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放課後  作者: みゅこと
1/10

プロローグ

元来自分は脇役タイプなのだ。

周りでおこっているドラマをいつもぼんやり見ては、(大変だなあ。熱いなあ)

などと他人事のように(実際他人なのだが)おもっていたものだ。

そうなのだ。

それなのに・・・・まさかこんなことに巻き込まれるハメになるなんて。

考えてもいなかった。そうあの時までは






教室の窓が橙にそまる。

ゆっくりとペンをはしらせていた彼女は、視線の端に映る朱に思わずドキリとしそちらの方を振り向く。

窓の外では、ちらほらと帰宅する生徒が見える。

空の橙に溶け込まれた景色は、いつも眺めているものとは違い現実のものではないように感じさせる。


ガラッ、


勢いよく開いた教室のドアから、スラリとした長身の男子生徒が入ってきた。

「なんだ、桃子まだやってんの」

「・・・・。」

現実にもどされてしまった。

窓の外を眺めていた彼女は、恨めしそうに男子生徒を見やった。

男子生徒、こと 小沢和樹はサッカーのユニフォームの襟をパタパタと仰いで

「大変だな」

と、その言葉とは反対ににやにやと笑っている。

「ほっといてよ。」

呟き、先ほどと同じように机に向かう。


なんのことはない、遅刻の為の反省文を書いているのだ。

「でも、園田の奴もよく数えてるよな。入学してから10月の半ばまでで50回目の遅刻だなんて。」

「そんなわけないでしょ。」

と言うものの、ありえるかもしれないと思い直す。

園田、というのはこの高校の教師で担任だ。

50代半ばを過ぎているだろうか、と思わせる外見はその実35歳。

性格もネチネチと神経質で、根に持つタイプだ。

まあ、これは彼女の主観だが。

それというのも入学式の日、園田のことを(用務員のおじさん)と思いこみ「おじさん、トイレの電気が切れそうですよ。」と言った後から何かと彼女に厳しくなった気がする。

まあ、数えきれないくらい遅刻をする桃子も桃子なのだが。


「部活サボり?」

机に向ったまま話題を切り換えるために、彼女 相川桃子(あいかわとうこ)が口を開く。

「んにゃ。途中で抜けてきた」

それをサボりというのでは?

ちらりと視線を小沢にむける。

小沢は教室を一瞥して自分の机からノートを取り出す。

「数学の課題。明日提出だろ?途中で思い出してさ」

真奈(まな)なら今職員室に行ってる。」

彼の頬がやや紅く染まってみえたのは、窓から漏れる橙のせいばかりではないだろう。

「・・・別に」

図星を指されて言葉につまっているのか、あらぬ方向を見ている。

「ま、どうでもいいけど。」

彼女はまた机に向かう。

「・・・ちょっとは協力するとか思わないわけ?幼馴染のよしみでさ。」

「思わないわね。」

小沢は均整のとれた顔を歪め口を真一文字に結ぶ。

彼女は一つ溜め息をつきペンを置く。

「幼馴染からの忠告ね、モタモタしてるとあっ、という間に他の奴にもってかれるよ。」

そうだ。先週だってバスケ部でなかなかルックスのいい先輩に真奈美は呼び出されていたのだ。

どうやら、親友はお断りしたようだが。

「分かってるよ。だから桃子がさりげなく俺の事をアピールしてくれりゃ」

「なんでワザワザ私がそんな事しなきゃなんないのよ」

「だからそれは幼馴染のよしみで」

言い合いをしていると、


「おまたせ。」


当の松吉真奈美(まつよしまなみ)が教室のドアから姿を現す。

「あれっ?小沢くん?」

小首を傾げて、ふわりとした長い髪が揺れる。

長いまつ毛をパチパチと瞬かせる。

「あ、いやその、忘れ物して。」

慌てた様子でノートをひらひらとかざす。

「あ。数学の課題?」

「ああ。」

「結構難しかったよ。」

「そう?」

小沢が前髪をかきあげている。


(なにかっこつけてんだか)


幼馴染の様子を見てもうひとつ溜め息を落とした。


「桃子ちゃん終わった?反省文」

真奈美は桃子の机の前の席につき、椅子を反対に向けゆっくりと腰を下ろす。

「あとちょっと。」

「こんなの待ってたら明日になっちまうよ」

横から小沢が口をはさむ。

「うるさいなあ。あんたもさぼってないでさっさと部活戻れば?それともまだここに居たい訳でもあるのかしらねー?」ちらりと真奈美に視線をやる。

「な、何いってんだよ」

みるみる彼の顔が赤くなる

それを隠すように、くるりと二人に背をむけると「じゃあな」と逃げるように教室を出て行った。


「仲いいね。ふたりとも」

「まあ、小学校からの腐れ縁ってやつだからね。仲はよくはないけど」

「幼馴染かあー。いいなあ」

真奈美はうっとりとしている。

桃子はペンを動かしながらちらりと親友を見た。

「今までなんとも思ってなかったのに、ちょっとしたきっかけで意識しだすのよね。そして、二人ともギクシャクしだして・・・」

真奈美は妄想の世界に突入したようだ。

(ホントに夢見る乙女なんだから。ま、あいつも不便なことね、全くもって意識されてないなんて。とにかく私は現実問題を終わらせないと)

親友に構わずまたペンを走らせるのであった。




プリントを持ち上げ「うーん」と大きく伸びをする。

「やっと終わった。ごめんね、遅くなって。」

「そう思うなら今後遅刻しないように。」

真奈美の指先が軽く桃子のオデコを突く。

「てっ。あ、あいつノート忘れてる。」

「ほんとだ。」

くすくすと笑って、「明日までなのにね。」と真奈美がそのノートを見つめる。


(わざととか?いや、舞い上がって忘れたんだな。)

事実はもちろん後者である。

「私職員室に反省文持ってくから、真奈は和樹にそのノート届けてやれば?」

「え?あ。そうだね。困るもんね。じゃあ、終わったら校門の前で・・」

「園田の小言長くなると思うから、あんまり遅い時は先帰ってて。今まで待たせたのに悪いけど。」

「いいよ。じゃあその時はメールするね。」


二人は教室を後にした。

窓から差し込む夕焼けは少し薄暗くなってきていた。




「しつれいしましたー。」

「明日は遅刻するなよ。」

背後から野太い声が追いかけてくる。


桃子は聞こえない振りをし、ガラガラと職員質のドアを閉め大きなため息をついた。

30分もみっちりと担任のお説教をくらったのだ。

「疲れた・・」

立っていただけだが、校庭を何周も走ったような疲労感が残る。

(もう真奈は帰ったよね。本当に園田の小言は長いんだから。携帯携帯・・)

ぶつぶつと言いながら鞄をごそごそ漁って廊下を歩いていると、 どんっ  不意に何かにぶつかり鞄の中身をぶちまけた。


ガシャン!  バサバサッ


「いたっ。」

「わっ!?」


軽く尻もちをついて廊下に散らばった鉛筆やノートを眺めて(・・・今日はなんてついてないの)と自分を呪った。


「大丈夫ですか?どこかぶつけました?」

慌てた様子でひょろりと脊の高い青年が桃子の顔を覗き込む。

「あ、はい」

(誰だっけ?確か生物の先生だったような。)

もう1年の半ばというのに、先生の名前を覚えてないというのもぼんやりしている桃子らしいのだが、実際この先生は若い男の先生という割にはあまり女性徒の話題にものぼってこなかった。

いや、変人という点で話題にでていたか。

「すみません。僕がぼーっとしてたから。」

廊下に散らばった物を拾い上げながら申し訳なさそうに桃子を見る。

「はあ。」

桃子はのろのろと立ち上がりパンパンと制服のスカートをはたく。

(私の方こそぼんやりしたんだけど・・・)

落ちた消しゴムに手を伸ばしていると、ふとその腕に何かが触った。「っつ・・・・・」

桃子はその黒いものを確認すると意識を放棄する事になった。

薄れていく意識の中「あ!きごさん」と慌てた声が響いていた。
















つたない文章ですがすみません。ゆっくりと進めていきたいと思います。

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