら炭酸シャワーがどうこうと母ちゃんは言っていたが、その恩恵を感じたことは残念ながら一度もない。

まぁ、俺は違いがわからない鈍感ボーイなので普通のシャワーで頭を流すべく、ボタンを戻してお湯を出す。


ぶるり


お湯を出したばかりだと言うのに、急に寒気が襲ってくる。


「風邪でも引いたかな?

 早く流して風呂に浸かってさっさと出よう」


俺は丁寧に泡を流していく。シャンプーは気持ちいいが、頭皮に石鹸が残るとよろしくない。耳の後ろや背中にも泡残りが無いように隅々まで流していく。


「ふー、こんなもんか。

 気持ちよかった!」


そして俺はシャワーを持っていない方の手で顔を一拭いして目を開ける。もちろん、シャワーヘッドのボタンを押してお湯を止めるのを忘れない。

するとそこは風呂場ではなく。


「どこじゃここは!!」


俺は濡れた体でシャワーヘッドだけを持って、森の中でそう叫んでいた。

お読みいただきありがとうございます。

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こちらの小説もよろしくお願いします。
魔導師はちょっと敷居が高いので、私魔導具師になります!
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