二人での旅行~ホテルにて
三十二話です。
前回、一人で旅行を楽しむはずだった筈の奏のもとにやってきた志帆。
今回は二人旅行に変化してしまった二人のスタートを描いていきます。
では、お楽しみください。
長いこと楽しみにしていたイベントを終え、一人旅行が始まる。そう思っていたのだが、まさかのアクシデントが発生した。
「ねぇ、奏君?この後はどこに行くの?」
やむを得ないが志帆がついて来ることになった……。
「はぁ…。えっとね、次ですか…?」
「うん!ほら、テンション上げて行こうよ!」
誰のせいでテンションが上がらないのか。彼女はわかってるのでしょうかね。
「この後はね、一度ホテル行くよ。近くに安いホテルがあって、さっき確認取ったら空きがあるってことなんで今から行くって言ったからね。」
「いつ電話したの!?」
「さっき。」
「さっき!?」
「さっき。」
十分後、そのホテルに着いた。
「案外早く着いたな。」
「か、奏く…ん………。」
「志帆?」
振り返ってみると、なんだか、よぼよぼのお婆ちゃんが旅行鞄を引いてるようにしか見えなかった。流石に十分ノンストップで歩けば疲れるか。いや、それだけではない。よく考えてみれば、彼女は今日、僕を探してずっと歩き回っていたのだろう。それは疲れているだろう。
本当なら頑張れとか言って彼女の荷物を持ってあげたい。だが実は今、今日買った物で両手が塞がっている。持ってきたリュックだけでは限界だった。
「もう………だ…め………。」
「諦めないで!?ここ、ホテルの入り口だからね!?」
くそっ!ホテルのスタッフの人とかも助けに来てくださいよ、あぁぁ!!
仕方ない、ギリギリまで言わないようにしてたんだけど、やむを得ない…。
「志帆、いいこと教えてあげる。僕と志帆、『同じ部屋』で予約してあるよ?」
「同じ部屋………………?」
「さぁ、同じ部屋までもう少しだよ?頑張れー。」
こんな物で釣るような作戦に志帆は引っかかるのか……。
「いこっか、奏君!」
突然、志帆がムクッと立ち上がった!
「ちょろいな……。」
フロントに行き、受付を済ませ、部屋に移動した。
「はぁぁ!!荷物重かったぁぁ!!」
荷物を部屋に置き、そのままベッドにダイブしてしまった。
「買いすぎたなこれ…。まぁ、後悔はしてないけど。」
「ねぇ、奏君?どんな物買ったの?」
「うん?そうだな……あ。」
その時、志帆にお土産をフェルト店で買ったのを思い出した。
「はい、これ。」
「ん?これは?」
「お土産。」
「私に?」
「志帆じゃなかったら、何で志帆に渡すんだよ。」
「いいの!?うわぁ!!あ…開けてもいい?」
「それは、勿論。」
僕の予想とは正反対に志帆のラッピングの開け方は、とても丁寧だった。
「ね、ネコぉー!!ネコ!ネコネコ!!ネコちゃん!!」
「ブフッ!!」
ネコちゃんという言い方があの店員さんに似ていてなんだか、面白く笑ってしまった。
その後、今日買った物を志帆に見せた。たぶん僕もそうだったんだろうけど、彼女は眼をキラキラさせて出すもの出すものを見ていた。
「ん?ねぇ、奏君。なんか、リス率高くない?」
「あ、あぁ、そうだね…。たぶん僕、リスが好きなんだと思う。なんか惹かれるんだよねー。」
あの後、ぬいぐるみと木彫りだけでなく、ストラップも購入している。何かリスト思い出でもあったかな…。
買いすぎて説明するのも大変だが、出したあと、片付けるのも大変なお宝たちを整理しながら丁寧にしまうと、気が付けばもう五時も回っていた。
「もうこんな時間か。そろそろ夕飯食べに行くか。」
「うん!でも、どこへ?」
「いや、決めてない。近くに何かいいお店あったかな……。」
「私、歩くのに精一杯でお店見てなかった…。」
だろうね…。あんなにつらそうな顔をして歩いていたら周りを見る余裕、ある方が不思議に思える。
「お?近くに評判の良いラーメン屋さんがあるな。そこにしよう……か?」
ラーメン屋さんを提案して志帆の方を振り返った時、彼女は不機嫌そうな顔をしていた。
「な、何ですか……。」
「いや、別にラーメンが嫌なわけではないんですけど……彼女と一緒にご飯に行くのにラーメンですか?なんかこう、もっと、お洒落な感じとかなかったの?奏君のセンス、一瞬疑いましたよ?」
「ハグゥッ!!?」
なんか、胸に矢のようなものが刺さった感じがした。一理ある話だが、でもそれは偏見にも程がある。そう思うのは僕だけなのだろうか。
「でも、ラーメン、美味しいよ…?何がご不満で…?」
「不満はないよ?でも、なんか…食べ終わった後の……口臭とか、服の匂いとか……。」
彼女は顔を真っ赤にして、口を服で抑えボソボソ呟いた。
「え?別にそんなの気にしないよ?口の中が気になるならガムとかブレス…何とかってあの青い奴使えばいいんだから。」
「ほ、本当に…?本当に気にしない……?」
「いや、本当だって。」
彼女も乙女なんだなと、この会話から感じ取った。本当に今朝のアレ(デスモード)と今とのギャップが凄すぎる……。
「じゃ、じゃあ……ラーメン屋さんでもいいよ……?」
「本当?よし、じゃあ、いこっか!」
「うん!」
「あぁ~!美味かった!!」
夕飯終了後、部屋に戻ってきて再びベッドにダイブをした。なんかホテルのベッドって凄くふかふかでダイブしてしまいたくなるのだ。
「奏君、この後はどうするの?」
「え?風呂入って寝るよ?」
「え…?」
「え?」
何かおかしいことを言っただろうか。彼女は口を開け、ポカーンとしている。
「奏君……。今何時か分かってる…?」
「え?七時だよ?それがどうかした?」
「どうもこうもないよ!?早いよ!!あまりにも寝るには早くないですか!?八十のお爺ちゃんとかじゃないんだから!!」
あぁ、彼女が物申したいポイントはそこだったのか。だったら、そこには僕は正当な理由で、彼女の意見を覆すことができる。
「ですがね、志帆さん?僕は今日一日中ずっと歩きっぱなしで疲れてるんですよ。だから寝たいんですよ。オッケーですか?」
「でも、今日ずっと歩きっぱなしなんだけど!?」
「でもそれは勝手に着いて来ただけだよね?」
「うっ!?」
はい、論破することに成功しました。
「じゃあ、僕は風呂入って寝る事にするよ。風呂、先に入るね。」
「…………分かったよ。」
「ん?」
「今日はお風呂入ったら『お布団に入る』よ。」
「うんうん、わかってくれたならいいよ。」
志帆って、ちゃんと話せばわかってくれる素直な子なんだよな。本当にそういうところ、いいよね。
「お布団に入ればいいんだよね?だから、夜這いは良いよね?」
「何でそうなる!!?」
前言撤回。どっか頭のねじ吹っ飛んだ暴走女です。
「寝ると言うことはお布団に入る事。お布団に入れば何でもオッケー。という事は夜這いも………」
「良かねぇぇよ!!!」
その三つのイコールの繋げ方が通じるのはおそらくハーレム漫画くらいだ。
「じゃあ、奏君に今から三つの選択肢をあげる。その中から一つを選んで。」
「う、うん……。」
①夜這い
②お出かけ
③〇×△Z☀Ψ‰………
ううん……。選ぶのは②で決定してるのだが、問題は……。
「なぁ、③はなんて言った・全然聞き取れなかった。」
「えっ!?あ、えぅ…その……。」
「ん?」
「〇×△Z☀Ψ‰………」
全然聞き取れない上に彼女が真っ赤な顔をしてるのが気になりすぎて言葉を聞き取るのに集中できない。
「あのさ、なんかHなこと言ってるわけじゃないよね?」
「えっ!!?ななななな!!!???そそそそそんんんんんなななななここここことととととあああああるるるるるわわわわわけけけけけえぇぇl!!!!!!」
何これ……。バグ?
少なくとも、彼女が何か卑猥な事をお考えだったことは間違いないみたいですね。
「はぁ、志帆が直ったら出かけよう……。どこに行くかな……。」
いかがでしたでしょうか。
今回はただ志帆が壊れに壊れただけでしたね。
ヤンだり、デレたりというよりは崩壊?という言葉が合うような場面が多かった気もします。
さて次回は、(志帆が直ってれば)お出かけに出かけます。
今回も見ていただきありがとうございます。
次回も読んでいただけると嬉しいです。




