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35.落花流水② sideB
貴女がいない世界なら、僕の存在する意味などない。
声が聞えた気がした。とても、切ない声――。身を切られるよりも辛いと誰かが言っている。
ずっと癒えないまま血を流し続けた痣から、少しずつ命の灯が流れ落ちるように、それは少しずつ蝕んで苛んでいたのだろうか。
何故気づくことができなかった?
陽炎のように滲む世界の中、少しずつ遠ざかる背中が見える。
届かない――。追い付けない――。
待ってくれ!行くな!
声を限りに叫んでも前を往く背中が止まることはなく、全力で追いかけても追いつけない。けれど、追い駆けるしかできない――。
ずっと、そんな思いを抱いて生きて来たのか?癒しなど一つもなかったのか?
そうなのだとしたら共にいた時間は無為に流れ去ったということになる。
教えてくれ陸――。




