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 放課後…。


 俺たちは、約束通り本庄の家に来た。

 本庄家が金持ちだという噂は、校内では有名な話。生徒だけではなく、教師連中までもが、彼に一目置いているのだ。

 彼の親の仕事等に興味は無かったから、聞いた事も無い。

 俺の勝手な想像では、一般家庭に少し毛が生えたぐらいの生活水準で、そこまで騒ぎ立てる程でもないだろうと思っていた。

 だけど…、

「本庄って…本当に金持ちなんだな…。」

 一馬が、家を見上げながら呟いた。

 目の前にそびえる本庄家は、俺の予想を遥かに超えた、とても大きな一軒家だったのだ。

 磨き上げられた石造りの門。その奥には、手入れの行き届いた庭園が見える。玄関上には大きなバルコニーが一つ。それを支える柱は、いかにもギリシャ神話等に出てきそうな印象を受けた。

 見ているだけで眩暈を起こしてしまいそうな程、金持ちオーラに満ちた造りだ。

 本庄家の荘厳な佇まいに、飲み込まれてしまった俺と一馬。そこへ、

「おい、そんな所で油売ってないで、早く入れよ。」

「あ…あぁ。」

 俺は声を出すのもやっとの状態で、なんとか返事をする。

 見ると、本庄は玄関の扉を半分開け、俺たちを待っている様子だった。

 慌てて玄関へと向かい、家の中へとお邪魔した。

「玄関広れぇ〜〜〜〜。」

「すげ…。」

 それが、家に入って直ぐの、一馬と俺の第一声。

 何人分の靴が置けるのか解らない程広い玄関に、何十足の靴が入るのか予想もできない程大きな靴箱。その上には、何十本というカラフルな花々が、外国製と思われるいかにも高そうな花瓶に生けてあった。

 その雰囲気に圧倒されている俺の横で、

「たぶん、俺の部屋よりでかいぞ。何畳あるんだ?」

「いや…。和装の造りじゃないから、何畳って聞かれても…。」

 一馬の低俗な質問に、本庄は苦笑いを浮かべ、本当に困ったという様な顔をした。

「まぁ…とりあえず、上がれよ。」

 そう薦められ、俺と一馬は靴を脱ごうとしたその時、

「あら。卓君、お友達連れてきたの?珍しいわねぇ。」

 と、品の良い女性の声が聞こえた。

 視線をそちらへ向けると、年齢不詳の綺麗な女性が、にこやかな笑顔を浮かべこちらを見ている。本庄のお姉さんなのかと思ったが、

「珍しいとか言うなよ。とりあえず、俺の部屋で調べ物するから、飲み物と食べ物を適当に持ってきて。」

「じゃぁ、お母さんが腕によりをかけて、美味しいピッツァでも作って持って行くわね。」

「解ってると思うけど、バジルは…」

「乗せちゃダメね。それぐらい解っているわよ。」

 二人の会話を聞きつつ、俺は大きな疑問を抱いていた。

 確かに、目の前の女性は年齢不詳なのは間違いない。だけど、どう見ても30歳を超えている様には見えないのだ。

 女性が母親だとして、歳の計算が全く合わない。

 何か、複雑な事情があるのか?と、得意の妄想に浸ろうとしたが、

「おい、早く部屋に行こうぜ。こっちだ。」

 そう言って本庄は、そそくさと廊下の奥へと進んでいってしまった。

 俺は思考を現実に切り替え、靴を脱いで後を追う。

 廊下の一番奥にあった階段を上り、二階廊下を進む。

 左右に3つ、突き当たりに1つ扉があった。

 一体何人家族なんだろう?と思ったが、あえて聞く事はしない。低俗な一馬と、同類だと思われたくなかったからだ。

 やがて本庄は、突き当りの扉の前で立ち止まり、

「ここが俺の部屋だ。入って。」

 そう言って部屋の扉を開け、左手で、早く入れと促した。

 早速部屋に入ると、

「うぉお!テレビでかっ!あ…すげ〜、プレステ3も360もwiiまで揃ってる。」 

「すげ…ソフトもいっぱいある…。」

 それが、一馬と俺の部屋に入っての第一声。

 驚きつつも、やはり俺と一馬は低俗な一般庶民なんだなと改めて思った。

「なぁ、今度プレステ3のソフト貸してくれよ。来月の誕生日に、なんとか本体だけは手に入りそうだから。一生のお願いだ!頼む!」

 そう言いつつ、両手を合わせて懇願する一馬に対し、本庄は再び苦笑いを浮かべつつ、

「あぁ…わかったよ…。」

「よっしゃ!!さすが、持つべきものは友ってヤツだな。」

 一人で盛り上がる一馬を無視して、本庄はさっさと机の椅子に腰を下ろす。

 机の上は綺麗に整頓されていて、最近のテレビCMで見たようなモデルの、デスクトップ型のパソコンだけが置いてあった。

 早速本庄はパソコンの電源を入れ、

「田所、ちょっとこっち来てくれ。見せたいものがあるんだ。」

「見せたいもの?それが、今日の話と何か関係あるの??」

「あぁ…大ありだよ。正直、あの話題が出た時は驚いた。いつもの田所ハカセの下らない話とは違って、今日の議題はビンゴだった。」

「下らないって…。」

「あ…すまん、気を悪くしないでくれ。俺が勝手に、下らないと思ってるだけだから。」

 そう言われ、少しだけ腹が立った。

 だけど、今回の話が認められた嬉しさが、沸き立つ怒りを沈めてくれる。

「実はな、俺も中学の時に同じ疑問を抱いていたんだ。それを最近思い出して、ネットで色々調べた結果、不思議なサイトに辿りついたんだよ。」

「不思議なサイト?」

「ちょっと待ってな。お気に入りに入れておいたから、直ぐ出る。」

 俺と本庄が画面を見つめる中、ネット用の画面が立ち上がり、どこかのポータルサイトが映し出された。

 後ろで、一馬がソフトをあさるガチャガチャした音が少し気になったが、それは本庄も同じだったようで、

「なぁ一ノ瀬。全部まとめて貸してやるから、とりあえずこっち来て一緒に見ようぜ。」

「マジ!?さすが金持ちは太っ腹だねぇ。」

 そう言いながら、一馬はソフトを出しっぱなしのまま、俺の横に来た。

 俺一人で来れば良かったなと思うが、それはもう後の祭りだ。

「おし、来た来た。見てみコレ。」

「ん?タマシイコキン…なんだこれ??」

「一ノ瀬…違うだろ。漢字の上に読み仮名書いてるって…。」

 一面真っ黒の壁紙の上に、このサイトの名前なのだろう、「魂古今」と大きく書かれていた。その上には本庄の言うとおり、小さく「こんここん」とルビが振ってある。

「こんここんって…変な名前だな。センスが無いよセンスが…。」

 一馬がそう騒ぎ立てる隣で、俺は画面を食い入るように見つめていた。

 サイト名の下には、変な模様に囲まれ「説明」と書いてある。

 その下は丁度画面から見切れていたので、

「ねぇ、この下には何て書いてあるの?見せて。」

「オーケー。」

 そう言って本庄はマウスのホイールを動かし、画面をスクロールしてくれた。

 やがて、「説明」の全文が現れ、そこには、こう書いてあった。


 当サイトは自分の【魂】について知りたいと願う【愚かな罪人】たちの為のサイトです。

 それ以外の目的での入場の際に発生した事故やトラブル等は、一切の責任を負いかねます事をご了承下さい。

 尚、ご入場の際には、死をも恐れぬ充分な心構えをお持ちのうえ、下部のENTERボタンをクリックしてください。


「なんか…書いてある事、めちゃ怖いんだけど。」

「田所もそう思うだろ。俺も思ったさ。事故だとか死とか書かれると、ちょっと引くよな。だから、俺もまだ中には入ってないんだよ。」

「そりゃそうだろうね。」

 俺と本庄がそう会話している横で、一馬が、

「何言ってんだよ、二人共。こんなの、他人を怖がらせて喜んでるだけだって。ちょっと貸してみ。こんなもんはさ…」

 そういいつつ、一馬は勝手にマウスを握る。そしてそのまま、

「ここを…。」

「おい!一ノ瀬やめろよ!」

「ポチッと。」

 本庄の制止も聞かずに、一馬はENTERをクリックしてしまった。




【続く】



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