ネンガン叶って遊園地。
そわそわそわそわ。
朝からずっと落ち着きがなかったもんでお母さんに心配された。
そわそわそわそわ。
冴子との待ち合わせに早く着きすぎて怒られた。
そわそわそわそわ。
待ち合わせ場所に到着してもついてまわるこの擬音。私の心情を分かりやすく表現してくれとる。最初にこの擬音考えた人も恋しとったんじゃないかや。好きな人からの手紙を待ってそわそわしたりしたのかもしれん。今の私と一緒。まだ待ち合わせ時間まで15分はあるのに、人がちょっと近くを通ると津田くんかと思って顔を確認しちゃう。
「ちょっといい加減落ち着きんよ」
「ごめんー。でも楽しみなのと緊張するのが混ざってじっとしとれんだって」
恥ずかしい。と頭を叩かれる。ちらっと周りを見渡したら、ちょうど通り過ぎた年上のおねーさんにくすって笑われてしまった。うわ恥ずかし。
集合時間の五分前になって、槙哉くんと津田くんがやってきた。しっかり顔を見る前に軽く髪を撫で付ける。
「ごめん、お待たせー」
「すまん」
……津田くんどがっこいい。シンプルな格好しとるのが逆にかっこよさを際立てとる。なんてことだ直視するのが辛い。
ずっと見ていたら挙動不審になる(今でも十分そうだけど)ことは明らかだったので、すぐに槙哉くんの方を向いた。そんな私を、津田くんが見ていたことには気付かなかった。
「待たせちゃってごめんねー」
申し訳なさそうに謝る槙哉くんに気にしないでと首を振る。槙哉くんは予想通りというか、イメージ通りちょっとチャラめのおしゃれさんな感じ。チャラめって言っても気になるほどじゃないし、何より似合っとるもんで問題なくかっこいい。
「私たちが早く来すぎちゃっただけだもんで気にせんで〜」
「主に誰かさんのせいでね」
「それはごめんて…」
「あははっオトちゃんって絶対遠足の日だけ早起きするタイプだらー」
「むっ…槙哉くんだって今日早起きしただら?おしゃれしやがってイケメンがー!」
もう私切符買ってくるでね!と言い残して一人券売機に向かった。
槙哉くんのせいで津田くんの前なのに子供っぽい姿を晒しちゃったじゃんか!いや…もうばれてるか。うん、手遅れだったわ。
「古島さん」
軽くへこみながら切符を買っていたら、後ろから声をかけられた。誰なのか考えないうちに振り向いて後悔する。
「っ…津田くん、どうしたの?」
「いや、手伝おうかと、思って」
かっこよすぎる…!私服ってだけでこんなに新鮮な気持ちなれるのか私は。心臓が破裂しそうです誰か助けて。
ふたりで話しとるだけなのになぜかどきどきが止まらん。多分お出かけでテンションあがっとるのもあるけど、やっぱり好きな人と話すのって緊張する。今まではなんだかんだ槙哉くんとか冴子とかが一緒におったもんでなんとかなっとったけど、今は本当にふたりっきり。ちらっと向こうを見たらふたりで楽しそうに話しとる。くそっ、嬉しいけど緊張するから!恋愛初心者には厳しいから!
「あ、ありがと!でももう買えたよ」
「…そうか、じゃあ行こう」
どこかぎこちない空気が流れたまま二人並んで冴子たちのところにいく。ちらっと盗み見た横顔からはやっぱり何も読み取れんくて、そっと目を伏せた。
津田くんに切符を渡して、冴子と槙哉くんにもあげて改札を通った。そこから電車で約1時間。お菓子を食べたりしながらわいわい過ごすうちに、遊園地に着いた。
「うわあ!着いた!着いたぁ!」
遊園地を前にしてテンションがあがる私。冴子は諦めたような呆れ顔で、津田くんはいつも通り真面目な顔(無表情とも言う)をしている。
「やばいー。オトちゃんじゃないけどテンションあがってきたー!」
「だら!?良かったー私だけじゃなくて!」
槙哉くんだけはにっこにこで対応してくれとって嬉しい。思わずふたりでハイタッチしてしまった。
「はいはい、さっさと入るにー」
「はーい!」
先に歩き出した冴子に駆け寄ってその腕に抱きつく。何も言われんところを見ると冴子もちょっとテンションあがっとるな、これは。後ろを振り返ると津田くんと槙哉くんが何やら楽しそうに話しとる。みんなもわくわくしとるだね。
「うひぃ嬉しい」
「うひぃとか気持ち悪い笑い方せんで」
「ひどい!」
入り口のお姉さんにチケットを渡して、フリーパスを貰う。門をくぐるといよいよアトラクションが近くにみえて、早く乗りたい気持ちでいっぱいになる。
「何から乗る?」
「オトはなんか乗りたいものないの?」
「そうだよー、一番楽しみにしとっただもんで選んで選んでー」
冴子と槙哉くんに聞かれて、ちょっと悩む。乗りたいものはあるけどあれはなぁ…。考えとったら、冴子にデコピンされた。
「いたっ」
「どうせいらんこと考えとるだら。薬飲んできたもんで大丈夫だって」
「うぅ…ありがとー」
お見通しでした。冴子さんさすが。お言葉に甘えて正直にいかしていただきます。
「じゃあジェットコースターがいいです!」
「やっぱオトちゃん乗れるだねー」
「うん!一番好きだにー」
「よし、じゃあとりあえずあれでいー?」
槙哉くんが一番近くにあるジェットコースターを指差す。なんだかぐるぐるしとって面白そう。近いし丁度いいねってことでそれに乗ることになった。まずは冴子と私、槙哉くんと津田くんの2人組で乗る。そこまで混んどらんもんで、10分くらい待てば乗れそう。
「今回はとりあえずこの組で乗って、次からはグーパーで決めよっか」
「いいね、それ!楽しい」
そんなことを話しとるうちに、私たちの番になる。安全バーが下りて、係のお姉さんのこなれたセリフでジェットコースターが発進した。
「楽しかったね!」
「楽しかったねー、特にあのくるっと一回転するとこが好きだったな」
「私も好きだったわ」
「なんだ冴子ちゃん一緒じゃんー」
「やっぱさっきのなしで」
「あっ反応早いなーもー」
…ジェットコースターを降りてから、津田くんが一言もしゃべっとらん。体調が悪い様には見えんけど、どことなく表情が固い気がする。仲良くしゃべっとるふたりからちょびっと離れて津田くんに近づく。
「津田くん、大丈夫?」
「…何が?」
「いや、なんか全然しゃべっとらんもんでさー。…もしかしてジェットコースター苦手だった?」
私が乗りたいとか言ったもんで無理して合わせてくれたのかもしれん。それか恥ずかしくて言えんかったなら申し訳ないもんで、ふたりに聞こえんように小声で聞いてみたら、津田くんは頭を振って違うと言った。
「いや…そうじゃない。……初めてなんだ」
「え?何が?」
「…ジェットコースター」
「え…えっ!?そうだったの!?」
「ああ。ジェットコースター自体は楽しかったけど、慣れんもんでちょっとぐらぐらしてた」
そう言って、目をギュッて瞑ってまた開いた。なにそれど可愛い。ぎゅってしたのほんとに可愛い。いつものきりっと力強い目が閉じられたことで一気に無防備に見えてなんかもう可愛い。津田くんの行動にときめきすぎて思わず口からもれた。
「津田くん可愛いなぁ」
「……可愛くない」
「あっ馬鹿にしとるわけじゃないに。うっかり心の声がもれただけで」
思わず言ってしまってから慌てて訂正したら、津田くんが大真面目な顔で
「古島さん眼科行った方がいい」
とか言うもんで吹き出してしまった。肩を震わせて声を出して笑う。
「津田くん面白いー!」
「…そんなこと言うのは槙哉くらいだ」
心底わからないというように呟く津田くんが新鮮で、また笑った。
やっと更新できました…!
今回はなんだかまとまらなくて全然書き進められませんでした…そして長い笑
でも、遊園地に行けて満足です。
読んでくださってありがとうございました!
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