一人でのお楽しみ~はじまりはじまり
三十一話です。
今回は、前回の続きで、ついに奏のお店巡りが始まります。
奏のワクワクドキドキが詰まった大冒険の開幕です!
では、お楽しみください。
傷の処置が終わり、無事に会場に戻ってきた。
会場に戻ってきて一発目に行ったのはさっきのフェルトのお店だった。
「どうも、戻ってきました。」
「あら、早かったわね。うん、自分でやったとは思えないくらいちゃんと処置されてるわね。」
どうしよう、慣れてるとは言えない…。
「うん、じゃあ約束通り、オススメを紹介してあげる。」
「本当すか!?」
そうだった。ここに来た目的は、『色々なお店を見て良いなと思った物を買い、参考にさせてもらう事』だった。
この日のためにお小遣いだって貯めた。実は部活が終了する前にバイトも始めた。この事は志帆や太一には言ってない。言ったら面倒なことになりそうだし…。でも問題ない。なぜなら、時間帯が『夜』だから。僕が始めたバイトは『家庭教師』だ。小学生の男の子と中学生の女の子の勉強を見ている。このバイトは明智先輩から教えてもらった。
あれは、明智先輩にネックレスを貰った日、だから留学頑張れ会をやった日になるのか。その帰り道に……。
『ところでさ、雪白?』
『はい、なんでしょうか?』
『部活が終わった後のことは考えてるか?』
『いや、考えてるわけないじゃないですか…。今言われたばかりですよ?ただ…まぁ、勉強しながら本読んだり、志帆とどっか行ったり、木で何か作ったりしてるんじゃないですか。』
『桜ノ宮とか……。惚気か!?チキショー!!』
『黙れ、仁。シバくぞ。にしても、雪白。話を聞く限り、大分暇なんだと感じたよ。』
『いや、さっきの話のどこからそう感じました?端的に言えば、study(勉強)、go on a date、make(なんか作る)。ね?busy(忙しい)でしょ?』
『そんな暇だと言う、雪白に……』
『ねぇ、聞こえてます!?人の話、聞いてます!?』
この人には耳という物がついているのだろうか。これが逆にわざとだというのなら、かなり、いや人なのかと疑うほどの悪質行為だぞ?
『私から、バイトを紹介してあげよう!』
『は、はい……?バイト?』
何故この流れでバイト…?
『これから先、木工作業で何かとお金が入用になるだろ?どうだ?』
『ぜひ、お願いします!明智先輩!!』
『雪白……お前、ちょろいな……。そして、真紀…。お前に関しては絶対何か企んでるだろ、その顔は……。』
と、いうことがあった。
今思えば懐かしいな…。明智先輩頑張ってるかな……。そう言えば、最近部長の姿も見てないや。まぁ、受験勉強で忙しい時期だろうしね。それはそうか。
それはさておき、明智先輩が紹介してくれたそのバイトのおかげで僕は今日、かなりの軍資金があり、色々回ってかなりの物を買う余裕がある。
「いやぁ、明智先輩。ありがとうございますー。帰ってきたら何か奢ります。僕が今日のこと覚えてたら。」
フェルトの店のお姉さんの言ってたオススメの商品というのは様々なフェルトで作ったぬいぐるみだった。
「すごっ!?可愛い!というか、縫い目めっちゃ綺麗…!」
「あら、そこに注目してもらえるのは嬉しいわね。皆、ぬいぐるみ本体ばかりだから。」
確かに、こういう時に縫い目なんて見ているのは、中々いないだろう。むしろ個人的には、そういう細かいところが大事だと思うのだが。
「凄いな…。僕はこんなに上手く縫えないよ……お?」
ボソボソと声を出しながら商品を見ていると、一つ、気になるぬいぐるみを見つけた。
「これ……リス…?」
「そう!シマリスなの。どう?」
何だろうか…。何か惹かれるものがある。僕、リスが好きなのかな…。
「じゃあ、シマリスください。」
「はい!ありがとうね!」
「あっ、そうだ。後ですね、そこのネコもください。あ、えっと…ラッピングとかできます?」
「え?できるけど……あ、ふふふ!」
「え、何ですか!?」
「このネコちゃん、彼女へのプレゼントのなのね?」
「なっ!?」
なんでわかるんだ!?あ、いや……ラッピングとか言った時点で分かるのか…。まぁ、当たり何ですけどね?
あの状況で置いて来てしまったから、何かお詫びを買っていかないとさすがにまずいような気がする……。
「ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそお買い上げありがとうね。彼女と仲良くね?」
「は、はい……。」
今の状況では中々心に響く言葉に感じる。
その後も様々な種類のブースを回った。
アクセサリーショップにて……。
「お兄さん!!このブレスレットどう!?それとも、こっちのネックレス!?」
「あ、そのー………。」
余りにも押しが強い女性店員に負けて、結局、こういうところでは結構お高めの値段の指輪を買うことにした。
ガラス細工店にて……。
「す、すっげー……!めっちゃ透き通ってる……。」
「どうですか?おひとつ?」
ガラスがあまりにも綺麗過ぎて見とれてしまい、一つと言わず、青、黄色、緑の三色のグラスを買ってしまった。
雑貨店にて……。
「何、このクッション……。めっちゃフワフワ……。」
「でしょ?中の綿にこだわったんです。」
もうこの段階で、僕はこいつの虜だった。
この段階で思ったことは………。
(明智先輩、本当にありがとうございました……!本当に満喫させてもらってます。半年前からの僕。よくお小遣い貯めてきたな…。堪能できてるぞ……!そしてお母さん!軍資金とお小遣いをありがとう!!本当愛してます!!)
そう、心から思っていた。
そして、いざ、僕のメインへと到達した。
そう『木工クラフト』だ。
「はい、いらっしゃいー。」
店主は、もうこの道何十年という感じのお爺さんだった。風格があって見ていてかっこいい。それだけではない。作品自体もさすがだ。どの作品もきめ細かで、自分との差を痛感してしまう。
「坊や、君もこういうの作るのかい?」
「え?わかるんですか?」
「目を見ればわかる。こんなにも集中しているということは参考にしようとしているということ。そうじゃないか?」
「す、すいません!勝手にそんなことして!」
でも、凄い…。全くその通りだ。さすがとしか言いようがない。本当に本とかに出てくる達人……いや、仙人みたいな人だ。
「いや、好きに見て行くといいよ。同じ趣味を持つ若い子がいるというのは私もとても嬉しい。」
そのお爺さんの顔は、とても優しい顔をしていた。
「は、はい!」
「ま、買って行ってくれたらもっと嬉しいんだけどね?わっはっはっは!!!」
「もっ…!勿論、買いますよ!?」
僕は五分くらいお爺さんと話しながらどれを買うか迷っていた。その結果、お皿、カップ、リス(二匹目)正方形の小物入れを購入した。僕、リス好きなんだな……。うん、これで確信できたわ。
「ありがとうございました、お爺さん!とても楽しかったです!」
「こちらこそ。若い人の話が聞けて良かったよ。」
今日、ここに来たことで、新たな発見ができ、何より僕に新たな出会いをくれた。僕は決断することの大切をここで学んだ気がした。
全てのブースを周り、荷物も重くなってきたところでそろそろ近くのホテルにでも行き休むことにした。
「にしても、今日は寒いな…。なんか、背筋からゾクッとくるこの感じ、本当にやだな……。」
ホテルに向かっていたのだが、なんだか妙に寒く、風でも引いたのか不安になってきた。
「ん?喫茶店?ちょうどいいや。荷物も重たいし、入るか。」
その時、後ろから誰かに肩を掴まれた。
振り返ると…………
「ミイィィツケエェェタアァァァァ…………。」
「うをわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!??」
喫茶店内。
「あのね、僕は今日、プライベート。つまり一人での時間を過ごしたいって言ったよね『志帆』?」
「うん、言われた。」
「だったらさ、何であなたは今ここにいるんですか?」
「奏君に会い………」
「はい、ストップ。止まりましょう。僕の言ってる意味が分かってませんね?志帆さん。今から僕が言う言葉の意味を答えて?『一人で過ごしたい』。はい、意味は?」
「イミガワカリマセン。」
「おっけー、AI。小学校からやり直そうか。」
「でも、奏君といたかったから……。」
責めすぎてしまったか、彼女は今にも泣きそうだ。
「はぁ、ったく…。いつも一緒にいるだろうに……。」
「でも…!」
「いいよ、ここからは一緒にいよう。」
「い、良いの…!?」
「いや、良いも何も、もう来ちゃってるし…。それに、一人でいたい時間はもう終わったしね。」
良かったよ、無事に回りきれた後で…。
楽しい一人旅の筈がここからは恋人との一泊の旅行になりそうだ。だって、僕はあらかじめその予定で荷物を持ってきていたが、彼女に関しては、付いて行く前提だったのか、旅行鞄で僕の前にいるしね。
「はぁ……ま、こういうのもいっか…。」
「嬉しい?」
「嬉しいよ………五十三パーセントくらいはね……。」
「残りの十四七パーセントは?」
「一人旅満喫させて欲しかった……。」
彼女の前だから言えないけど、五十三パーセントなんて嘘だ。ほぼ百に近い。大体、八十七パーセントくらいだと思う。
けど、ここまで来たら仕方がない。僕も男だ。フェルト店のお姉さんにも言われた通り、ここは僕の頑張りどころだ!
「ところで、どうやって僕の居場所突き止めたの?」
「怪我でボロボロの人、見かけませんでしたって聞いた。」
「怪我でボロボロにした自覚はあったんだね…。だったら。反省はしようか。」
「すいません…。あの時は理性失ってました…。」
「後、もう一つ、どうやってここまで来たの?僕確か、雅さんに志帆の事頼んだんだけど?」
「確かに、気が付いたら雅ちゃんがいたよ?その後、一緒にいた太一君がここに奏君がいるって横浜行きのチケットくれた。」
やっぱり恨んでたか………。
「そういえば、雅ちゃん、パフェ食べてたなぁ…。すっごい大きいの。」
「あぁ、うん。そのことについては後で教えてあげるよ……。」
向こうに帰ったら太一に何されるか………。帰るのが怖くなってきた。
いかがでしたでしょうか?
イベントを満喫し、さぁ、ここからどうするかと思いきや、とんでもないホラー映画が始まりましたね。
結局、志保は奏を追いかけてここまでついて来てしまいました。
本当は一人でいたい筈の奏。それでも、彼女を優先にし、一緒にいることを取った。
いやぁ、かっこいいですね。憧れます…。
そんな事はさておき…。
そんなこんなで一緒にいることになった二人。果たしてこの後はどうなるんでしょうね?
それは、また次回に……。
今回も見ていただきありがとうございます。
次回も読んでいただけると嬉しいです




