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未来は激痛とともに

初投稿です。宜しくお願いします。

 青よりも碧く、むしろ黒と言ってもいいくらいの、恐ろしく晴れ渡った蒼空。

 台風の後でも滅多に見られない美しい情景のはるか先、空と大地の交わるところに引かれた白い白い境界線。

 タマちゃんによると、あれは海らしい。

 ここは、かつては北多摩北地区と呼ばれた土地。オレの見知った建物などは無く、見渡す限りの荒野。ごつごつとした荒い岩が並んでるだけの不毛の土地。


「ほんっと、なんもねぇなぁ……」


 とごちるオレの呟きを

「ナンモネーナー」とややイラつく調子で鸚鵡返しにした隣のタマちゃんにソバットを喰らわす。


 ニワワワワワワワァァァァ~~~~~~~………キランッ


 蒼穹に伸びる一条のレーザービームのように勢いよく飛んでいくタマちゃんを尻目に、オレは脱力してその場に腰を下ろした。

 埋もれた天体ドーム、若しくはガスタンクを思わせる半球状の盛り上がり。その天頂に座り積もった砂埃を払う。見た目は艶やかな表面。だが触った感じはザラついている。材質は見当もつかない。

 空を見上げると太陽はほぼ真上。そろそろ腹が鳴りだしてもおかしくない時間だが、生憎と空腹感は無い。や、生憎と言うより幸いと言った方が良いか? ここにはコンビニも無ければ牛丼屋も無い。そもそも……



 ここにはオレ以外に人間が存在しない。



 

 冬休みを目前に控えた土曜日の午後。駅前のラーメン屋で昼食を済ませたオレは、急遽空いてしまった時間をどう潰すかぼんやり考えながら、通いなれた家路をたらたらと歩いていた。

 普段なら友人たちとカラオケやらゲーセンやらと遊びに繰り出してたのだが、今日は予定がかみ合わなかった。と言うのも、一人が博物館に行きたいなどと言い出したから。

 上野にある国立博物館でケルトなんたらの民族どうのこうのな展示があるらしく、それにどうしても行きたかったらしい。

 博物館……嫌いでは無いが、どうせなら大恐竜展とかそういうのが良い。ケルト何たらとかは、歳食ってやること無くなり、どうしても暇で、尚且つ金が余ってたら行ってもいいかもしれない。それまでは正直ご免被る。

 てな感じで嫌がったら、奴はあまり気にした風も無く、一人で行くと言ってそのまま上野へ向かった。

 残ったのはオレともう一人だが、そいつは野郎二人だと誤解されるから嫌だとのたまった。まぁ、オレもその手の誤解はご免被るので、結局駅前でそのまま別れた。


 この時間に帰るのは久しぶりだ。決して嬉しいわけではないが、たまには一人と言うのも悪くない。

 帰って着替えたら、どこかぶらつくか……なんてことを考えてたら不意に足元の接地感を失った。そこにあるはずのアスファルトの路面が無かったのだ。

 経験したことのない浮遊感が体を包む。ふと見上げると暗闇に丸い穴が見え、ゆっくりと遠ざかっていく。


 はて? マンホールにでも落ちたのだろうか?


 意外にも冷静に事態把握しようとしている自分に驚く。

 周りを見ても上の穴以外は暗闇で1メートル先も見えない。再び視線を上に向けたが、先ほどと大して変わらず、丸い円でくり抜かれた先に青空とぽっかり浮いている白い雲が見えている。


 いや……ちょっと落ちるの遅くないですか?

 

 普通だったらさっさと遠ざかりそうな上空の穴は、まるでスローモーションの映像の様にゆっくりと遠ざかっていく。


 ダウンダウンダウン……アリスはウサギの穴から不思議の国に落ちていったが、オレはいったいどこにつくのだろうか? つか、いつまで落ち――――


 ドン!! ガン! ゴン! ゴキッ! バキッ!! ゴロゴロゴロゴロ………ポテチ……




 柔らかな音が耳をくすぐる。音楽……いや、違う。もっと規則正しい、穏やかな寝息のような音。

 ゆっくり目を開けると天井近くに白い球体が見えた。薄ぼんやりとした白い光を放ち、オレの倒れている空間を浮かび上がらせている。

 学校の教室くらいの広さで、怪しげな機械やら機械っぽい何かが所狭しと並べられている。壁の一面をを覆うガラス戸の向こうには、棚やら机やらが見える。もしかしたら何かの研究所なのかもしれない。

 オレは起き上がろうとして「っ!!!」と、激痛に呼吸を止める。

 腕を上げるも、その腕はひしゃげた老木のようにねじ曲がり、白い骨が突き出していた。


「クッソ、マジかよ……」


 助けを求めるように辺りを見回すが、残念なことに人影は見当たらない。

 落ちてきた方を見上げると、およそ八メートルほどの高さに穴の縁が見え、その先に空が見えていた。


 この程度の高さで、こんな骨折なんて運が悪すぎる。


 だが、この高さなら声を上げれば、通行人が気付いてくれるかもしれない。

 オレは息を吸い込み、声を上げようとして咽かえった。


「ごほごほっ、こぽっ」


 こぽ?

 え? 何その音?


 口元に手をやると、僅かに湿っている。

 骨折すると吐き気がきたりするそうだから、もしかして吐いちゃったのだろうか?

 しかし、寝下呂はマズイ。下手したら窒息死する。ジミヘンとかジョン・ボーナムみたいに。

 軋む体を何とか横に向け、気道が塞がらない様にする。


 が、その時に見えてしまいました。

 真っ赤に濡れる自分の手が……

 骨が飛び出してる方じゃない。つか、折れた手で何かできるほどタフじゃないです、自分。


「マジか……あばらが折れて肺に刺さったとかじゃないだろうな……」


 言ってから、急に全身から痛みが襲い掛かる。折れた腕だけじゃ無く、それこそ身体中が悲鳴を上げている。血を見るまでは平気だったのに、血を見た途端に痛みが来るのってなんでだろう? 確認のため足元を見ると、そこにあるはずのつま先は見えず、あってはならない踵がこんにちはしていた。

 たかだか8メートルの高さから落下したとは思えないほどの大怪我だった。や、重力とかよくわからんので、もしかしたら、この高低差での怪我にしてはマシな方かもしれんけど、どっちにしても、一つだけ確実に分かる事実があった。このままじゃマズい。

 

「だ、だれか……誰かいませんかぁ……」


 なけなしの気力を振り絞り、声を上げる。

 が、蚊の鳴くような声しか出せなかった。


 ヤバい。どの程度の怪我で人が死に至るのか詳しくは知らんけど、骨折は兎も角、口から血が出てるのがヤバい。つか怖い。


 多少無理をしてでも助けを呼んだ方が良い。そう判断して、オレは口を開き、そして、そのまま固まった。

 白く薄ぼんやりと発光している玉っころ。それがふわふわと目の前に浮かんでいたのだ。

 起きた時、天井近くに見えた奴だ。それが、いつの間にか鼻先三十センチの処に来ていた。


「あなた、今、日本語使いませんでした?」


 不意に玉っころが声を発する。どこか中性的で、なめらかな耳触りの良い声色だった。しかし、言ってることは意味不明だった。いや、意味は分かるが、訳はワカランと言った方が良いかもしれない。


 どうリアクションしたものだろうか? 

 質問の内容も現状にそぐわずとんちんかんだし、そもそも、浮遊し言葉を使う玉っころなんてもの見るのは初めてことだ。

 ロボット? いや、ドローンか何かなのか? 誰か操縦してる人間がいるのだろうか?


「あなた、今、日本語使いませんでした?」


 玉っころが、壊れたレコードの様に同じ質問を同じ調子で繰り返す。


「ごふっ……や、それどころじゃないだろう、状況的に……」

「あ、やっぱり日本語ですね! どうやって覚えたんですか? いや~、まさか日本語話せる方がいるなんて……感動です!!」


 つるりとした表面に、驚きの表情……と言うか、顔文字めいたパターンを浮かべ、オレの目の前をぎゅんぎゅん旋回する玉っころ。非常にウザい。

 

「っ……興奮してる所悪いんだけど……き、救急車呼んでくんない……?」

「え?」

 

 ピタリと空中に停まる玉っころ。

 何か不思議な物でも見るように、オレを見つめて来る。


「おや? なにやら妙な事をほざいてらしたので、不思議に思ったのですが……なるほど。あなた怪我をされてますね?」

「見て分かんねぇのかよ!!」

「スミマセン、興奮してそれどころじゃありませんでした。痛いですか?」

「痛ぇよ、めっちゃ痛ぇよ!」

「ですよね~、じゃあ医務室から救護端末を呼び寄せますね。ところであなた、何で日本語喋れるんですか?」

「や、そういうの良いから、早くその救護端末とやらを呼んでく――――――」

「もう呼んでますよ?」


 玉っころが何でもないかの様にオレの言葉を遮る。


「救護端末はもう呼んでますよ。医務室はそれほど離れていないので、数分で来ると思います」

「いつの間に!?」

「さっき話してる最中にですよ。おかしな事を言うお方ですねぇ」


 存在自体怪しい玉っころにおかしいとか言われるのは不本意だが、何にせよ、これで助かる……のか?

 つか、ここどこなんだ? 住宅街の真下にこんな研究所みたいなのがあるなんて聞いたこと無いぞ?

 しかも、地下8メートル。下手したらデパートの地下階よりも浅いくらいだろう。


 玉っころは幾分いぶかし気な表情を浮かべるが、気にした風もなく、オレの身体を身体を舐めるように飛び回る。


「ふんふん、右腕と右足の骨折に全身打撲。口の中も裂傷があるみたいですね。ポッドを使えば三日で治ると思います。で、あなた、いったい何者なんですか? なんで日本語を話せるんです?」

「さっきから何なんだ……日本人が日本語使ってもおかしくないだろ?」

「えっ!?」


 驚き固まる玉っころ。空中に浮いたまま固まられると違和感しかないのだが……

 しばらく凝固している玉っころを見つめてると、球体の表面に様々な幾何学模様を流し、まるで再起動するPCのように、つるりとした表面に顔パターンを浮かべる。


「あ……ああ! そういうことですか!! てっきり予算確保するだけのなんちゃって研究所かと思ってましたが……」


 そしてわけわからんことを呟く。まぁ、オレに向けて言ってたわけでは無さそうなので、気にする必要も無いわけだが……


「あなた、過去から来ましたね?」


 はい?



あ~~……主人公の名前も出せなかった……


ここまで読んでくださった皆様、稚拙な文章にお付き合いいただきありがとうございます。

週一更新目指して頑張ります。


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