41.命の灯⑥
本日も短いですが……あれ?戦闘ない予定じゃなかった……?
なんか戦闘になっちゃいそうな感じになってるんですけど、まーじーでーすかー?
正樹は壁の方を向いて横になっている陸を見た。
呼吸は荒く熱を出しているのか、頬は少し上気している。起こさないようにそっと近付き、彼の額に手を当ててみると予想通り普段より熱を帯びているようだ。
「これは……医者に診せないといけないね」
「熱出て来たのか?」
少しおっくうそうにため息を付き、新汰が訪ねてくる。正樹が頷くと、小さく息を吐いて続けた。
「少し休んだら自分も捜索に出ると言って聞かないんだ」
二人の視線は成端な年下の青年にそそがれたまま、どちらかともなくため息を付いた。
「……マジか」
「さっきさ、近隣の病院からお医者さんが来てくれて診てもらったんだけど、近くの病院に搬送するって言ったら、無茶苦茶な勢いで断り入れてね。お医者さん呆れてたよ」
とりあえず、応急処置として栄養剤と抗生剤だけ打ってもらったらしい。
気持ちは判らないでもないが、この状態で捜索についてきて足手まといになるだけだろう。
「じゃあ、さ。新汰は少しここで戸上君を見ててくれ。俺、軽くその辺を流してくるよ」
新汰の体力の回復も必要だろうと判っていた。
「その間に、飯喰って新汰も体力回復してて」
軽く笑うと正樹は立ち上がった。すまないと下から声が聞えた。
いつもより元気のない声に、新汰を見下ろして正樹は右手をグーにして新汰の鼻先に突き出した。
「いつもは新汰に頼ってるからさ。たまには俺が頑張ってみるよ」
いたわりを含んだその声音に新汰もにこりと微笑み、新汰に答えるように自分も右手を差し出し、正樹のてにこつんとぶつけた。
付き合わせた拳をひらいて新汰に手を振ると、正樹はゆっくりとした足取りで避難所を出て行った。
デパート内を物色するような雰囲気で建物内を移動し、入って来た方と別の出口から出て外の様子を確認してみる。
メインの出入り口は東側なのか、西側の出入り口には人は少なく土嚢も積んでいなかった。白川の反対側だからなのかもしれない。
風は依然として激しく吹き荒れていたが、雨は僅かに弱くなってきていた。
ズボンの後ろのポケットに突っ込んでいたスマフォを取り出し時間を確認してみる。時間は午後一時を過ぎたところだった。
「救助のタイムリミットは72時間だったっけか。……でもなんか、今日中に助けないとヤバイ気がするんだよなぁ」
ぼやく声は小さくて誰に聞こえることもなかった。
心配性の気がある正樹だったが、こういう嫌な予感は願いに反してあまり外れない。陸の焦りもそこから来ているのかも知れない思った。
風の神様……頼むよ。あの二人を連れて行かないでくれ。二人とも……誰よりも精一杯生きようとしているんだ。生きにくい世の中で窒息しそうになりながらも、それでも未来を夢見てる。
頼むよ――彼らを奪わないでください――。
祈りにも似た気持ちを自らの行使する術の守護者にを向けたのはただの偶然だった。
届いて欲しいと思っていたわけでもない。届くとも思っていなかった。相方が会ったという風の御神は人を拒絶しているように感じたと聞いている。
それを聞いて正樹は残念に思うだけで、神の怒りを鎮めたいとか何故人を拒絶するのかとか、掘り下げて考えようとはしなかった。
それは多分、何となく風の御神が人を嫌っている理由が人間の側にあるのではないかと感じてしまったからだった。それが正解か不正解か答え合わせをするのが怖かった。
けれど今は違う。
その怒りをこちらに向けるのであれば。自分の小さな小さなテリトリーを壊そうとするのならば。例えこちらに非があったとしても。
奪おうとするのなら、抗ってみせる。
付き合いはまだ浅いが、彼らは気持ちのいい人達だった。これからも付き合いは続くのだと理由なく信じていた。
それを理由も告げず奪うなんて許さない。例えそれが――神だったとしても――。




