15.湖の散策
遅くなりました。15.湖の散策 遅い割りに茶番の回から抜け出せない毎日です。
変化が少ないと飽きてきますよね。申し訳ありません。
朝食を終えた後で一行は湖の外周を沿うように走る道路を車で走っていた。
高地にあることで有名なこの湖は、その面積は四平方キロメートル以上と言われている。東西に細長い形をしており、既に紅葉の始まっている山々が湖に映えて美しい。
高地のせいか夏でも水は冷たく泳ぐにはあまり適さないがいないわけでもない。今はまだ早朝といって差し支えない時間帯で水遊びする影は見られないが、まだ暑い九月の陽気に当てられた観光客が涼を求めてか周辺を散策している姿、またボート遊びを楽しむ姿が既に見られていた。
一行は湖を半周ほどし、湖の畔にある駐車場を見付けてに車を止めた。ぞろぞろと車から降りてその風光明媚な景色に感嘆の声を上げる。
「わあっ、綺麗!」
「もう殆ど海だな~、これ」
はしゃいだ声を上げるのは清藍。駐車場と湖を隔てる鉄の柵に両手を付いて、身を乗り出すように湖とその後ろに広がる少し紅葉の始まった山々を眺めるのは十織だ。
県内で最も大きいこの湖は、霞偲湖と呼ばれている。高地にある大きな湖ということでも有名で『天空の湖』などと呼ばれることもある。
「この景色はここでしか見られませんね。確かに綺麗だ」
霞偲湖の方へ走り寄って景色に見惚れている十織と清藍の元へ歩いて向かう陸も感嘆の声を上げる。
「スワンボートあるよ。アレ乗ってレースしようよ」
無邪気にそう言って笑うのは正樹だ。
「いいね、負けないよ!」
はしゃぐように笑う十織がそれを受けて笑う。今は外にいるせいか言葉遣いに気を付けているようだ。
「……体力馬鹿だから、ひーは。正樹さん頑張ってくださいね」
「えー、陸君も一緒にやろうよー」
「……遠慮しときます……」
湖を眺める一行は和やかな雰囲気だ。と言うのも杏子の体調が回復したからだ。大事を取って今はまだホテルで休んでいるが、朝食の際にあった彼女は顔色も良く、朝食も進んでいるようだった。
「風の精霊……か。俺も見てみたいなぁ」
湖に目を向けたまま目を凝らすように正樹がポツリと言う。思い付いたようにそれに答えるのは十織だ。
「あー、そうか正樹さん風使いですもんね」
「うん。風しか取り得がないし、どんな感じかひとめでいいから見てみたい。流石に自分の守護神にしたいとか大それた事は考えてないけど」
ちらりと清藍に目をやって笑う。引き合いに出された女性は、考え込むような顔をしながら呟く。
「大それた事だったんだ……」
「あー、うん。俺も良くわかんないけど、守護神持ちなんて宗家でも数人しかいないと思うよ。だから、あの精霊も水上さんのこと戸上の女って呼んでたでしょ?」
「あ、そう言えば……」
「宗家の人間でも実力者じゃないと持てないと思ってくれれば間違いないかなぁ」
「なるほど……」
自分の成した事ではあっても、事の重大さが清藍には良く判らなかった。そもそも、彼の神は最初から水の巫女を欲しがっていた。
穢れた自らを浄化出来る人材がいれば自分でなくても良かった筈であったし、姉の力添えも大きな理由の一つだった。
「そういえばさ、その水の精霊……水の神様って今どうしてるの?その首にしてるやつ、神様から貰ったものでしょ?」
清藍が肌身離さず実に付けているネックレスは、透明な水晶のような細長い石が三本連なったもので、左右の透明な石が少し短く、中央の青い水晶のような石だけが少し長い。
「あ、はい。アーガは……あ、呼び捨てにしちゃいけないのかな……?水の神様は多分今は眠ってると思います」
「眠ってる?意思の疎通はできてない感じ?」
「はい。時々起きてるかなって感じる時はありますけど、すごく疲れているみたいで。その時も時々歌を詠って欲しいって頼まれるだけです」
「そうなんだね。長いこと穢れの中にいたんだろうから力を戻すにも時間が掛かるんだろうね」
少しだけ傷ましそうな顔になって正樹は清藍に向けていた顔をまた湖の方に戻した。
「正樹さん、せいら。そろそろ行こう。この湖の外周歩くとなると、結構時間かかるから」
静かに促す陸の声に、二人は頷いて陸について歩き出した。見ると十織はもう先に立って歩き出していた。




