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22.霊山への道

 うーん、何も起こらない状況で投稿してもと考えたのですが、あまり文字数が言ってしまうのもと考えここで切って投稿しました。


 出来れば今日中にもう1話上げたいですができるかな……。


 今日中にもう1話上げる事が出来なかったので、後半少し追加しました。


 空を見上げれば抜けるような青空が見える。湿度もぐっと下がり気温はまだ高いものの、すごしやすい爽やかな風が吹いている。絶好の外出日和の天気だ。


 一行は早朝とも言える午前五時半には起床し、準備を整え雄斗袴山の入山受付時刻の午前六時には受け付け前に到着していた。


 十織とおるりくそして新汰あらたの三人のみ背に大き目のリュックを背負った登山用の装備に身を包んでいる。昨日、急遽新汰が手配してくれたものだ。


 体力にあまり自身のない新汰は更に足への負担を和らげてくれるという登山用タイツを履いていた。


「じゃ、行って来る」


 浮かない顔で山頂を一瞥してから新汰が残る正樹らに言った。


「いってらっしゃい。一応天気確認したら今日は一日晴れらしいよ。山の天気は当てにならないらしいけど」


 登山に加わらずに済んだ正樹まさきは満面の笑みである。


 無理やりにでも参加させてやるんだったと、苛立ち紛れに相棒を軽く睨み、ため息を付いてその隣に立つ恋人に目線を落とした。


「一応、三時迄には戻れると思うけれど、それ以上遅れるようなら連絡は入れるよ」


「うん。気をつけてね」


 答えるのは杏子きょうこだ。急な予定変更に少し心配そうにしている。


「お土産よろしくね」


 十織と陸の運動能力を知っている清藍せいらんは、心配自体は余りしていないようだ。


「頂上の石とかか」


「山頂に売店とかないのかな。富士山とかはあるよね」


「そこまで有名な山じゃないしどうだろう。山小屋くらいはあるかな」


 十織と陸は振り返って山頂を見上げてみた。当然麓から見上げたところで判るはずもなかったが。


 三人は神社の境内の中にある登山受付をし入山料を払うと正樹たちに手を振って出発した。


「さすが霊山かね。お守り付きだ」


 十織は手の中の小さなお守りを視ながら呟いた。入山料を払った際におつりと一緒に人数分のお守りを受け取っていた。


「暢気でいいな日上君は。昨日調べたら、熊が結構いるから注意って書いてあったよ」


 体力の問題に加え土の神への謁見も控えている新汰は緊張しきりだ。


「熊か……それでリュックに鈴ついてるのか」


 自分のリュックの鈴を指で弾いて十織。


「……気休めでしかないけれどね」


「熊に会ったら目を逸らさずゆっくり後ずさる様に逃げる、だったっけ」


 対処法を思い出しながら陸はポケットからスマホを取り出し対処法を検索してみる。


「……やっぱそうだね。『熊の様子を見ながらゆっくりと離れる』って書いてある」


「今年は熊の出没よくテレビで見るし、気をつけないとね」


「向かってくるようなら最悪殺してもいいんだろ?」


「普通の人間にはできないけれど、君なら出来る気がして怖いよ、日上君」


「やめろ。今お前女なんだからな、一応。というか男の時でもやめろ」


 熊を素手でくびり殺す徹を想像してしまい、頭痛を感じながら陸が釘を刺す。相方ならば本気でやりかねないと思っているのだろう。


 十織は男性の時は接近戦を得意としているが、流石に女性の時には同じようには行かない。


「……そうだった。残念だな」


 普段から鍛練をしている体術に関しては、性別関係なく普段通りの動きが出来るかも知れないが、力に関しては間違いなく劣っているだろう。


 男性陣二人の呆れ顔にも気にも留めず、十織は先頭にたって歩いている。とんとんと登って行く様子は軽やかだ。


 登山の入口には、石の鳥居が鎮座していた。流石、霊山の登山口と言ったところか。


 鳥居のすぐ下に『一合目』と彫られた石の道標が見える。


 山道は大きな岩が見え隠れするもののなだらかな登り道で、新汰は少し安心した。最初から急な坂道だと気分も萎えるが体もきつい。


 木々の間を縫うようにして道が続いているため直射日光も受けずに歩けそうだ。山頂付近までいけば森林も少なくなる筈ではあるがこの日陰がありがたい。


 雄斗袴山はもともと火山で噴火を繰り返して出来た山だったため、山には殆ど木々が自生していない岩ばかりの山だったが、度重なる土砂崩れを防ぐために数十年に亘り植樹を続けていた。


 その成果がこれだった。木々の間から降り注ぐ火の光は柔らかく登山者を照らしている。


 霊山特有の空気なのか、単純に高地の早朝故ゆえかきりりと冷えた空気を感じながら登っていく。最初は寒く感じていた体もすぐに温められていくだろう。


 不意に新たは足を止め、彼らの頭上を多く木々を見上げた。


「……視られて……いるのか……?」


 その声に振り返り、辺りを見回す新汰を見下ろした。そして、ふっと新汰に笑いかけきびすを返してまた山道を登っていく。その表情が肯定しているようだ。


 この場所は既に()()の世界だ。呼び出されたとは言え、そこに彼らが侵入していることに違いはない。


 人を快く思わないもの達もここには多くいるのだろう。時折突き刺さるような視線を感じながらの道行きだった。


 雄斗袴山への登山はこの山が霊山ということもあり人気があるようだ。彼らの前後にも思い思いのペースで登山を楽しんでいる人々を見かける。


 中には小学生くらいの子供連れのお年寄りもおり彼らを驚かせた。これも霊山信仰の一端なのかも知れない。


           ☆


 日差しが暑くなってきた。周囲に生えていは木々はなくなり下草も減って来ている。


 直射日光を浴びているため森の中を歩いていた時よりも熱く感じるが、気温はかなり低いようで風が吹くと火照った体に心地いい。


 汗を拭い前を見上げる。先程から急な山道が増えて来ていた。息を切らしているのは自分のみで、十織も陸も黙々と道を歩き続けていた。


 十織に至っては、未だ軽い足取りで跳ぶように岩場を登っている。


 ようやく『九合目』という石碑を見付け、新汰はやっと見えた終わりに大きく息を付いた。


 軽快に先頭を歩いていた十織が急に足を止めた。


 終わりが見えたことではやる新汰は、その停滞に苛立ちを覚えた。


 今、彼の中にはこの苦行の終わりへの期待と土の神にまみえることの出来るという期待の二つでたかぶっている。


 早く進みたいという欲求が彼を支配していた。


「どうしたんです?」


 苛立ちが滲む声が出てしまったと少し後悔する。十織は答えず目線だけで前方を示した。


「見えるか?」


 陸と新汰が十織に並び前方を確認すると、そこには美しい銀髪を風になびかせた人ならざる存在がたたずんでいた。


 切れ長の銀の瞳に、すぅっと通った鼻筋。薄い唇は、薄い紅色をしている。


 色彩を殆ど持たないその存在は、まとう衣にも色彩がわずかしかない。体全体を覆う貫頭衣のような衣に、左肩から羽織る布のみが鮮やかな蒼だ。


 呼吸すらも忘れその姿に魅入ってしまう程の美がそこにあった。完璧な美しさを誇る存在には影が存在しなかった。その圧倒的な存在感と非現実感に新汰は自分が夢の中にいるような錯覚を覚えていた。


 そして確信する。この存在は自分たちにしか目視できていないのだと。


 面白くなさそうな顔つきで鼻を鳴らすと、付いて来るように仕草で示し登山道を逸れて歩き出す。


「道案内してくれるらしいね」


 陸はそう呟くと固まっている新汰を促し歩き出した。

H30-11-07 午後 大幅加筆(1000文字程度)

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