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33.濁流に流されて④  正樹side

 短いですが、本日(?)2本目です。


 サイドストーリーの彼女の側からも実はできていますが本編には関係しないのでまだアップはしません。

 雨が激しいなと正樹まさきは窓の外を眺めた。熊田市に調査に行った新汰あらたたちのことが気になったが、残念ながら今日は先約があった。新汰もそれを知っているから調査に行くという連絡はしても誘いはしなかったのだろう。


 しかしいくら雨男の自覚があるとは言え、この豪雨はあんまりではないだろうか。


 赤信号で止まった車の運転席から見上げる空は、彼の恋路を邪魔するかのように大雨を降らせている。


 前の飲みの席で呟いた彼女の台詞に答えたのは、なかば以上ただのノリだった。


 酔った勢いと言ってもいい。けれど、ここ最近、新汰に苦手とかそう言う以前の問題である調べものに付き合わされた正樹の頭は、煮詰まりすぎておかしくなっていた。


 いつにない強引さで話を決めて今に至る――。


 あと、三十分もすれば約束の場所に到着する。


 そうしたら彼女をこの車の中に招き入れて県外の某有名テーマパークへ向かうこととなる。到着するまでの2時間程の間何を話したらいい?


 それを考えるだけで寒い程の室温である筈の室内にいるというのに彼の体から汗が流れてくる。


 だから最初聞き逃していた。


 キンっと硬質な何かが割れるような音を聞いた気がした。あまりにも大きな音に、頭の中を裂かれるような痛みを感じ、思わず急ブレーキを踏んでいた。


 運転席の中で数秒の間呆然としていた。たっぷり十秒過ぎたあたりで後ろから鳴らされたクラクションで我に返る。道の真ん中で停車していたことに気づき慌ててアクセルを踏み込んだ。


 先ほどまで熱かった体が冷え切っている。何故がハンドルを握る手が震えていた。


 何も考えられず真っ白の彼に、ラジオの声が妙に白々と耳の中に、脳の中に染み込んでいく――。


『今日未明、熊田市の白川で洪水が発生し――』


 白川って……どこだっけ?あれ?新汰って朝早くから熊田市に向かってなかったか?熊田市の大雨って去年も大きな洪水があったって……。死人が出てたよな……。


 どくんと心臓がなった。


 新汰……白川……。いや、駅に向かわなきゃ……が待って……。


 うまく頭が働かなかった。なのに反射的に体は動いていて……目的地だった筈の駅前から逸れ、熊田市へ向かっていた。

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