第42話
「……、ドミノ。私が死んだら、私をお食べ。そして、少しでも長く、あなたは生きて。お願い」と力のない声でドナは言った。
ドミノはそんなドナを守るようにして、ドナの体のそばにうずくまって、丸くなった。
ドナは眠るように意識を失うときに、私はここで死ぬのだと思った。
ドミノに守られながら。
死んでいくのだと思った。
お父さん。
お母さん。
みんな。
……、さようなら。
ドミノ。
私を守ってくれて、どうもありがとう。
私が死んでしまったら、私を食べてね。
それくらいしか、私にはドミノにしてあげられることは、ないから。
さようなら。
ドミノ。
一人じゃなくて。
ドミノと一緒にいられるときに、こうして、死んでいけて、本当によかった。
やがてドナはぴくりとも動かなくなった。
呼吸もしていない。
膨らみはじめていた小さな胸も動いていなかった。
そんなドナを見て、ドミノはゆっくりと体を起こすと、その青色の瞳から、とても綺麗な涙をこぼした。
それは、ドナのほっぺたの上に落ちて、ぱん、と音をたてて弾けた。
……、やがて、とても冷たい風が吹いて、薄暗い空からは真っ白な雪が降り始める。
その雪はどんどんと多くなって、ドナとドミノの姿は、雪の中に埋れていくようにして、だんだんとその真っ白な色の中に消えるようにして、見えなくなってしまった。