52.神を縛る楔
明らかにその石柱は不自然で、けれど自然だった。
不自然に目立つ位置にあるというのに、周囲の景色に溶け込み一枚の絵のようになって人の注意を惹かないように術を掛けられている。
新太も陸もそのことに気付けなかった。黒い子猫の導きがなければ、例え探してこの場所にたどり着いたとしても、石柱を見過ごしてしまっていただろう。
巧妙すぎる隠蔽に誰かの作為を感じずにはいられない。
何のためにこんなことをしているのかは不明だったが、木の神は明らかに他者の手で封じられている。けれどどうして?誰がこんなことをできるというのだろう。神を封じる力など、それと同格かそれ以上の神にし持ち得ない。
そしてその強固な封印は、人の身たる彼らにはどうすることもできない。例え、清藍の守護神たる水の神ですら可能かどうか判らない。
「新汰兄さん、これ……」
「絶望的だな……」
声を失い立ち尽くす二人。
「だから、地震なのか。地震を起こし周囲一帯を完璧に崩して仕舞えば、この封印さえも粉々になる」
「この辺り全てを巻き添えにしてですか。どれ程の命が失われるのでしょうね、兄さん」
「間違いなく俺達も死ぬだろう。戸上の家すら残るかどうか」
「土の御神の課題はこれなのか。木の御神を犠牲を出さずに解放するようにと」
「だから風の御神は、俺達を狙っていたんだ。これ……徹と清藍の命と同期されているみたいです」
「なんだって?!」
「最悪ですよ……、あの二人が死んだらこの封印も壊れるように作られている」
「なんであの二人が……」
「戸上の誰かの差し金としか思えなくないですか。例えば……僕の親とか……。叔父さんとか……」
「冗談だろ……そのために、この地を壊すのか……、そりゃ、この狭いエリアが壊滅するだけで、日本全体に出る影響はさほど大きくはないだろうけど」
「ことは簡単に進みそうもありませんね。……ま、覚悟していた事ですが」
「一歩でも前進できただけ良しとしよう。取り敢えずこの場所を確認して、日上くんと正樹と合流しよう」
「そうですね、今はそれしかできることがありませんね」
二人は頷き合うと、スマフォを取り出して位置情報を取得しようと操作をし始める。二人は気付かなかったが雨はもう止んでいた。




