30.濁流に流されて① 徹・清藍side
お久しぶりでございます。急に寒くなりましたね。今は猫を膝の上に抱きながら執筆しております。
失踪はしないとあれほど言ったじゃありませんか!(笑)
すみません、体調が思わしくなくて大分遅れてしまいました。良くなってきましたのでまた執筆速度を上げてがんばります。
咄嗟のことで行動が遅れてしまった。いや――判断を誤った。
平静であれば術の行使を優先した筈だ。けれど、押し寄せる津波のような濁流を見た時に自然に体が動いてしまった。
自らの身と腕の中に抱き込んだ大切なものの無事を確認できたからこそ冷静になった頭でそんなことを考えた。
徹は激しい濁流にもまれながらもなんとか水面から顔を出した。身体強化の術を応用して、自分と清藍の体を軽くしたのだ。
雨と泥水で視界は最悪だが何とか近くを流れる流木を見付けることができた。慎重に術を行使して流木を自分たちに近付けていく。最後は泳いで流木に近付いて、それを捕まえると腕の中で気絶している清藍を力業でその流木の上に引き上げた。
自分もその流木にシッカリ捕まり、気絶したままの清藍の様子を伺う。
水をあまり飲んでないといいが……。と考えつつ、軽く彼女の体を揺すってみるが目を覚ます様子はない。
とりあえず水に上がることを優先することにして、徹はそのままりゅっくりと流木を川べりの方に近付けることにした。
どこかのダムでも決壊したのだろうか、激しい流れに紛れていろいろな物が流れている。底の浅い川縁に行けば行く程、そういう残骸にぶつかって怪我をする可能性が高くなる。
どの辺りまで流されたのか、川幅は歩いていた当たりよりも随分広く目指す先の川縁は見えている。という事は、この辺りはまだ川の周辺へ氾濫する程水かさが増しているわけではないようだ。
何とか足の付く深さまでたどり着くことができた。濁って見えない水底を気にしながら、清藍の体を抱き上げて、ゆっくりと川縁を這うように登る。
上までたどり着いた時点で有り余る筈の体力も尽きたのか、清藍を横たえると自分も地面にへたり込んだ。
荒い呼吸が収まらない。なんとか濁流から逃れることができたがまだ安全になったわけではないというのに、低い水温で急激に奪われた体温と、濁流の中を人一人を抱えて泳ぎ続けていたことで失った体力で、起き上がることもできなかった。
いつこの場所も先ほどのような濁流が押し寄せるかわからない。早く移動しなければと気持ちだけが焦る。
軋む体に鞭を打って、上半身を起こすと、意識のない清藍の顔を覗き込んだ。
その時点においてやっと気づく。おかしい。自らの『巫女』の危機だというのに、水の御神が何もしないなどということがあるのだろうか。
ぞくりと外気や濡れた体のせいではない寒気を感じ、乱暴に清藍をゆすった。
「せいら!しっかりしろ、おい!!」
何度目かの揺さぶりで、ぴくりと清藍の瞼が動いた。
「……っん」
ゆっくりとその長いまつげを揺らし、清藍が目を開いた。束の間その瞳はぼんやりと周囲をさ迷っていたが、雨と泥でドロドロの徹が視界に入ると先ほどの濁流を思い出したのかい慌てて身を起こした。
「せいらっ!良かった……。このまま目を開けないんじゃねえかと……」
体を起こした清藍の両肩に手を置いて徹はほっとしたように心の不安を吐露した。
「徹……ここは……みんなは……」
状況が判らず混乱しているのだろう。泣きそうな顔をしている徹にかける言葉を探していたが、そんなことをしている場合ではないと気付いたのか、萎えた体をおしてなんとか起き上がろうと試みる。
「徹、今はここを離れないと……」
自分たちがまだ川縁にいることを知った清藍は、川の水量を確認し危険水位に達していることを確認し徹にそう言った。
「あ……ああ、そうだな。とりあえず、川から離れよう」
ふらつく体を何とか起こし、清藍を助け起こして、助け合うように身を寄せながら二人は歩き出した。
激しく降り続く雨と濁流を流されていた間に体に付いた泥で体が重い。けれど、今は動かなければ。
彼らが流された先は水田地帯のようで、土地川縁よりも大分低い。少しでも高い場所を探して二人は歩き出した。
H30-12-13(夜) 一部改稿




