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21.御神の御前に

遅くなってしまいました。


遅れた上に、短いと言う……。


そろそろ男の徹くんが書きたい……。

「冗談、だろう?」


 土の神の要望に関しては、正直ほぼ予想通りで驚くことなど何もなかった。


 しかし今、新汰あらたは驚愕で固まっている。


 りくは彼の様子を眺めながら同情の念を禁じ得なかった。


「仕方ないだろう、土の神様から直々(じきじき)のご指名なんだし」


 うそぶくのは行儀悪く畳みに転がって、煎餅を食べている十織とおるだ。


 例によって正樹まさきと陸の宿泊してる部屋の中、今は清藍せいらん杏子きょうこの姿がなかった。女性陣がいないことをいいことにだらしない格好をしている。


「残念だよ、新汰君。俺が変わってやりたいくらいだが」


 言葉の後ろに(笑)がつきそうな口調で、正樹が相方に声を掛けた。


「お前も着てくれていいんだぞ、正樹。陸くんがきっと立派に代役を果たしてくれるさ」


「まぁまぁ、新汰兄さん落ち着いて」


 二人の口論がエスカレートしそうな気配に、陸が慌てて割って入る。


 こちらは誰がいようと関係なく、きちんと背を伸ばし卓子たくしの前の座椅子に正座している。


 昨日買った土産の煎餅は箱ごと卓子の上に置いてある。彼も一つ相伴になっているようで、彼の前に半分に割った煎餅が置いてある。


「うまいな、これ。塩とバターが絶妙」


「日上君知らなかったの?これ、この辺りの有名な銘菓だよ。婆ちゃん家とか遊び行くと大体置いてなかった?」


「へぇ、そうなんだ。婆ちゃんつったら、俺の場合、戸上の婆ちゃんだしなあ」


「……あの家なら置くのはもっと高級品か」


 まるで部外者のように軽口を叩き合っている十織と正樹に腹が立ったが、二人を小突き回しても仕方がない。ぐっとこぶしを握り締め新汰は言った。


「のんびりしてるけど判ってるのかい?雄斗袴山ゆうとこさんって言ったら、登山口から標高差は千メートル以上のある山なんだよ!標高自体は全然負けてるけど、登る距離は富士山と変わらない。何の準備もしないで入山したら簡単に遭難する山なんだぞ!!」


 二つ目の煎餅を子袋から出して咥えたところで手を止め、目を丸くしている十織。


 そうなの?という顔で確認するように陸に目線を向けると、彼は神妙な顔で頷いて返してくる。


「ちょっと待ってろ!電話してくる!!」


 その暢気な十織の姿に腹を立て、がたりと立ち上がると新汰は部屋を出て行った。


「……怒らしちゃったかな?」


 出て行く正樹の背中を見送って暫くしてから、ポツリと十織が洩らす。


「大丈夫だよ、多分」


 答える正樹の言葉もなんだか頼りない。


 しかし、明日に雄斗袴山に登るという日程自体はもう動かしようがない。


 苦手属性のない十織ではあるが、だからと言って土の属性と相性が良いのは女性型の時だけである。つまり、男性型に戻ってしまうと土の神の姿を()()ことは勿論、その声を聞き取ることすら難しくなってしまう。そして、女性の姿でいられるのは最長でも一週間程度だ。


 どうしても、十織の他に神の声を聞くことの出来る人材が必要だった。


 その事を土の神に伝えたところ、神の方から新汰を指名してきたと言うわけだ。


 それともう一つ、自らの支配が及ぶ場所で最も縁の深い場所に来るようにと言うのが条件だった。


 一行の中でも十織を除けば、最も土の属性にゆかりの深い新汰が指名されたことは納得いくことだったが、神域とは言えわざわざ山頂まで出向く必要が果たしてあるのかに関しては正直疑問ではあった。


 もしかしたら土の神はその行為において彼らの本気度を計ろうとしているのかもしれないとは、陸の台詞だった。

 どちらにせよ、彼らには選択肢は多くなかった。

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