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53. 術者の帰還①

お待たせしております。待ってくれている人がいるといいなぁ、と思いつつ。


この後は後日談的な話になります。木の神様救出は別のタイトルにする予定です。


でもって、しばらくお休みいたします。春ぐらいには復帰します。その間ちょっと体を治して、(転スラ読んで)ついでに少し書き溜めて置けたらいいなあ。


 我慢できずに投稿してしまうかもしれません。

 風の神は既に姿を消していた。神という存在はそもそも不可視の存在である。実体化していない神を見るためにはその素養が必要だったが、あいにく二人ともその能力にけてはいない。


 風を操る能力に秀でている正樹にとっては、近くにいるのだろうという気配の様なものは感じるが、目に見えない存在にどこまで気を遣えばいいのかが良く判らなかった。


 取り敢えず、何も言わず姿を消したという事はこの場は自分たちで切り抜けろという意味なのだろうということは判った。


 依然曇ったままの空の下、正樹は細かい擦り傷のできた腕で清藍の体を抱き起こした。


 それを見て徹が正樹達の方に歩み寄り声を掛ける。


「正樹さん俺が……」


 正樹が風の力を利用してふわりと背中に彼女を背負ったのを目にして言葉を止める。


 声に反応して顔をこちらに向けた正樹に、徹はあははと乾いた笑い声を立てて笑って見せるしかない。


 そうだった、この人は風使い。今の自分よりずっと落に彼女を背負い移動することが出来るのだ。


 日は出ていないが、まだ十月だ。雨さえ止めば気温はそれほど低いわけではない。数時間びしょ濡れの状態でいただけならばまだ死にはしない筈だ。正樹はそんな風に軽く考えていた。


「うわ、つめてっ」 


 想像以上に冷えていた清藍の体に正樹は思わず声を上げた。そう言えば……と正樹は思い出す。


 この場所に歩いてくる間やけに寒く感じていたと。長時間体を動かしていたことと、着ていた合羽のおかげで体は温まっていたことが災いしてそれを特に意識していなかったことに。


 風の御神は本気で殺しにかかっていたのかな。と、正樹は心の中で考えた。まだ、その殺意はなくなったわけではない。一時的にやめてくれているだけだ。そう心に戒めた。


「日上君、彼女の服を乾かすことってできない?君もだけど……ってあれ?日上君は服乾いてるね」


「あー。多分。でも細かい制御ができるか怪しいっすけど」


「わかった、無理ない程度でよろしく」


 先ほどの戦いの際に、徹は術の行使の際に無意識に体に熱を纏わせていたのだ。低すぎる外気から体を守るために。消耗している状態でも無意識でそういう操作ができていることに、正樹は感心したがそれを口には出さなかった。


 やがて正樹の周囲が少し明るくなり、外気がふんわりと暖かくなる。


「今できるのはこれくらいっす。すみません」


「大丈夫熱くなったら風を送るし。意外と風と火のっ組み合わせも悪くないね」


「回復できない、火使いですけどね」


「日上って回復できるんだ?」


「火炎じゃ燃やすばっかりですけど、太陽の光なら何かできそうじゃないっすか?」


「確かに。……って、ゲームのやりすぎ」


 二人は顔を見合わせてくすりと笑った。


「ごめんよ、今は君の分まで術を掛けることはできない。ゆっくり行くから歩ける?」


 正樹の声に含まれた優しい気遣いに、情けない気持ちは隠して、徹は力強く頷いた。


「大丈夫です。体力には自信あるんで」


「体力……自身ないなぁ。最悪代わってもらうかも。その時はよろしく」


 頷き合って二人は歩き出した。


 歩き出してすぐに正樹の尻ポケットに差し込んでおいたスマフォが鳴った。


 無意識に尻に手を伸ばしスマフォを取り出そうとして、背負っていた清藍がずると少し滑った。


「おっと」


 体を前に曲げて彼女の落下を防いでから、軽く上へ揺すり清藍の体を元の位置に戻した。前屈した状態のまま、右手を放そうとしたところで、徹の手が正樹の尻からスマフォを抜き出した。


「あ、ありがとう。代わりに出てくれる?多分、新汰だと思うんだ」


「判りました。……そう言えば、俺の携帯……」


 正樹と同じように尻のポケットに携帯を入れていた徹はそこに自分の携帯がないことに気付きがっくりと肩を落とした。


「あー、災難だったね」


 軽口を言いながら正樹が笑う。徹は情けない顔つきのままぼやいてから正樹のスマフォを操作して電話に出た。正樹にも聞こえるようにスピーカーモードにしている。


『お、やっと出た。あれからずいぶん経ったけど、正樹大丈夫かい?』


 流れてきた声は間違いなく新汰の声だった。

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