番外編3 過去が今に至る、その時〜真実
九話です!
そして、番外編ラストです!
今回ついに、志帆が現在に至った訳、あの日、何があったのか、全て明らかになります。
あれから三日後、事件は起こった。
彼女、伊藤さんが不登校になった…。理由としては部屋から出てこないらしい。
クラスの皆誰しもが、最初の二、三日は風邪なんだろうと思っていた。ただ、一週間が過ぎた頃、彼女が本当に不登校になってしまったんだと周りがざわつき始めた。ただ、僕が気になっているは不登校になったってところ『だけ』ではない。三日前の『志帆』の事が気になって仕方がないのだ。
あまりにもあの日、様子が違っていた。もしかしたら、彼女の不登校に関わっているのではないか。そう思ってしまう。
自分の彼女のことだ。そう簡単に疑いたくない。ただ、志帆がおかしくなった時期と伊藤さんの不登校の時期がまるかぶりだ。何かあると思ってしまうのは自意識過剰だろうか…。
そして僕の思い込みは、現実のものとなった。
一週間後、志帆が生徒指導室へと呼び出された。彼女の彼氏としてはかなり不安だった。ただ、一番不安になったのはここからだった。僕も呼び出された。
「え?」
「おい、奏。お前、何やらかしたんだよ…。」
「太一、僕が聞きたいくらいだよ…。」
あの時、僕は荷物を持っただけだ。ということは、この事とは別案件での呼び出しだ。となると、何だ?僕は、何をやらかした?ダメだ。何も思い当たることがない…。
「そ、失礼…しまーす…。」
「おう、雪白来たか。まぁ、入れ。。」
「は、はい。」
僕は、恐る恐る入ったつもりが、生徒指導部の田辺先生はなんだか、あまり僕に怒ってる感じはなかった。
生徒指導室には、田辺先生、志帆、僕の担任の安藤先生、志帆の担任の森谷先生の四人がいた。
「それで、田辺先生…。僕は何で呼ばれてしまったんでしょうか…?この場合、やっぱり…」
「いや、雪白に対して説教するつもりはない。雪白には少し事情を聞きたくな。」
「事情?」
「あぁ、ここにいる桜ノ宮とお前と同じクラスの伊藤についてだ。」
「…っ!」
やっぱり、その件なんだ。そして、その二人は関係してしまってるんだ。
「それって、伊藤さんが不登校なのに何か関わりがあるのですか?」
「あ、あぁ…。一昨日な、安藤先生が伊藤の家に行ったんだ。」
「田辺先生、そこからは私から説明します。」
「安藤先生…。わかりました、お願いします。」
「一昨日、伊藤さんの家に訪問したの。そして、彼女の部屋で一緒に話したのだけれども、学校に関係するワードを話すとね……。」
一昨日、伊藤家。
『でも良かったわ。伊藤さんが元気そうで。』
『はい…。ご心配おかけしました。』
『いいのよ、健康第一だもの。そうだ、一つだけ聞いてもいい?』
『はい。なんでしょうか?』
『何か学校であった?どうして学校に来なくなったの?』
『学校…。学校……。がっ………』
『伊藤さん?』
『はぁ……!!!はぁぁ……!!!いやぁぁぁ!!!!』
『伊藤さん!?どうしたの!?伊藤さん!!?』
『いやぁぁぁぁぁ!!!!!!』
『落ち着いて!!大丈夫よ!』
『和葉!?』
『お母さん!!和葉さんが!!』
『和葉!!落ち着いて!!ここは家よ!!』
『はぁぁ!!い……え!?』
『そうよ!!落ち着いて!!』
『はぁぁ!はぁぁ……。はぁ…。』
『お、落ち着いた?』
『さ…………』
『え・・?』
『さく……ら…のみや…こわい……さくら…のみ……や……こわ…い』
『さくら…のみや……。桜ノ宮…!?』
『学校に行かなくなってから学校に関する言葉に反応してこうなってしまうんです。たぶん、その桜ノ宮って子となにかあったんじゃないと。学校に言おうと思いましたけど、この子の事を考えて、もう少し後にしようと思ってたんです。』
『桜ノ宮……。もしかして、隣のクラスの桜ノ宮志帆さん?』
現在
「その事を一度、生徒指導部で話し合って、今日に至ってる形です。」
「そ、そんなことが……。」
伊藤さんとは、少ししか話をしたことがなかったが、明るく、元気で話をしていて楽しい人だった。そんな人がそんなことになるなんて…。
「先ほど、桜ノ宮さんと話をしました。すると……。」
『だって、あの女が奏君と仲良くなり過ぎなのがいけないんですよ。だから、軽く警告しただけです。それをオーバーに捉えてるだけなんじゃないですか?』
「と、言ったんです。」
「し、志帆……。」
どこからだ。どこからか、彼女は僕の知っている、『桜ノ宮志帆』ではなくなっていた。
タメ口も使えなく、一緒にいる、それだけが楽しい、嬉しい、可愛い。
そんな彼女は、もういない。目の前にいる彼女は、何か、別の存在に変化してしまってる。わかりやすく言えば、堕天してしまった天使だ。
「雪白、お前に今日来てもらったのは、伊藤との関係や桜ノ宮のことについて話してほしいんだ。まぁ、今回の件の参考人みたいなもんさ。実は、桜ノ宮がなあれ以来だんまりでな、なら申し訳ないが雪白に頼るしかなかったんだ。桜ノ宮の言葉の中に『奏』って名前があったから、きっと雪白だなっと思ってうちの学年にその名前は一人だからな。」
「なるほど…。わかりました。僕で良ければ協力します。」
「助かるよ。ならさっそく…。そもそも、桜ノ宮と伊藤との関係はなんなんだ?」
「志帆とは、恋人です。伊藤さんとは、普通に仲がいいですね。時々、生徒会の手伝いもしてましたね。」
「なるほど…。恋人なのか……。」
「なんでしょうか…?」
「いや…。今の高校生って、こういうもんなんだなって……なぁー。ねぇ、安藤先生。」
「なっ!?私に振らないでくださいよ!!ふんっ!どうせ私は独身ですよ!森谷先生なんか言ってやってください!!」
「あ、僕婚約しました。」
「あぁぁぁぁ!!!」
「んで俺は既婚者。後は、安藤先生だけですね。せめて、今の教え子に抜かれないように気を付けてくださいね。」
「せ、せめて!今年中には男を…。」
「……。先生方、論点が……。」
「「「あ。」」」
大人というものは怖いものである。結婚。その話題になると、もとの話題が見えなくなってしまうのだろうか…。
「ん…んっ!!失礼…。話を続けてくれ…。」
「は、はい…。志帆とは昨年、十二月から交際をしています。その頃は何も思っていなかったのですが、今は明らかに何か志帆の様子がおかしいと思います。そして今日、ここで先生の話を聞いて、確信が持てました。」
「その、おかしいとは?」
「なんだか、僕以外の何かを見ていた気がしたんです。なんか……はっ!!」
そうだ!今、頭でモヤモヤしていたピースがすべて繋がった。
「志帆!三日前、僕が伊藤さんと話してた時、見てたんじゃないの!?そしてその後、伊藤さんに何か言ったんじゃないの!?」
「…………。」
「本当なのか、桜ノ宮!!?」
「だって、奏君が悪いんだよ…。私じゃなくて、あの女と仲良く話して……。」
「えっ…?」
「だから、あの女がいなくなれば、私と『だけ』話せるでしょ?」
「「「「「!!??」」」」」
そこにいる誰もが絶句した。僕はもう志帆が何をいってるのかが理解ができなかった。
その後、今日のところは解散になった。僕はしばらくの間、志帆との接触を控えるように言われた。
現在、志帆の処分が検討中らしい。田辺先生の話では、停学が妥当だとか。
「なるほどな……。そんなことがあったのか…。」
「誰にも言うなよ、太一。公になると面倒なことになるから。」
「あぁ、わかってる。」
その後、田辺先生が言っていた通り、彼女は三週間の停学になった。
ただ、これが最大の謎だった。彼女の停学期間中、不登校者が五人もでた。僕が仲良かった人やよく話してた人だ。もう、恐怖がにじみでて、僕が不登校になりそうだった。
そして彼女の停学期間が終わった時、思い切って彼女に告げようとした。あの思い出の、僕らの『始まりの』場所で。
「し、志帆。あ、あのさ、僕、君と別れた……」
ギュッッゥゥゥ!!
その刹那、彼女が僕の胸に飛び込んできた。
いや、飛び込んでくるだけなら良かった。彼女の腕にはある二つの刃物が握られていた。
そして極めつけには………。
「奏くんは私のことが嫌いになったの?」
嫌いにはなっていない。ただ、怖くはなっていた。そんなこと、口が裂けても言えなかった。そして、それが言えず、今に至った。
現在。
「奏くーん!!一緒にお昼食べよう?」
「あぁ、ごめんね。今日は、太一と食べる約束してて…。」
シュッッ!!
「奏君…。私のことが嫌いになったんだ…。」
僕の横をスローナイフが掠った。いや、その残骸が見えないから、正確には、掠った気がするになるのかな?だけど、後ろで焦ってる太一がいるのを見る限り、掠ったなこれ。
「太一、一緒に弁当食べるの明日でいいか?なんか生死がかかってる気がするんだ……。」
「我が親友、奏よ。言葉は正しく使った方がいいぞ。かかってる気がするじゃない、かかってるんだ。早く行ってこい。俺は雅と食べることにするよ。」
「あ、ああ……。」
こいつ、いつのまにか彼女のこと呼び捨てになってやがる。
「それじゃあ、行こ!奏君!」
「あ、うん。」
これからも、こんなに毎日が続くんだろうなぁ…。そう思うとちょっと気が重くなりそう……。
いかがでしたでしょうか?
これが、志帆が現在に至った真実、全てです。
奏も大変ですねー。
次回からまた、本編に戻ります。
どうぞ、ご期待ください。
今回も見ていただきありがとうございます!
次回も読んでいただけると嬉しいです。