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14.まどろみの中の決意

 大分遅くなってしまいました、すみません。

 次の展開を考えあぐねておりました。そろそろ茶番を終わりにして話を進めたいのですが……。

 きっと次回からは話が動くと思います。



【宣伝】前作「小山の怪談と水の花」投稿されております。

    もし宜しかったら、そちらも読んで頂けると嬉しいです。

 夜も更け各々が部屋に引き上げることとなり、十織とおるは必要以上に緊張しながら清藍せいらんの待っ部屋に戻って来た。


「おかえり」


 清藍はまだ休んでおらず、座椅子に腰掛けて持参したらしい文庫本を読んでいた。


「まだ休んでなかったのか」


「ん……、さっきお風呂行ってきたとこよ。大浴場凄かった、十織は残念ね」


 見た目は女性な今の状態なら十織は堂々と女性風呂に行くことができるが、流石にそんな気にはなれず部屋のシャワーで済ませていた。


「今度は遊びで来たいよな。飯も美味かったし」


「そうね。遊びじゃこんなお宿は無理だけど」


「安宿でもいいじゃん。皆でワイワイできれば」


「うん」


 確約のない約束ですらない会話だったが清藍は嬉しそうに笑う。


 事前に買い込んだ飲み物の類いを詰め込んだ冷蔵庫から飲み物を選び出し清藍の正面に腰を下ろす。


 清藍の前にもお茶のペットボトルが置かれている。


「またコーラ?寝る前なのに」


「いいだろ、好きなんだから」


「お茶にすればいいのに」


「あーあー、きーこーえーまーせーーん」


「子供っ?!」


 そんな他愛もないやり取りに、どちらからともなく吹き出して笑い合う。


 清藍にとっては望んでも得られなかった自分以外の誰かがいる穏やかな時間だ。


杏子きょうこさん大丈夫かな?」


「ああ、それな。明日になっても体調がすぐれないようなら一旦戻ろうかって」


「……そうね。その方がいいかも」


 週末の連休を使い三泊する予定だった。


 清藍にとっては家族以外での旅行は始めてで、予定を切り上げて帰るのは少し残念な気がしたが杏子の体の方が大切だ。


「もし、明日帰ることになったら、明後日にでも花園パークにでも行ってみないか?」


 清藍の気持ちを察したのか十織はそんなことを言い出した。


 思いがけない提案に目を瞬かせて十織を見る清藍。


「いや……一応さ、戸上さんはここらって言ってるけど、南の方も見といた方がいいと思って。陸も……連れて、さ」


「あ、うん。……わかってる。いいわね、今ならきっとコスモスが綺麗よ」


 若干言い難そうに鼻の頭をこりこり掻きながら種明かしをする十織に、清藍はにこりと微笑み返す。判っていると言い聞かせるのは自分にか相手にか。


「車ないから電車になるけどな」


「それは仕方ないよね。貧乏学生だもの、私達」


 お互い戸上家からの援助のみで生活している身分である。まるで秘密の仲間のようだと思った。


「陸も持ってないしな~。多分親にせがめばいくらでも買って貰えるんだろうけど……」


「陸から親に頼むって、多分ないんじゃないかな。買ってくれるって言われても断りそうだもの」


「だよな~。こう、……少しでいいから臨機応変にだな……」


「彼の辞書に臨機応変なんて言葉はないと思う、よ?」


 十織は大げさにため息を付いて、背もたれに体を預け天井を見上げる。


「だよな~。金銭感覚も俺と変わらんし、俺が金持ちの子供だったら絶対金遣い荒くなりそうだけどなぁ」


 すっかり男言葉に戻っていることにも気付いていない様子でリラックスしている十織を見て、釣られるように清藍も和んで笑みを漏らした。


 二人の部屋は長方形の形をしていて、部屋に入ると二畳ほど通路になっており、通路の右手に、トイレ、洗面所を兼ねる浴室がある。通路の突き当たりが居室になるが、ベッドが二つ並べてある窓側はフローリングで、その手前が三十センチほど床が上がっている一角があり、そこが障子で仕切られた四畳ほどの和室になっている。


 今まで二人が会話していた場所がこの和室である。


 和室には古木に彫刻を施した飴色の小さな卓子がおいてあり、それに合わせた座椅子が二つおいてある。


 ベッドは二つ設置されているが、希望すれば畳の部屋で寝ることができ、押し入れを確認したら布団が二組用意されていた。


 どうしても抵抗のあるならそこで寝れば良いという陸の配慮で彼らの部屋と交換してもらったのだ。


 夜も更けてきて、各々に眠気を催してきた二人はそれぞれのベッドに潜り込んだ。


 気恥ずかしさから清藍に背を向けて横になる十織。体は疲れているが眠れるのだろうかと思う。


 きっと目を閉じれば眠れると思いながらもその目線は窓から見える星々。そういえばカーテンを引いていなかった。


 部屋の中の照明は消したが、暗闇は怖いと清藍の希望で間接照明の一つが点けたままになっている。


 眠ろうと試みているのかしばらくは時計の針の動く音と空調の音だけが空間を満たした。


「……ね。一つ聞いてもいい?」


 眠れず沈黙に飽きたのか小さな声で清藍が問うて来た。


「何だ?俺に答えられることにしてくれよ……」


「そんな難しい質問じゃないと思う」


 と答えながらも、しばしの間沈黙が降りる。どう聞いていいものか考えあぐねているのか。


 たっぷり数分ほども過ぎた頃に静かな問いが聞こえた。


「皆、私にも術力ちからがあるって言ってる。私も徹みたいに数メートルも跳んだり、戸上さんみたいに怪我を治したりできるの?」


「……あぁ、多分な」


「多分って……」


 待ってる間に睡魔が襲って来たのか少し眠そうな声で答える十織に、無責任な返事に困惑する彼女の声が重なる。


「人によって適正があるからさ。どういう力が使えるかはやってみないと判らないんだよ。俺だって日上なのに回復術は使えないし」


 もそもそと布団の中で身じろぎ言い訳じみた答えを返す。


「でも清藍だって、歌で神様を浄化しただろ?あれは水上の秘術だって婆様も言ってたじゃないか。今あれができるのは清藍しかいないんだよ。穢れた神様を浄化できるって凄い事なんだぜ?判ってる?」


「あれは、半分以上お姉ちゃんの力だし。二人がアーガの力を殺いでくれたからでもあるでしょ。私だけの力じゃないもの」


「そうだとしてもあの歌を詠うことすら俺と陸は思いつかなかったし、実際あのまま戦っていたら負けてた公算のが強いんだから」


「訓練したら回復とか出来るようにならないかな……そしたら、私も二人の手伝いできる……?」


 睡魔に襲われとろとろとした眠りの中に意識が引きずり込まれるのを覚えながらそんなことを呟く。


「……ありがとな、俺らの事気に掛けてくれて。でもホントは、俺も陸も……きっと藍良もせいらに危険な事してほしくないんだよ……」


 優しく大きな手が清藍の頭を撫でてくれた気がした。睡魔に負けて眠りに落ちていく前に感じたその掌はとても温かかった。

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