7章~初陣~
「うおぉ…」
炸裂音の後、いつの間にか俺の両腕には籠手が付いていた。とてもスリムな形で色は黒く、要所要所に何の金属かは知らないが月の光を受けて冷たく輝く金属がはめ込まれている。肘近くまであるのだが、まるで付けている感覚がしない。それでいて生まれるより前から付けていたような感じがある。
『それは、ガントレットだね。普通は防具として扱うんだけどね。ケケケ』
「ハッ、なめんなよ?拳で闘うのは、得意だ」
『なら、見せて貰おうかな?』
スケアクロウが指をパチンと鳴らした。するとそれまでピクリともしなかった白い魔精が動きだした。…おい、ちょっと待て。
「てめぇ、分かってやってんだろぉぉぉ!?」
急いで横にステップする。一瞬前まで俺が立っていた所に俺よりもでかい棍棒が叩きつけられた。衝撃に足をとられて尻餅をつく。
そういえば、スケアクロウがあの魔精の動きを止めた時、魔精は棍棒を振り下ろそうとした時だった。…まるで、動画の一時停止と再生みたいな能力だな。
アスファルトに半ば埋まった棍棒を持ち上げ、二撃目を繰り出そうとする白い魔精。心の中で舌打ちしてとりあえず立ちあがる。
スケアクロウが言うには、今の俺は身体能力がかなり上がっているらしい。なら、ただのパンチでも多少は効くはず。
振り下ろされる棍棒を避け、右ストレートを白い魔精の腹―正確には鳩尾―にねじこむ。
メキャッ、という嫌な音と感触が右腕に伝わる。同時に魔精の身体がくの字に折れ曲がる。魔精にも痛覚はあるのだろうか。いや、今はそんなこと悠長に考えていられない。
倒れこもうとする魔精の横腹に左フックを決め、休まず顔面にワンツーパンチ。そして全体重を乗っけた一歩を踏み込む。渾身のアッパーが白い魔精の顎に吸い込まれるようにしてヒットした。
バキンッ、と硬質な音を響かせて、白い魔精の頭部が砕け散った。