終わり
四十一話です。
今回はハワイへ帰ってきた後の奏、志帆のお話です。
二人の関係がどうなっていくのか。
では、お楽しみください。
帰国してから早、二週間が経とうとしている。
僕は片目だけでの生活に慣れ始めていて今では不便だなって思うことはほとんど無くなりつつある。
しかし、一つだけ不便というより気がかり、端的に言えば志帆が僕を避けるようになった事だろうか。
空港に到着後、友紀ちゃんのお母さんが迎えてくれたのだが、当然と言えば当然なのだが僕の目を見て驚いていた。「失明したっぽい」と説明すると慌てふためいていたし。
その後、友紀ちゃんのお母さんの車で帰宅するのだが、飛行機の中からずっと、志帆は誰とも話す気はなかったのか、ただずっと外を見つめていた。
一日挟んで登校日。
僕はやっぱり周りから右目のことを聞かれる。「どうしたの?」、「誰かにやられたの?」と。
おそらく、彼女が僕を避ける理由はこれなのだろう。多分、自分がやってしまったという後悔、責任、そして、僕に対する『恐怖』。
彼女が今僕に会ってしまうと犯人扱いで目立つ可能性が高い。それを恐れているのかもしれない。
最初のうちは僕の方から彼女に会いに行ってみた。けど、僕のことを恐れているか、すぐに僕の前からいなくなろうとしてしまう。
もう、ずっとこのままなのだろうか………。
そんな疑問が僕の中にぐるぐると渦巻く中、過ぎてしまった二週間だった。
昼休み。
「あのさ、奏?」
「……………………。」
「奏…。」
「……………………。」
「ちっ……おい!そこの馬鹿!!」
「ぬわぁ!?」
強行手段に出た彼は僕の耳元で大声を出してきた。
「なっ!?何だよいきなり!!」
「さっきから声かけとるわ!お前がぼーっとして聞いてないだけだろ!」
「あ…す、すまない……。で、何だ…?」
「あのなぁ、俺が今何を聞きたいかくらい分からないお前ではないだろう。」
「そ、それは……。」
彼の言うとおりだ。僕は今彼が聞きたがっている事の内容にすぐに予想がついた。
「いつまでここでウジウジ凹たれているつもりだ?」
「別に、ウジウジなんか……。」
「てことは凹んでいるのは認めるんだな。」
「いや、それは……。」
今日はなんだか彼に論破されてばっかりだ…。
「まったく、お前は志帆ちゃんの事になると状況把握ができなくなるのが欠点だよな…。」
図星だと思う。だからこそ、今の発言にも反論ができない。
「なぁ、もう一度志帆ちゃんの教室に行ってみたらどうだ?」
「で、でもまたすぐに逃げられちゃうし……。」
「安心しろ。『手』はある。」
翌日。
太一に言われるがままに彼女の教室、B組にと来ていた。
『いいか、昼休みが始まって五分後に志帆ちゃんを呼びに行くんだ。』
と言われたが……。何を企てているんだ……?
ガラガラッ
「すいません、し……桜ノ宮さんいますか?」
僕は手前にいた男子生徒に聞いてみた。
「桜宮さん?彼女ならあそこに……って、あれ?いない?確か、さっきまで……。」
彼の指さす方向には彼女はいない。とすると、いつもの繰り返しか……。
「分かりました。ありがとうございます。」
扉を閉め、自分の教室に戻ろうとすると、太一、友紀ちゃん、雅さんに通せんぼをされ、動けなくなっている僕の探し人の姿があった。
「志帆!!」
「かっ…!?ねぇ、通して!!」
「志帆、ちゃんと話さなきゃダメだよ。」
「志帆りん、今回は勘弁しようね?」
「うっ……。」
諦めたのか、彼女は声を発することなくその場に立ち止まった。
「志帆…。」
「か、奏君……。」
二週間ぶり……二週間ぶりにまともに志帆と話した……。
まだ向こうは顔を合わせてはくれないけど、それでも話すことはできそうだ。
「志帆、教えて。なんで僕のことをさけるのさ?」
「そ、それは……。」
彼女はさっきから口籠もってばかりだ。
「僕のことを信用してくれないのかい?」
「それは違う!!」
彼女の発言は力が籠もっていて、誰もが一瞬怯んでしまった。
「違うの……奏君は悪くないの……。悪いのは私の方で………。」
「それは、この目のこと気にして言ってるのか?」
彼女は下を向き何も発さなかった。その姿を見て図星なのだとすぐに分かった。
「なぁ、志帆。もし目のことを気にしているんだったらお前は勘違いをしているぞ。」
「勘違い…?」
「目を怪我したことに関しては志帆の責任ではない。僕の過ちだ。」
「そんなこと!!だって、私が……奏君に…ナイフなんか投げなければ………。」
「そんなのいつものことじゃないか。この半年、君から様々な凶器を投げつけられてきたけど、いつもかわしてきただろ?それを今回はかわせなかった。だからこれは僕の責任だ。」
「ちがっ……私が、私がわる………。」
「はい、ストップ!」
会話が進んでないことに痺れを切らしたのか友紀ちゃんが間に入ってきた。
「二人ともさっきから不毛な会話をしてるの、分かってる?」
「そ、それは……。」
「うぅ……。」
「志帆、今ここにいる人の中であなたが悪いと思ってるの、あなた本人だけよ?私も、太一君も、雅も……勿論、奏君も。だからね、志帆。あなたは悪くない。そう思ってる私たちの思いも考えてね。」
自分を責め続けていた彼女はずっと下を向いたまんまだ。けど、友紀ちゃんの言葉を聞いて少しの変化が現れた。彼女の足下に涙の粒が一つ、二つ、三つと次々に落ちていった。
「なんで……何でなの……?悪いのは私の筈なのに……。」
「だからそんなこと…!」
「はい、だから落ち着きなさい二人とも……ったく、ここで話していても埒が明かないわね。場所を変えましょう。」
「ここなら少しは二人とも落ち着いて話せるんじゃない?」
僕たち五人は僕と志帆がいつも一緒にお弁当を食べる場所、屋上前階段にやって来た。
「えっと、まずは私たちから話しましょうか。でないと二人だけだと会話にならないし。」
「そうだな。じゃあ友紀、とりまとめ頼むぞ。」
「まぁ、そうなるよね。うん、分かったわ。じゃあ、まず始めにそもそもの根本的な所から整理しましょう。まず、奏君の主張は志帆は悪くない。そしてまた一緒に話せるようになりたい。これでいいのね?」
「あ、うん…。その通りです…。」
「で、志帆の主張だけど…。奏君が悪くないって言ってるのは分かるんだけど、それ以外の情報はないわね。さぁ、しっかり話して。」
「うぅ……。その……。」
「志帆。ちゃんと!話すのよ?」
「志帆、僕からもお願い。志帆としっかり話し合いたい。」
「で、でも……。」
「志帆ちゃん。」
「志帆りん。」
「……分かった。奏君、私はね、正直つらいの…。」
「つ、つらい……?」
「だって、このまま奏君と一緒にいるとまた傷つけちゃうかもしれない。私といたら奏君が周りの人に何か言われてしまうかもしれない。」
今、志帆は自己嫌悪に陥ってしまっている。このままだと志帆は今後立ち直ることができずどんそん暗くなってしまうかも知れない。なんとかしないと……。
いや、待てよ。もし志帆と僕の関係がこのままだったらどうなるんだ?
僕との恋人関係は自然消滅してしまうんじゃないか?
そうなると志帆はもとの………僕と会う前の普通の女の子に戻ることができるんじゃないか?
それは個人的に、そして今後の志帆の事を考えると良いことなのじゃないか?
「なら、志帆はどうする…?」
「え……?」
「もし、僕と志帆との関係がこのままだとする。それは僕と恋人という関係を絶つことになるよ?
「…………。」
「どうなの?それでもいいなら、このままでもいいよ。」
これは一か八かの賭けだ。志帆がもとの……普通の女の子に戻るって言うなら、それは僕にとっても彼女にとっても良いことだと思う。けど、僕の心の中では志帆と一緒にいたいという気持ちの方が強い。
彼女がどっちの選択肢をとるのか。もう彼女に委ねるしかない。
どうか、僕の思いが届き……
「…………それで……奏君が安全になるのなら………。」
「ちょっ……志帆!!?あんた正気なの!?」
僕は賭けに負けた……。彼女はもとの……普通の……優しかったあの頃に戻ることを選んだ。
僕は………負けたんだ…………。
「………分かった。」
「おい!奏!!」
「………。」
彼女は目を合わせてはくれない。もう、本当に僕らの関係は終わってしまったのか……。
「『桜ノ宮さん。』今までありがとう…。とっても……とっても楽しかった……。」
「嘘・・・・・・嘘だって言ってよ!!ねぇ、奏君!!志帆りん!!!」
「雅の言うとおりだ!少し冷静になれお前ら!!」
二人の言葉が心に深く刺さる。それは、僕が今から言うことをためらってるからだろう。
「本当にありがとう・・・。それじゃあ、これで僕と桜ノ宮さんの関係は『終わり』だね……。」
「………。うん……。」
「ちょっと!奏君!!志帆!!」
「それじゃあ……。」
さよなら……大好き『だった』人…………。
やってしまった…。本当に奏君との関係……終わってしまったんだ………。
私の拠り所…。私の癒やしの人……。
大好きな人……。今でも大好き…。だけど、この気持ちは終わりにしなければいけない……。
なのに、何で……何でなの……?
何で、涙……止まってくれないの………?
「ごめん……ごめんね、奏君………。」
さよなら……。そしてありがとう………。
私の『大好き』な人………。
いかがでしたでしょうか。
二人の関係は絶たれてしまいました。
この後、二人はどうなってしまうのでしょうか。
奏は志帆を失ってしまい、今後どういう生活を送っていくのか。
志帆はこのままなのか。それとも、本当に昔の志帆に戻るんでしょうか。
それはまた、次回で……。
今回も見ていただきありがとうございます。
次回も読んでいただけると嬉しいです。




