1.問題提起
指をしゃぶる子供がいるだろう? 彼等は何故その行為を行うのだろうか。
赤ん坊だった頃の名残で? 母性を求めて? それともただ暇だったから?
私はその答えを純粋な心に戻る為では無いかと仮定する。
赤ん坊は成長するに連れ、空っぽの頭の中に言葉や知識、社会性を蓄えていく。
それはやがて他者との交流に用いられそれにより経験として新たなことを学ぶでだろう。
しかし、その他者との交流は小児になることを垣根とし、他にも違うものをもたらす。簡単に言えばそれはストレスだ。
それ以前の枠組み……つまり親族などの閉鎖的な交流では、恐らく自身を肯定してくれるばかりの一方通行なものであったであろう。
だが、その枠組みを飛び出し、新しく広くなった交流の場では自身を否定する者も出てくる。
自身を否定し全く違う考え方をする人と相対する。
それは成人してからも相応にストレスを感じる事だが、それを初めて体験するとしたらどのような感覚なのだろう。
況してや、その心はまだまだ未発達でまだ自我というものも自覚していないのに。
結果、その精神はそれ以前には無かった新しいストレスへの防衛策として一時的に赤ん坊の頃へと精神を戻す。
自身を全て肯定してくれた乳児の頃へと、それは行動として現れる。
それがあの指しゃぶりというわけだ。
一応言っておくがそれ自体は悪い事ではないと私は考える。
つまりは退行しているという事ではないかと思うが、精神の成長の過程ではそれは順調に前進していると私は思うのだ。
指をしゃぶる毎に経験が積み重なり、その指が膨れあがった頃になると……いや、この研究の趣旨から外れてしまったな。
……つまり何が言いたいかというと、その後のある程度成長した姿形でも、ある状況下で指をしゃぶればまた赤ん坊の頃の純粋な精神に戻れるのではないかと私は考えた。
そしてその純粋な心の状態で新しい経験を積ませれば、その経験は根強く心に残り、元の精神や人格に強く影響するのではないかと。
言っておくがこれは私の考えた仮定の話だ。もしかしたら答えは違うのかも知れないし、そもそもの想定が間違っているのかもしれない。
だからこそ、それを確かめるためにこれから実験をするのだ。
世界と学術の進歩の為に、そして私の求める答えを見つける為に。
手段は私のお得意の魔法という方法で。
実験台……詰まり、今回のモルモット達は……もちろん決まっている。




