28.原因の究明へ⑤
何とか今日に間に合いました。そろそろ佳境です!
今回は戦闘はなさそうです多分。良かった……立ち回りを考えるのって苦手です。名前を考えるのも苦手だし……。そういえば舞台になってる県の県名も思いつかないんですよね。
得意なことの方が少ないなぁ。情景描写くらいかなぁ。
雨は本降りではあったが、風はまだあまり吹いておらず、これなら外出に支障は少なそうだとマンションの入り口で空を見上げて思った。
風が強くなる前に戻らなければと、行きたい場所と行くべき場所を頭に思い浮かべながら、水色の地に猫が蝶やボールと戯れる姿が黒のシルエットで描かれたお気に入りの傘を広げた。
大通りに出て長くても五分置きに来ているパスに乗り駅まででると、慣れた足取りで書店を目指す。
駅ビルに入っているこの書店は、蔵書はそれほどでもなかったが、清藍が多くお気に入りだった。
一緒に販売されている文具も可愛らしい物が多く、そこもポイントが高い。
そして何より彼女がこの書店を好む理由が、書店の隣に呉服店が入っていることだった。
個人経営なのかあまり名前の知られていないこの呉服店は、その品揃えが素晴らしく清藍の好みののものばかりだった。
本を探すフリをして美しい柄の着物や帯に見惚れて、一時間以上も入り浸っていたこともあった。
しかし、今日はそういうわけにも行かない。探していた本を買い求め、さらっと目で呉服店内を眺めてその場を後にする。
あぁ、あの帯素敵だなぁ。などと、名残惜しそうに横目で目的の品を追いながら前を通り過ぎる。
しかし、今日は食材の買い物をいなければいけない。足の遅い台風と秋の長雨とが相俟って一週間ほど雨が続くらしく、下手をすると暫くは部屋から出られないかもしれないからだ。
インスタント食品をあまり好まない清藍だったが今回はインスタント食品のストックを買い込むことも目的の一つだった。
好んでいないため彼女の部屋にはインスタント食品が全くないのだ。
書籍が入った紙袋を鞄に押し込み、一階の食品コーナーまで降りて来て安い方のスーパーに行き黄色いカゴを手に取る。
駅ビルには少し高級嗜好のスーパーと普通のスーパーの二店舗が入っているのだ。
予定していたインスタント食品をカゴに入れながら、歩いて帰ることを考えなるべく軽い物を選びレジに並んだ。
幸い雨のせいか人は少なく、レジには数人の人がいるだけだ。
買い物を済まし外を見ると、まだ風は強まっていない様子で清藍はほっとした。
この分なら少しくらい寄り道しても大丈夫そう。
寄り道が許されたことに少し機嫌が良くなったのか、小さく笑い駅ビルの同じ一階に入っているコーヒーショップに足を運んだ。おしゃれなカフェという点では大学のカフェと同じではあったが、こちらは室内をダークブラウンで統一されており落ち着いた雰囲気だ。
大学のカフェのコーヒーと比較すると五倍近い値段だっだたがこの店はピカ一の味だと思っている。
店内に漂ういい香りににこにこしながらブラックコーヒーを買い、ポーションミルクを一つ取り席に着いた。外の様子を見られるように選んだのは窓際の席だ。
駅前のバスターミナルが見通せる窓は全面ガラス張りで、外の様子がよく見える。その採光の良さが室内を暗い色調で統一しても暗く沈んだ雰囲気にならない理由の一つだ。
ひと時の間、焦りも不安も忘れてゆったりとした時間が流れる。少しの騒めきと雨の音、ゆったりと流れる音楽。コーヒのいい香りを邪魔しない香ばしいガーリックの香りが漂ってくる。誰かがパスタを注文したのだろうか。
その香りに少し空腹を感じ、そう言えばお昼が近い事に気付いてしまう。
せっかく駅前まで出て来たのだ。ちょっとくらいの贅沢しても……と思うが、今月は少し出費が多かった。
店内には大きなモニタが設置されており、ちょうど台風の進路予想をしているところだった。
そう言えば県内に最近毎年のように水害で被害が出ている地域があったことを思い出した。
災害が少ないこの県で、特に水害に関しては死人が出るような大きな災害は十年程なかった筈だが去年と一昨年は同じ地域で同じような原因で死人が出ていることを思い出したのだ。
もしかしてと思いスマフォを取り出して検索してみると、やはり間違いなく二年続けて同じような水害事故が発生しており、更に調べるとその周辺での水害事故が近年多発していることが判明した。
その地域は清藍達の住む崎宮市の西にある市で、榎山市とも隣接していた。
清藍はコーヒーが醒めていくのにも気付かず、夢中になって関連記事を検索した。そして、水害被害の異常な数にただの思い付きではなく疑念に変わっていく。
検索を止め一度画面を閉じると、今度はSNSを開き陸と徹に検索の結果と疑念を書き込んでいく。
一気に入力し終わるとほっと一息ついてそうして気付く。大好きなコーヒーがすっかりぬるくなってしまっていることに。
当然ぬるくても美味しいコーヒーではあるが少し悲しい気分になりながら清藍はコーヒーをすすった。




