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2.研究背景

 私の名はグウィン。つい先日とある王立魔法学院の専任講師となった自称魔法研究者である。

 この度に新しく新入生の学級の担任という役職に任命されたのだが、その学級というのが問題児ばかりでかなり面倒だ……正直まだ初めて一ヶ月程しか経っていないが、この仕事を辞めたい欲求に駆られている。

 既に退職願を書き、いつでも出せるように懐に忍ばせているほどだ。


 一応確認するが、問題児と言っても無能ばかりでという訳ではないぞ?

 まぁ、コイツらは私にとっては無能も同等なのだが、世間一般程では英雄の卵、次世代の天才達、もしくは選ばれし者達などと言われている。


 そう、その学級というのが近年で……いや、歴史上でも稀に見るほどの才能溢れる将来有望な生徒達が集まった英才学級なのだ。


 およそ史上最年少で新たな魔法術式……つまり『魔術』を開発した者。

 由緒正しい血筋に従い未来の国営を任された、生れつきエリートとして教育されてきた者。

 若輩ながらも多くの血と殺意に塗れた戦場に立ちそこで功績をあげた者。

 そして神により運命を定められ、その重い責と圧倒的な力を与えられた者。


 そのような運命に選ばれた者達が、同じ学年の同じ場所に、まさか同時に集まるという奇跡のような学級が出来上がってしまった。


 そしてその担任が表では平凡な来歴を持つ私グウィンとなってしまう。

 性別は男、年齢26歳、独身。裏では色々とやらかしているが、表の経歴はいたって普通だ。

 本来なら個人で研究者をやっていた筈なのだが、目覚しい結果を出せず実家に帰りたく無いがために講師の仕事を受けたという、自身で言うものあれだがどうしようもない経緯で教育者となった。


 そんな半端者が何故、この英才学級の担任となったのか疑問に思う者もいるであろう。

 それには色々と深い経緯があって……と言いたい所だが、そんなもの一切ない。

 簡単に一言で言えるほど単純なものだった。


 ーー肉親の勧めで。


 ……いや、これは単純すぎたな。

 言葉だけ聞いたら私がどうしようもない人間みたいではないか……。


 そもそも伯母……仕事を勧めた本人とは血の繋がりはなく肉親と呼ぶには違う関係だし、勧めるというよりかはそもそもお互いの交換条件があっての対等な契約だ。

 それに今思ってみればそんなに単純なものでは無かったのかもしれない……あの図った様なタイミング……そしてあの条件は…………い、いや考えるのは止そう。


 ……えー、つまりは(れっき)とした選ばれた理由(わけ)と紹介あって、私へ白羽の矢が立ったということだ。

 そして紹介されたとするならばその紹介をした人物の評価にも繋がってくる。良くも悪くも。


 私が辞職したとしよう。既に有名となるところの学級の担任が、だ。

 するとどうなる? 其れは公になり、理由があって選ばれたのに勝手に辞めては職務放棄と始まり責任問題となる。

 その責任は私から伯母へと移り変わり、やがて二人の名の共通点ともなるウェールズ家へと行き着くだろう。

 つまりは私の実家へと向かってその責任は飛び火していくのだ。


 そんな起こるまでなく簡単に予想がつくものを実際に行動する筈はないだろう。

 ……いくら私の意思に反していても。


 いや、そもそもこんな面倒な仕事になるとは最初から予想が付くはずがないだろう……!


 ーー優等生達の面倒を見るだけの役職

 英才学級の担任を簡単に言い換えるとそうなるとあの頃は疑う事すらせず、詰まる所大した仕事ではないと思い込んでいたのが間違いだった。

 学生の彼等は若輩ながらも世間や厳しい社会で揉まれてきた。少しはモノを知っている子供ならば問題など起こす筈は事はないと考えていたのだ。


 それを蓋を開けてみたらどうだ。


「わたくしが誰か存じておりまして? 現ケインズ公爵の次女、メアリー・ギルフォード=ケインズよ。男爵家の娘が馴々しく話をかけて良い相手ではないのはお分かり?」


「オレは王城近衛隊のアルバートだ! 聞いたぞお前、A級の魔物を一人で倒したそうじゃないか? まぁ、どうせ意地を張った嘘だと思うが……どうだ、オレが本当か見極めてやる。これから訓練所に向かおうじゃないか」


「どうも勇者のキリルといいます。もしかして貴方は聖女セラフィム様ではないでしょうか? えぇ、一目で分かりましたとも。その美貌と金糸のような美しい髪、天女の様だとの噂に違いはありませんでした。もし、よければセラ様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」


 新学期の初日、教室の扉を開けての一幕。

 それまで余裕綽綽としていた私はその光景を見て取り繕う猶予もなく、手を戸にかけながら大きく口を開け唖然としてつっ立っていた。


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