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VSヤンデレ彼女  作者: 柊夏木ヤヤ
1st season Kanade&Shiho
43/62

志帆の過去といつも通りの日々と

四十三話です。

今回は前回の続きに当たります。

志帆の妹、志乃が語る彼女の過去。果たして志帆はどういう人生を歩んできたのだろうか。

では、お楽しみください。

「今からお姉ちゃんの……桜ノ宮志帆の今まで、過去のことについてお話しします。なぜ、笑わない……いえ、笑わなく『なった』のか。そして桜ノ宮志帆の家でのことです。」

 僕は持っていたカップを置き、集中して話を聞く態勢に入った。


「そもそもの話ですが、奏さんは私たちの親のことについて、何かお聞きになったことはありますか?」

「いや、一度も。家のことは一切。」

「そうでしょうね。まず、本人が話したがらないでしょうからね。」

「えっと、志帆に何があったの?」

「どのくらいか正確なことは分かりませんが、お姉ちゃんはもう十年以上、私たちの両親とまともな会話をしたことがありません。」

「なっ!?」

 そんなことがあるのだろうか。だって仮に十年だとして、その頃の志帆は六~七歳だ。もうそれは酷すぎないか?

「さっきも言いましたが、お姉ちゃんは奏さんと会うまでは表情という表情がありませんでした。それは両親と関係があります。」

「両親と?」

「私の両親は常に完璧を求めるような人なんです。私が生まれて物心が付いた頃、両親はお姉ちゃんと私のことを比較するようになりました。どっちが優れているかと。」

「何だそれ!親としてどうなんだそれ!」

「落ち着いてください。お姉ちゃんが起きちゃいます。」

「あ、ごめん……。」

「気持ちは分かります。それが普通だとお思います。では話を続けます。完璧を求めて私たちを比べていた結果、より優れていたのは私と決められたのです。」

「まさか、だって志帆は志乃ちゃんと少なくとも二歳は離れているよね?そんな年下の妹に負けることなんて……。」

「それがあるんです。ちなみにいま私は中三なので、お姉ちゃんとは二歳離れてるという所は合ってます。」

「そっか…。それで優れている方を決めた君たちの親はどうしたの。」

「私たちの両親は、優れていない方、つまり、お姉ちゃんを自分の子じゃ無いような態度で接するようになりました。いや、まともに接していたかも怪しいです。」

「なっ!?それでも親なのかよ!?」

「だから落ち着いてください。ここからの話は特にお姉ちゃんに聞かれちゃいけない話なんですから。」

「すいません……。」

「では話の続きを。お姉ちゃんへの接し方で特に酷かったのは母でした。私の分はご飯は作るんですけどお姉ちゃんの分は作らない。自分でやりなさいっていう人でした。」

「そ、それって、育児放棄として訴えることができるんじゃ……。」

「母はお姉ちゃんに口止めをしてました。誰にも助けを求めるな。必要最低限以外、私に話しかけないでと。」

「そっか、志帆が飛び抜けて料理が上手だったのもそれがきっかけ……。」

「おそらくは。母はお姉ちゃんに学費や生活費だけを渡して後は自分でやれと言ってました。」

「そ、そのことを父親は…?」

「父はお姉ちゃんへの態度が酷くなった一、二年後に出て行きました。離婚してるのか、ただ別居してるだけなのかよく知りません。」

「嘘だろ……。」

 志帆は……小さな頃からそんな苦痛を浴びて生きてきたのか…。それは表情も失われてしまうよな。もしかして、志帆があんな風、『ヤンデレ』になってしまったのはこのことが原因……?

「お姉ちゃんは凄いです。あんなに酷い仕打ちを受けて今までずっと、文句の一つも母に言わず生活してきたんですから。」

「志帆……。」

「でも、去年のクリスマスイブの日、お姉ちゃん、生まれ変わったかのように変貌したんです。」

「クリスマスイブ……。」

 去年のクリスマスイブ……。僕と志帆が付き合った日…。彼女を僕が変えたとでもいうのか。

「あの日、学校から帰ってきたお姉ちゃん、それはもう幸せそうで、世界まで変わってしまったみたいでした。」

「そう…なのか……。志帆……。」

「母も最初は、笑うなとか結構酷いこと言ってたんですけど、お姉ちゃんはそんなことお構いなくで自分の世界に入って帰ってこなくなったときもありました。」

「そ、そんなに……?」

「はい。そんなにです。ただそのうち変化したんですよ。」

 まさかとは思うけど四月の、あの……。

「お姉ちゃん、人がまた変わったみたいで、あの女許さないとか、奏君は私のモノとかをずっと連呼する事が多くなったんですよね。」

「やっぱり……。」

「何か知ってるんですか?その頃何が起こったのかは私知らなくて。確か、一回停学になったときもありましたけど…。」

 あの時のこと知らないのか、大事っちゃ大事な事があったのに…。

「奏さん…?」

「あ、あぁごめん。話すよ、僕の知ってること。」



 僕はあの時の事、志帆が豹変してしまったあの事件のことについて話した。

「あのお姉ちゃんがそんなこと……。」

「てっきり、家族の人は知ってると思ってたよ。」

「いえ、私は何も知りませんでした。ただ、母がお姉ちゃんの学校にお金を持って行った事がありました。おそらく、そのことなんでしょうね。」

「口止め…。」

「多分。でも、お姉ちゃんはお姉ちゃんでした。母の言うことには文句を言わなかったし、私にも優しかったです。」

 それは、過去にそんな生活をしていたら優しい人間にもなるよな。

「毎日が楽しいかのように学校にいくようになりました。小さい頃からお姉ちゃんの事を見てきた私は、安心の気持ちでいっぱいです。」

 そうだよね…。この話を聞いていたら僕は志帆に対してもっと色々やれてあげた。僕にはそんな気持ちまである。

「楽しそうに学校に行っていたのに、ついこの間、急に昔のお姉ちゃんに戻ったようになりました。」

「ハワイ旅行の後だね。」

「はい………って、旅行先ハワイだったんですか!?」

「志乃ちゃん、声大きいよ!それと知らなかったの?」

「はい、知りませんでした。というかいいなぁ。私もハワイ行きたい…。」

「あはは…。」

 今度一緒に行こうか。とか、簡単に行けるような距離でないし、お金だって………。

「す、すいません…。話脱線しました。」

「いや、構わないよ。だって、これで大体僕にする話はおしまいでしょ?」

「ま、まぁ、そうなんですけどね。」

 ここから後の話は志帆としっかり話した。これで一通り、話がつながった……筈だ。


「ありがとうね、話してくれて。それじゃあ、僕はこの辺で…。」

「あ、奏さん!」

「ん?」

「その、お姉ちゃんと付き合ってくれて……一緒にいてくれてありがとうございました。そして、これからも宜しくお願いします。」

「…………うん。お願いされました。」

 僕は彼女の目をしっかり見つめたあと、軽くお辞儀をして家を出た。











 次の日、志帆は学校に来た。昨日より元気そうなのが表情から伺えた。さっき、雅さんとも少し話したけど笑顔でありがとうと行ってくれた時、少し安心した。

 教室に入ると、太一も友紀ちゃんも良くやったって顔で迎えてくれた。



 良かった、これで元通りだ………。



 その日の放課後、久しぶりに志帆と二人で帰った。

「うん、本当に久しぶりだわ。」

「久しぶりだね~。」

「この後、どこかに寄ってく?」

「うーん、何か食べに行きたいなぁ。」

「分かった。なら、駅前でクレープか何か食べに行こっか?」

「うん!」

 こんな、たわいも無い話をするのも久しぶり。この状況が平和で楽しく、有り難いものだったんだなと、今改めて感じることができた。






「ねぇ、奏君。」

「ん?ふぉうひは?」(ん?どうした?)

 口の中にクレープが入っていたせいでまともな言語を話していなかった気がする。

「奏君って私のこと……好き?」

「きゅ!?急に何を…!?」

「ねぇ?」

 志帆の視線が熱い。こちらの目を、ただひたすら凝視している。その視線はそれることが無い。

「あー、えー、そのー、うん、好きだよ。」

「え、何その間は…?」

「え!?いあや、これはその……そう、どれだけ好きか確認してたんだよ!うん!」

「………本当は?」

 やっぱり志帆にはこんな嘘、通じないよな。なら、ちゃんと本当のことを言おう。

「その……好きという言葉を出すのが恥ずかしかった……て訳です。」

「…………本当は?」

 いや、本当のことなんですけど!?何故通じない!?僕の本音ってそんなに信用無い!?

「本当のこと言わないと…………これだよ?」

 志帆が懐から出したのは、もういつの間にか見慣れてしまった『スタンガン』だった。

「志帆さん?なぜ学校にそんなもの…。」

「質問してるのはこっちだよ?ねぇ、私のこと好きなんだよね…?よね?好きなら何で好きってすぐに言えないの?」

 出ちゃいましたよ、志帆の『デスタイム』。なんかこれも久しぶりだなぁ。

「いや、さっきも言ったじゃん!好きって言うのが恥ずかしかったんだって!」

「なんで本当のこと言ってくれないの…?ねぇ、正直に言ってよ…。奏君、『浮気』してるんでしょ…?」

「う、浮気ぃ!?」

 始まりのあの会話からなぜそういう見解に至ったんだろうか。仕方ない、いつものやるか……。

 僕は彼女の目を見つめながら勢いよく抱きしめた。

「ふぇ、ふぇえぇ!!?」

「これが僕の気持ち。僕が好きなのは志帆、君だけだよ。」

「ふ、ふみゅぅ…。」

 このやり取り、これで何回目だろう…。






 落ち着いた志帆は我を取り戻し、真の意味でいつも通りに戻った。戻ったが……。

「んふふー!奏くぅん!」

 僕の腕にギュウっとしがみついたまま満面の笑みで僕の名前をちょいちょい呼んでいる。「何?」と問いかけても、「んふふー!」とただ笑顔になるだけで特に用はないということ。

 結果オーライなのかそうじゃないのか。僕は小さく溜息をついたあと、志帆の方に顔を向けた。

「んふふー!」

 まぁ、志帆が嬉しそうだからいっか。






「はい、到着ですよ。」

 志帆がずっと同じ態勢で僕の腕にしがみついている間に彼女の家に到着した。

「送ってくれてありがとうね!」

「いえいえ。それじゃあ、また明日ね。」

「うん!」

 僕は目的地を自宅に変更して歩き出したとき、後ろから彼女が呼ぶ声がした。

「奏君!」

「ん?」

 彼女の目は真剣そのものだった。数秒僕の顔をジーっと見つめた後、彼女は口を開いた。


「また、明日、一緒にお弁当ようね!」


 彼女の頬が赤く見える。それは今の時間に見える夕焼けのせいなのか、それとも……。

 いや、どっちだったにしろ僕の返答は決まっている。


「当たり前だろ?また一緒に、いつもの場所で、な?」

「う、うん!!」

 僕はそのまま振り返らず家へと向かった。















 しかし、僕『たち』には二度と明日は来なかった。

いかがでしたでしょうか。

悲しき過去を歩んできた志帆。それを知った奏は志帆に対し、どのような感情を抱いたのか。

そして、最後の言葉の意味はどういうことなのか。次回明らかに…?


今回も見ていただきありがとうございます。

次回も読んでいただけると嬉しいです。


【お知らせ】

活動報告や過去の後書きにも書かせてもらいましたが、近々、新作を出そうと考えています。

もし、このようなジャンルにして欲しい。こんな内容のものを書いて欲しいなど、要望がありましたら是非、感想とともに送ってください。また、要望が無くても感想をいただけたらとても嬉しいです!

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