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27.原因の究明へ④

本日の登場は清藍のみ。

 清藍せいらんは自室の部屋から外を眺めた。今日は雨が降ってる。それも大きな台風が接近しているという。


 手分けして近隣の災害情報を探し始めてそろそろ一月ひとつきが経とうとしていた。


 秋があまり深まらず暑さの続く中、台風の発生も多く家に籠ることも多くなっていた。


 元々友人の少ない彼女であるから、誰かと出掛けることなどそれほど多くもないのだが、それでも雨の日に一人で家に鬱々と籠っていては滅入ってしまう。


 地方の民話などを蒐集しゅうしゅうすることも好きな彼女は、自然と家を出て一人で蒐集にかこつけて旅行を楽しむことが多くなっていた。


 特に大型の休みには少し時間と金銭を掛けて、有名寺社のある古都を訪れるのを何よりも楽しみにしている彼女であったが、今年はこの台風のせいもあり行けていなかった。


 勿論そのための費用を請求する訳にはいかないので――孫のようにかわいがってくれた綾乃あやのならば言えばポンと出してくれたのだろうが――月々の生活費や小遣いを少しずつ貯金して工面している。


 今年の八月にも実は予定していたのだが、直前の台風で電車のダイヤが乱れ、チケットを取っていた新幹線が動かず全てキャンセルせざるを得なくなってしまっていた。


 代わりに一月遅れてりく達と調査と称した旅行に行くことができたのでそれほど残念に思ってはないなかったが、今度は大きな課題を貰ってしまった。


 あれから、皆で講義の合間に図書館に入り浸り近年の榎山えのきやま市の災害を調べていた。時には仕事の合間をぬって正樹まさき杏子きょうこも参加してくれている。清藍は特に先の東北大震災をメインに調べてみていた。


 前にも増して陸ととおると時間を共有できて、さらに初めての女性の友人になりそうな杏子とも連絡を取り合うことが増えて、調べ物をするためとは言え、彼女はこれまでにない程忙しく外出している。そして、その目的地には必ず誰かが待っている。

 

 自然と調査にも熱が入っていくのだろう。


 雄斗袴山の前にある湖、霞偲湖がずっと気になっているのだが、霞偲湖に関連する災害記事は近年のものは殆ど見つからずその調査は早々に断念した。


 崎宮さきのみや市や榎山えのきやま市をようするこの県は災害の少ない県として有名である。崎宮市は先の東北大震災でも近隣県にあり震度六強を計測しながら、その被害は比較的軽微で、死傷者については数人のみで済んでいた。


 それでも、市内での建物の損壊の数は多く、流通の滞りや一時は計画停電も行っていた。自然溢れる榎山市ならばもっと被害が大きかったのではないかという清藍の考えは、しかし空振りだったと言わざるを得なかった。


 人口や建物の数に違いは当然あったが、明らかに榎山市の方が被害が少なかったのだ。ほかに被害があったのかもしれないが死者の出ていない被害では既に風化し始めており、ネットを使って調べる限りではもくの神に直結しそうな被害は見つけられなかった。


 課題の答えが見付からないことに加え、楽しみにしていた旅行を潰してくれた台風が近づいているということが彼女の心に陰りを与えている。


 ポロンとSNSの鳴る音が静かな室内に響く。


 ああ、そういえばこれもか。


 最近講義で話しかけてくる男性に乞われて、IDを教えてしまったことを少し後悔していた。


 他愛もないことを三日と開けずに送信してくる彼に少しうんざりしている。


 自分について回る噂話を知らない筈はないと思うのだが、この人物はそんなこと気にもしないように気安く話し掛けてきて、無造作に清藍の内側に入って来ようとするようで少し苦手だった。


 特に陸や徹との関係を聞かれた時には言葉に詰まってしまった。親戚――ただの親戚としか言えないことが少し寂しい――だ。それ以外に何があるだろう?それでも彼女を支援してくれている、言わば親のような存在が綾乃であるから、対外的に見れば自分は彼らの叔母ということになるのだろうか。


 自分は年上の甥っ子がいるのかなとど考え、清藍は少し笑った。


 そういえばあの旅行以来、徹や陸ともID交換をすることができたのは僥倖ぎょうこうといっていい。そのおかげであまり時間を気にせずに彼らと繋がることができる今は前より心細さが減った気がする。


 不思議だと思う。いつでも誰かと繋がれるという安心感だけならば、この相手でもいい筈だ。けれど、繋がることに対して、うんざりする気持ちと心待ちにする気持ち。こんなにも違う。


 図書館から借りていた本を閉じて、スマホを手に取る。想像通りの相手からのSNSの着信があった。


 開いて見る気にもなれずにそのままスマホを机の上に置いてまた外の景色を眺める。今日は講義もない。雨で出掛けるのを一度やめたのだが、久々の一人に何故か心が躍っている。出掛けたい気持ちを抑えてこのまま部屋にいるのも嫌だった。


 気晴らしに近くの書店にでも行ってみることにして彼女は腰を上げた。

H30-11-25 加筆

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