2022・3月 その2
あれこれ悩んでいてあまり書けません。今回も説明のみです。
2022・3月 その2
俺は社長に渡された20ページくらいのノートに目を通す。図解が多いので、実質読む部分はあまり無い。家庭用のゲームの説明書と言った感じだ。内容は操縦桿とフットバーの操作方法とその役割。ふむふむ・・・要は機体を操縦桿とかで凡その地点に移動させたら、後は撮影か生物等の採集をする為に、今度は操縦桿の上部、親指の部分についたジョイスティックのようなものを合わせて、前部2本足を操作する。その時、機体の微調整はナビであるカオリに任せて自分は作業に集中する。確かに海流等の影響で位置を固定するのは繊細な作業だ。それをナビに丸投げできるのはでかい。後はモニターの見方とか魚探の操作方法とかそんなものだった。
しかし、これだけじゃ良く分らんな。俺は実際にコクピットに乗り込んで試してみたくなった。周りを見渡すとカオリが熱心に広辞苑と格闘している。ページを繰るスピードが凄まじい。もう半分以上は読んだのではなかろうか?
「カオリ、俺、コクピットで実際に触ってみたい。先に行ってるぞ。」
「そうね、あたしも大体は理解できたし、一緒に行くわ。ここで待っていろって感じだったけど、やっぱり実物があったほうがいいわ。さゆりさんが居れば色々聞けそうだし。」
後部デッキに行くと、さゆり姐さんとその部下と思われる数人が、イ1000の周りで集まって何か話していた。そして俺達を見つけ手招きした。
「おう、丁度良かった、こっちも一通りチェックが済んだところだ。実際に乗ってみな。電源は入れているけど、まだ動かすなよ。」
コクピットに座って操縦桿を握ってみる。なるほど、説明書に書いてあったこが理解できたような気になる。後ろを見るとカオリが辞書片手にレバーやスイッチやろを触っている。俺も暫く周りの物を見ながら説明書と確認していると、声がかかる。高須さんだ。
「よ~し、お前ら、一旦降りてウェットスーツに着替えてくれ。もう目標地点だ。」
「「はい。」」
一旦降りて高須さんに案内され、備品のごみ溜めのような部屋に案内される。まずは俺から手早く着替えて、後部デッキに走る。
「よし、乗れ~。2人とも乗ったら早速開始だ。南雲さんから指示が出るまで待機ね~。」
俺とカオリが席に着くとコクピットが閉まる。窓の外でさゆり姐さんと整備課の人達が慌ただしく作業している。準備が整ったかすぐに指示が入る。
「え~、南雲です。今からクレーンで吊り下げて海に入って貰います。最初は水深20m地点での撮影です。高須君が先導してくれますので、彼に着いていってください。今回はケーブル付けていますので、危険と判断したら母船のほうで回収できますので安心してください。分からないことがあったらすぐに聞いてくださいね。」