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VSヤンデレ彼女  作者: 柊夏木ヤヤ
1st season Kanade&Shiho
16/62

旅立ち

十六話です!

今回はついに真紀の留学出発日です。

留学出発、それはSmile部の終了も意味します。

奏は二つの事に何を思い、どう行動するのか。

それでは、どうぞ!

 八月二日。東京にある国際空港。

 今日は明智先輩の留学出発日、そして『Smile部』という部活の最後の日になる。


「いよいよだな、真紀。」

「まぁね、泣きそうになってきた?」

「あぁ、雪白がな。」

「泣きませんよっ!!?」

「しぇんぱぁぁぁい!私はなきしょうでしゅうぅぅぅ!!」

「うん、泣きそうじゃなくて、泣いてるね桜ノ宮は。」

 もう、志帆と付き合ってからおよそ八か月になるのかな。ここまで大号泣した彼女を見たことを僕は一度もない。かなり貴重で凄いことだ。

 いや、もっと凄いのは明智先輩の出発五時間前にここまでの号泣ができることだと思う。

 何故、五時間前なのに既に空港に来て集まっているかというと、今号泣しているこの子に理由がある。



 二日前。部室大掃除終了後。

「あ、明智先輩…。」

「ん?どうした、桜ノ宮。」

「明後日、何時に出発するんですか?」

「四時の便に乗って行くよ。」

「なら、先輩!それまで空港で一緒にお話したりしませんか!?あ、どこかお店回ったりとか、あと……その……。」

「要するに志保はギリギリまで明智先輩と一緒にいたいんだろ?」

「あ、あぅ……。」

 わかりやすいことに顔が真っ赤になった。

「そういうことなのね。うん、いいよ。なら時間まで空港で遊ぶ?」

「え、いいんですか!?」

「いいよね、仁?」

「あ、俺も?」

「いいでしょ、部のメンバーで集まるの最後になるわけなのだから、最後くらい皆で遊びましょうよ。雪白も、ね?」

「ね?奏君?」

 先輩の圧より、彼女の押しの方が強かった。勝敗を分けたのは完全に眼力だろう。

「「は、はい……。」」

 いつから、世の中の男は、ここまで弱くなったのだろう。二人の男はあっけなく、小さな返事をすることしかできなかった。



 再び、現在。

 志帆は未だに大号泣中。

「あのね、桜ノ宮?泣いてくれるのは嬉しいんだけどね、あまりにも早い。それに今日は、色々やりたい事あるんでしょ?」

「ぐじゅ……はいぃぃ……!!」

「うん。だったら、泣き止む!ほら、いい子だから!行きたいところ片っ端から回っていこ!」

「ぶぁぁいぃぃ!!!」

「雪白、俺あんな泣き崩れてダサい顔になってる桜ノ宮初めて見たわ。」

「うわぁ、言ってしまいましたね。言葉にしてしまいましたね。残念です。先輩にもう会えなくなると思うと本当に悲しいです。今までありがとうございました。」

「おい、待て待て待て。その言い方だと俺はもう真紀より合いづらい、というか一章会えない存在になってしまわないか!?」

「まぁ、遠回しに言えば?」

「正直だな、おい!第一、桜ノ宮に人を傷つけるようなことが事ができるようには思えねぇよ。」

 あ、そっか。部長はまだ志帆の恐ろし……あの、まぁ…あっちの顔を見たことがないんだった。きっと、あっちの志帆を見てしまったら、もう今の関係を修復することは厳しいものになってしまうだろう。




 それから僕等は空港内にあるお店を回ることになったのだが……

「え!?ノープラン!!?」

「はい…。実はこんな大きな空港来たことなくて、何があるとかわからなくて…。調べては見たんですがあまりうまく予定が立たなくて……。」

「ちょっと、雪白!そういう時の彼氏でしょ!?相談に乗ってあげなさいよ!」

「すいません、昨日は全国模試で一昨日のうちに東京に来てまして……。」

「そういえば、一昨日言ってたわね………。」

「だから、雪白の荷物のそんなに大きかったのか。雪白もどこかに旅行に行くのかと思ったよ。」

「奏君、私を置いて旅行なんていかないよね!?」

「え!?」

「え?もしかして、私なんかそんなに大事じゃないの?だから、別に置いてってもいいってこと?」

 いや、なんでそうなるの!!?思考回路をどう組んだらその答えに導かれるの!!?

「あ、安心なさい。旅行に行くときは一緒だよ。」

「うん!」

「相変わらず、仲がいいなぁ。」

 さっきの志帆を見てよくその言葉が出てきたものだ。



 結局、ノープランのラストSmile部は明智先輩指揮の下、行動をすることになった。

 まず最初に、カフェ。先輩は志帆がお茶をしたいと言っていたのを覚えていてくれたのだ。

 そして、お土産屋さん。お土産屋さんと言っても家族の誰かに買って帰るとかではなく、飛行機で長旅となる明智先輩が飛行機内で食べるものを選ぶのだが…。

 そして最後に、ゲームセンター。言うまでもなく、思いっきり遊んで思い出を作るという、ただそれだけだ。


 長いことゲームセンターで遊んでいたその時、明智先輩が急にある提案をしてきた。

「ねぇ、最後にさ、プリクラ撮ろうよ。」

「ど、どうした真紀?急に女子みたいなこと言い出して…。」


 ドスッッ!!


 入るとは思ってはいたが、案の定、明智先輩の右ストレートが綺麗に決まった。たぶんこれが見納めになるのだろう。

「目が義眼なのか、節穴なのか知らないけれど、よく見えてないようなのでお伝えします。私は女です。」

「ん…んで……どうして…プリクラ………。」

「最後にプリクラ撮りたいってのもあるけど、向こうに行っても皆の顔が見れるようにね…。」

 その顔には少し、寂しさが混じっているようにも見えた。

「……ったく、仕方ねぇな!雪白、桜ノ宮お前らもいいか?」

「はい。」

「私も、プリクラ撮りたいです!!」

「女子だねぇ…。」


 ゲームセンターの奥に行くと、プリクラの機械がたくさんある。男である僕は、こんなもの一切撮ったことが無く、何をどうしたらいいのか、さっぱりわからない。

「どうしたらいいの、これ?」

 まったく同じことを後藤部長が口にした。

「ふっふっふっー!」

 奇妙な声で志帆が笑い出した。

「プリクラのことは、女子であるこの志帆ちゃんに任せなさい!!」

「……志帆?過去にプリクラを撮ったことある…?」

「え!?え、えーっと……いや、ないけどぉ……。」

 次第に小さくなるその声に僕は、不安しかなかった。

「なにやってるんだか桜ノ宮は……。ここは私に任せな。私は五回くらいは経験あるから。」

 明智先輩に関しては、予想通りだった。これで、何の問題もなく撮れるだろう。

「おい、撮るのなら、さっさと撮ろうぜ。」

「はいはい、わかりましたよ。まったく、エルボーかましてやりたい……。」

「先輩、ラストです。抑えてください…。」




 プリクラを撮り終えた頃には、もう明智先輩の出発の時間となってしまった。もう既に志帆は涙目で大変な事になっている。

「さて、ついに日本ともバイバイですか…。」

「バイバイつっても、一年間だろ。」

「まぁ、そうなんだけどね。」

「じぇえええんんばああぁぁぁいいぃぃぃ!!!!!」

 我慢が出来なくなったのか、ラグビーのタックルの勢い並の力で突撃していった。

「落ち着きなさい、桜ノ宮。何言ってるかさっぱりわからないよ。」

 それを、落ち着いて捌いていった。最後の最後まで凄い先輩だ。


「さて、行くか。っと、そうだ。雪白!ちょっと、こっちにおいで。」

「え?」

 突然呼ばれたのは、長年一緒に頑張ってきた後藤部長でなく、同じ女の志帆でもなく、僕だった。

「えっと、何でしょうか?」

「ネックレス、大切にしてる?」

「え?あ、はい!今も付けてます。はい!この通り。」

 明智先輩から貰い、大切に付けている青い菱形の宝石のようなものが下がっているそのネックレスを先輩に見せた。

「その宝石、何かわかる?」

「い、いえ…わからないです……。」

「この、『緑』の宝石はな、『ダイオプサイト』って言うんだ。意味は、道しるべ、信頼。」

 え?今、『緑』って言った?だって、この宝石、凄く澄んだ青色をしている気が…。気のせいか。

「この宝石が、あなたの道しるべになりますように。そして、私たちの信頼が続くように。そういう思いがあるんだよ。大切にしなかったら、呪うからな。」

「最後の最後になんでそんな恐ろしいことを言うんですか。言われなくても大切にしますよ。」

「よし!あと、桜ノ宮泣かすなよ。」

「ぐっ!ぜ、善処します…。」


 最後に先輩は全員に「またな、いってくる!」と言って飛行機に乗って行った。

 先輩に託された『ダイオプサイト』。僕の道しるべとともに、先輩の新たな門出の道しるべも導いてくれるといいな。

いかがでしたでしょうか?

真紀はついにアフリカへと留学しました。

彼女の新たな門出に幸がありますように。

さて次回からは、Smile部がなくなった奏たちがどうするのか。そんなお話です。

さらに、ある急展開がある……かもね?


今回も見ていただきありがとうございます。

次回も読んでいただけると嬉しいです。

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