8章~扉の先に有るものは~
頭部を失った魔精はボロボロと音をたてて崩れていった。夜風が砂と化した魔精を遠く運んでいく。
「…なんか呆気なかったな」
『予想以上にお兄さんの力が強かったんだと思うんだけどね。それよりも、はーい、こちらに注目』
スケアクロウがまたパチンと指を鳴らす。すると、スーッとスケアクロウの後ろに夜の闇に溶け込むような漆黒の扉が出現した。
『これが地獄への門、¨黄泉渡し¨だよ』
「とりあえずツッコむ体力ないから説明頼む」
なんか、フツーの真っ黒なドアなんですけど。どこでもドアかっつーの。
『心の中でツッコんだような顔してるけど。まぁいいや、じゃあ説明するよ。この門をくぐると、落ちます。そのまま地獄に到着って感じだね。ケケケ』
「なるほど。わからん」
『えー。分かり易く言ったつもりだったんだけど』
「わかるか!落ちます、ってなんだよ!扉の意味ねーじゃねーか!」
『まあまあ、四の五の言わずくぐってみてよ。本当にその内着くから』
「本当かよ…」
とにかく、グダグダ言ってても進展しないのは確かだから、俺は両手で頬をバシバシ叩き、気合いを入れ直す。
「よし、じゃあ行くぜ」
ガチャリ、とドアを開け、バタン、と閉める。直後、ドアの向こうからドンッ、と音がした。
『どうしたの?』
「どうしたも何も、凄まじい形相の鳥みたいなのが飛んできたらそりゃあ閉めるよ!」
『今からそんなのにビビってたらやってけないよ』
「いや、フツーにビビるよ!」
『仕方ないなぁ、手伝ってあげる』
ピョンピョンとスケアクロウが跳ねて俺に近づいてくる。そして最後の一歩の時に俺よりも高くジャンプして。
『―逝ってらっしゃい。ケケケ』
不穏な言葉と共に、俺の頭にドロップキックをかましてきた。
「ぬぁっ!?」
情けない声を出しながら、俺はドアに激突。その衝撃で扉が開き、そのまま真っ逆さまに落ちていく。
「てめぇ、覚えてろよぉぉぉぉ!」
スケアクロウがバイバーイと手を振る―と言っても腕は張り付けられているから手首をぷらんぷらんさせてる―。 そして出現した時と同じく、スーッとドアは消えた。
「どうすればいいんだ…?」
真っ逆さまに落ちながら、いや、堕ちながら俺は1人呟いた。