相手の気持ち~志帆Side
二十五話です。
今回は前回のお話を志帆の目線で描いたものとなります。
奏が太一とお風呂で志帆について思いを抱いていた時、志帆は何を思っていたのか。
それでは、お楽しみください!
奏君がお風呂に言って五分くらいした頃。
「どうしよう…。奏君と気まずくなっちゃった…。今日、明日ずっとこのままだったら本当にどうしよう……。」
コンッコンッ!
「え?は、はい!」
ノックの主は現在、志帆同様で彼氏と気まずくなり、どうしたらいいのかわからなくなっている雅だった。
「雅ちゃん!?」
「志帆ちゃん…。どうしよう……。」
ただし、志帆と違うのは、彼女は少し涙腺が弱く、現在のこの状況で半泣きの状況である。
「お、おおお落ち着いて雅ちゃん!?ここはひとまず部屋に(何故か)用意されてあるお茶でも飲んで落ち着こう!ね?」
「う、うん…。」
「落ち着いた?」
「うん、もう大丈夫だよ。」
「それで、どうしたの雅ちゃん?」
「うん…。あのね、私、今太一となんだか変な沈黙が続いてて気まずい空気がずっと続いてるの…。」
「………。」
どうしよう、全く私と同じだ…。何だかこの状況、悩み相談みたいな感じになってるけど、この悩みはむしろ、私が答えを欲しいよ!
「ねぇ、どうしたらいいと思う?」
その答えは私も知りたい!!
志帆は居間の自分の現状を素直に雅に打ち明けた。
「なるほど、私たちは全く同じ悩みを持ってるため、悩みを相談しても無意味だとね。」
「そうなるね。」
「「 はぁ……。」」
見事にため息が揃った。ここまでの悩みがあったっけ?いや、あったよ。あれは………
「ねぇ、志帆ちゃん。」
「…え?」
「さっき、太一たちお風呂に行くって言ってたけど、私たちも行かない?」
確かに、今のままでは考えが煮詰まってしまい、話が一向に前に進む気がしない。なら、いっそのことお風呂に入ってさっぱりしてから考えた方がいいのかもしれない。
「うん、行こう!」
「ご……。」
「豪邸旅館……。」
どこかで聞いたことのあるセリフなので、浴場の紹介は割愛いたします。
「すごーい、中も広いけど外も凄いね!」
「体洗ったら先に露天風呂行ってみようか!」
「そうだね!」
「本当に広いね、このお風呂!」
「ここが本当に一般のお家っていうの忘れそうになっちゃうよ!」
「露天風呂から見える景色もすご……」
「ん?どうしたの、志帆ちゃん?」
『………さ……………た時………思……の?……………好き………………けど…………命…危険………』
『………は別れ………た………に………別…………伝え……』
志帆は向こうの会話に聞き耳を立ててみた。
「し、志帆ちゃん!?」
「しっ!聞こえちゃうよ!」
(でもこれ向こうにバレたら……)
(でもね、二人の会話よく聞いてみて。今、私たちの事話してるみたいなの。)
(え?)
『別れたいって伝えたとき、途中で遮れられ、しかも見たこともないような武器で脅された…。』
(そんな事したの!?)
(だって、奏君が別れるとか言うんだもん。)
(でもそれは……)
『なるほど。じゃあ、付き合ってるのが正解ってことか…?』
『でも、後悔はしてないよ。』
(え……?)
『え?どういうこと?』
『確かに、命の危険はこれまでにいっぱいあったよ。でも、その分、『桜ノ宮志帆』という人の良さも知れた気がしたんだ。』
奏君……。そんな風に考えてくれていたんだ…。嬉しいな…。
奏君の言葉で思ったけど、私は奏君にたくさん酷いこともしてきた気がする。そう考えると、私は奏君に自分の『好き』という気持ちを押し付けていたのではないのか。そうも思ってしまう。
『やっぱり、きちんと雅と話をしようかな…。そっからの方がいいよな。』
(太一……。)
ギシギシィ……
二人が向こうの会話をぬすみ聞きしていると、木が軋む音がする。しかし、二人はまだ気づかない。
この音に二人が気づくのに後、およそ三分。
『そもそも、志帆ちゃんがあぁなった時、不登校になった子いたじゃん?その子はどうなったん?』
『あぁ、伊藤さん?今は精神病院で治療中。一度だけ面会に行ったよ。』
(か、奏君…。まだあの女のところにぃ………。)
(お、落ち着いて志帆ちゃん!目が、目が怖いよ……。)
(アノオンナ、アノオンナ、アノオンナ………。)
(良かった、ここお風呂で…。志帆ちゃんもさすがにここには武器は持ってきてないみたいだしね……。)
ギィ…ギシィ……
再び木が軋む音がする。しかし、(志帆を取り押さえるのに集中しているせいで)二人はまだ気づいてない。
この音に二人が気づくのは、もう間もなく。
『ところでさ、太一は雅さんのどこが好きで告白したの?』
『ふぁ!?』
(ふぇ!?)
ギシィ……!
『『 ん? 』』
雅が奏の発言に驚き、勢いよく仕切り柵に体を寄せたとき、木が軋む音がした。
(み、雅ちゃん……。これ…。)
(ちょっと、やばかったかもね……。ここからは慎重に行こう…。)
(う、うん……。)
それでも、盗聴は続ける二人。
『で、どこが好きになって告白したの?』
『本当に急だな…。そうだな、やっぱり見た目が可愛いってのはあったけど、話しててさ波長が合うっていうのかな?それで、あ!この人だ。この人しかいない。と思ったんだよな。』
(た、太一ぃ……。)
ギギギィ……!
『『 ん? 』』
(み、雅ちゃん…!落ち着いて!ギシギシ言ってるよ!)
(はっ!?)
『奏さぁ、まさか俺にだけ話させておいて自分は話さないってのはなしだよな?』
『やっぱり僕も話すやつだよな……。』
『当たり前だろーが!』
いや、正直な所は、この話題を終えていただけるとこちらとしては心肺的に助かるんですけどね?じゃあ、やめればいいじゃんとか思うかもしれないですけど、体がやめてはいけないと聞き耳を立ててしまっているんですよ。
『はぁ…。僕の場合は向こうが告白してくれたかたら後の話になるんだけど…。』
『おう?』
私はゴクッと息を呑んだ。
『まず、顔がタイプ!』
『え?』
((え?))
『茶髪にセミロングでタレ目。完璧です!僕の好みがすべて入ってるんです!』
『え?がいけ…ん、え?奏?』
(あれ?奏君ってあんなに堂々と物を言う人だっけ?ねぇ、志帆ちゃ……んっ!!?)
あまりに衝撃的過ぎて頭がパンクしてしまった。お風呂だから同化してしまうけど、頭から湯気が出てしまいそうだ。
『まぁ、身長がもうちょい欲しかったかな。僕と志帆の身長差、二十センチあるし…。』
(うぐっ!!)
(志帆ちゃん!!?)
精神的に何か大きなダメージがやってきた。なんだかコンプレックスというものをグサッと刺されたような…。
『あと、ついでに言えばむね……』
ギイィィィ……!!!
『『 ん!? 』』
(志帆ちゃん!!?何で押したの!?)
(いや、なんか…これ以上、コンプレックスを刺されたら綺麗なお湯が真っ赤な水に染まってしまいそうだったから……。)
(それ、死体が出ちゃうって事!?)
『まぁ、外見の話はこの辺にしておいて、やっぱりあの料理はすごいな。文字通り、胃袋掴まれたよ。』
(え?)
『へぇ、そんなに志帆ちゃんの料理って美味いのか。』
『僕が今まで食べてきた料理の中で一番美味い!お世辞抜き!』
『そんなにか。』
『そんなに。だから、絶対志帆を料理の専門学校に入れてやりたい。あの才能を伸ばしたらきっと将来とんでもないことになるよ!三ツ星レストランとか、ミシュランとか!』
『んな、大げさな。』
『言ったな!僕は志帆を有名にして見せるよ!まぁ、志帆にその気があればだけど…。』
(どう?その気はあるの?お風呂で真っ赤になってるのか、彼の言葉で真っ赤になってるのかわからない志帆ちゃん?)
(………。)
正直、奏君が私の料理をそこまで言ってくれているなんて思ってもいなかった。
だけど、もし彼がそこまで期待してくれているのなら……。
彼が私のことを応援してくれるのであれば……。
(私、頑張るよ!)
ギイィィ……。
(待って!気合十分なのは良いけど、押しちゃダメ!!)
(はっ!?)
この段階で時は既に遅かった。
『ところで、さっきから聞こえるこのギシギシって音、何なんだ?』
『わかんない…。そもそも、どこから鳴ってるんだ?」
木柵が倒れるまで残り十五秒。
(まずいよ、雅ちゃん!私たちが寄りかかりすぎたせいで、もうほとんど自動的に向こうに傾いちゃってるよ…!)
(え!?え、えぇっと……なんとか引いてみようか!?)
(うん…!)
普通この時、上がって逃げればいいのではないだろうか?事が終了したとき、そう思った。
残り十秒。
『なんか、よくわからないし、と言うか長湯もしたしそろそろ上がるか。』
『それがいいか。』
ギイィィィ……
『だあぁぁぁ!!もぉ!なんなんだ!この音ぉ!!』
『落ち着け、上がるぞ。』
(どうしよう、雅ちゃん…。そもそも、引くってどうするの…?)
(確かに、取っ手も何もない……。こうなったら…。)
(こうなったら……。)
(気合い!!)
(気合い!?)
残り五秒。
『あ、俺らタオル忘れてるわ。』
『本当だ。よく思い出したなって、あぁ、湯船に入っちゃってるよ…。』
(気合いぃー!!)
(き、気合いぃー!!)
この気合の空回りが最後の悲劇となった。
四
三
『あぁ、ビショビショだわ…。』
『しゃあない。中入って絞ればいいんだから。』
お願い何とかこの柵、奏君たちが上がるまで倒れませんように!!
その願いは、天に届くことは無かった。
二
一
「あ。」
「え?」
ギイィィィィ!!!!
志帆は踏ん張りすぎて足を滑らせ、柵に乗っかってしまい逆に押す方になってしまった。
その勢いに負け雅も一緒に柵に乗っかってしまい、結果的に柵は男風呂へと倒れた。
「「 え? 」」
彼らが発した言葉はそれだけだった。まぁ、当然と言えば当然だろう。
そして、私たちが彼らに対して言った言葉は……
「「 えへ…!」」
だった。
いかがでしたでしょうか?
奏が志帆を思うように、太一が雅を思うように、志帆も、雅も相手の事を思っていたんですね。
でも、ぬすみ聞きはいけませんね。おそらく、最後のはその天罰?ですかね。
さぁ、問題はこの後の四人です。
今は「え?」と「えへ。」でお話が止まっていますが、冷静に考えれば全員『裸』です。
この状況で、特に志帆と雅は冷静を保つことはできるのでしょうか?
それはまた次回のお楽しみ。
今回も見ていただきありがとうございます。
次回も読んでいただけると嬉しいです。




