55.夜を往く者
やっと完結です。話は全く完結してない上に、ヒロインが後半意識を失ったまま終わると言う(笑)
次回は4月くらいから連載を開始する予定です。その間に少し体を直してまいります。
今回のこの作品はこの部分を書きたくて始まりました。こんだけの短い部分だけのためにだいぶ長いこと話をでっち上げたのでちょっと脳みそも沸騰しております。
頭冷やした上で辻褄合わせて次回作に挑みたいと思います。次回もお付き合いいただけたら幸いです。
長い話にお付き合いいただきました皆様、本当にありがとうございます。こころから感謝申し上げます。
庭から見える銀杏の木もすっかり黄色に染まり多くは落ちてその足元を黄色に染めている。
小さな池のほとりに植えられた楓の木も赤く色付き、吹く風に一枚、二枚と舞い落ちて行く。その様を眺めながら絢乃は深いため息を吐いた。
「……お召しにより、参上仕りました。総帥」
「北斗か」
先ほどまで確実に自分一人しかいなかった部屋の隅に、一人の黒い影が膝を折って頭を垂れていた。しかし、絢乃は驚きもせずその者の名を呼んだ。
自然に色の抜けたような赤味のない茶色の髪に纏う衣服全てが漆黒の人物は、影がなければ人外の何かかと見紛うほどに生気も存在感も感じられなかった。
絢乃は用意していた急須に湯を注ぎ、数分置いてから二つ分の湯呑みにゆっくりと茶を注いだ。
仕草だけで漆黒の人物に茶を勧めると、静かに自らの湯呑みから茶をすする。
絢乃の自室の中に緑茶のいい香りが広がっていく。
北斗と呼ばれた漆黒の男も、絢乃の腰掛ける卓子の前に進み出て同じ様に茶を味わった。
「……戸上の当主候補が命を狙われている様だ」
暫くの沈黙の後にぽつりと老婆が呟いた。年よりずっと若い見た目の絢乃だったがその声は嗄れてまるで百歳をも超えて生きる者の様な声だった。
「狙う人物を探し出し阻止せよ。生死は問わぬ」
歴代当主の中でも特に争いを嫌い慈愛に満ちた人物として知られる、絢乃の言葉とは信じられぬほどの冷徹な声色で彼女は命じた。
「承知仕りました」
誰がとも誰をとも問わず静かに答え、北斗は一歩後ずさり深く頭を下げた。
次の瞬間北斗の姿はかき消えた。直前まで飲んでいた湯呑みと僅かな香りだけを残して。
「二度と主らに闇の仕事はさせぬと誓ったというのに……じゃが、もうワシにはその力も残っておらぬ。許せとは言わぬ。せめて全ての責はワシが取ろう……」
H31-03-04 一部改稿(北斗の外見)




