1.二人の来訪者
お待たせしました。待っていて下さった方もしいらっしゃっいましたら、ですが。
新キャラ寝ながら考えました。おっさん二人ですみません(汗)
正樹は以前の大雨の影響で、大きな土砂災害に見舞われたという山を見上げていた。
その山の麓には地元の有名大学のキャンパスがあったが、幸いその手前で土砂は止まり実質的な被害は少なくて済んだようだ。
「……地形、変わってるな」
「結界も消えてる」
「新汰」
正樹は山の周辺を歩いて、周囲の変化を調べていた連れを振り返った。
雨の臭いの強く残るその場所は、数年前に作られた美術館の駐車場だ。
夕方に差し掛かり周囲を朱に染めながら太陽が沈もうとしている時刻だ。周囲には来客の姿もまばらだ。
「どうだったー?」
「……何も残されてないな。ずっと長い間、垂れ流されていた呪詛すらきれいさっぱり」
肩を竦めさして残念そうでもなく、新汰はそう告げた。
正樹はその細い、開いているかも定かでない目を再びお山に向けた。
「あいつら、かな?」
「他に誰が?」
「確かに……」
「例の水使いも味方に引き入れたらしいよ」
穏やかそうな雰囲気の細い目がキラリと光を放った気がした。
「まーじーかーー」
やはりその口調もどこかのんびりしていて危機感を感じさせるものではない。
正樹はその柔らかそうな天パーの髪をかりかりと掻いた。
対する新汰と呼ばれた青年は、少しだけ神経質そうに掛けていた眼鏡を直した。
かちゃりとかけ直す音がやけに響く。
「戦力アーップじゃーん!」
緊張感の感じられない相方の物言いに、新汰はくすりと笑った。
それだけで、場の雰囲気は不思議と和んだ。
思った以上に緊張していたことに今更気付く。
「緊張感、ないな、お前」
「浄化された場所で緊張しててもしゃーなくね?」
「まぁ、そうなんだけどさ」
「水使いって、もう残ってないんだろ?」
「んー?探せばいるかもとは思うけど、能力は期待できないねー」
「水上多かったもんな、この辺……」
「探す気?」
「いーやー、今更探しても期待できないらしいよ?」
「あー、そうなんだー?」
本気で言ってるのかと、新汰は相方を振り返る。
隣で同じ様な仕草で山を見上げる相棒の目には、この街はどう見えているのだろうとふと考えた。