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ざわざわ  作者: 千里/快晴310
7/27

7・鋏たちの理由

 じっと視線を向けられている状況に耐え切れず、千里は自分から声をかけることにした。

 こちらを見ている…というより凝視している目は四つ。言うまでもなく一人は紙袋であるが、もう一人は湯に入らず淵にいる佐藤だった。

「何してるんだ?」

「沐浴だ」

「いや、そんなことは分かってるんだけどさ、入らないのか?」

 大浴場と同じくらいの大きさを誇る塔の浴場。薄っすらと湯気に包まれた室内だ。やたらと声が響く。

「…何故熱湯に入っているのか」

「猫かよ、水怖がるとか小動物以下だぜ」

「はいはい、千里とられたからって苛々しないの」

「うるせぇ余計なお世話だ…ってか離せよ!」

「離したら千里に飛びついていっちゃうでしょ?無理」

「ぐっ…生殺し」

 湯の中に漬かっている紙袋は二メートルほど離れた場所でちょこんと座っている千里に近付こうと足掻いているのだが、首に絡みついた鋏の鎖が邪魔でそれ以上進むことができない。

 服を脱ぎ去っていても鋏が鎖と鋏を手放すことはなく、同様に紙袋も頭の袋を外すことはしない。

 暴れているせいで時折湯が紙袋にかかっているのだが、まったくふやける様子は見られなかった。

「紙袋は外さないのか?…袋」

 ずっと疑問に思っていたことを尋ねる。

「何のための防水性だ、いかなるときでも身だしなみを崩さないのが俺様だっての」

「身だしなみねぇ…」

「何だよその目、てめぇこそ湯の中にまで金属持ち込んでんじゃねぇかよ、鋏!」

「ステンレスだから」

 ステンレス鋼、耐食性の高い鋼をしようしているため水分による錆を気にする必要がないようだ。

 銀色に鈍く光る鎖の正体が分かるがまったく役に立たない。

「…楽しそうだな」

「お前も混ざってくればいい」

「俺はあそこに入る勇気は…というか佐藤は入らないのか?」

 随分前から指先を湯につける程度でおわっている。

 沐浴というより水遊びになってしまっている佐藤に尋ねると、珍しくも彼は困ったような表情を浮かべた。

「熱い」

「最初だけだぞ」

「…」

「ほらっ」

「なっ!」

 もどかしくなって腕を引くとバランスを崩した佐藤は意外なほどあっけなく湯に落ちた。

 水しぶきに目を閉じる。

「お前…千里…」

 恨めしげな声を聞いて目蓋をそっとあけると、目の前に頭までずぶぬれになった佐藤の姿があった。

 前髪が皮膚にぺっとり張り付いていたのをどけながら、軽く咳き込んでいる。水を飲んでしまったらしい。

 だが溺れたり暴れたりという反応がない、どうやら食わず嫌いに似たものだったようだ。

「熱くないだろ?」

 呆れた顔をした佐藤が濡れた口元を手の甲で拭う。

「てめぇ、離れろ佐藤!千里に近付くことは許さん」

 紙袋がそう言うのも無理はなく、佐藤は水面に浮いた長い千里の髪を面白そうに眺めばしゃばしゃと水面を跳ねさせる。

 髪と一緒に尻尾の先端も水の上を漂っていた。

「というか…随分のんびりしてるね佐藤、依頼は?」

「抜かりない」

「今回の依頼の内容俺達は聞かされてねぇぞ。大丈夫なのかよ…ここに来てもう丸一日になるぜ?」

「ここでこうやって時間を浪費することで待っている…決断を」

「決断?」

「今回の依頼主は決断の補助を望んだ…だからそのときを待っている。こちらから動くことは出来ない」

 曖昧に誰の決断なのか、どういう内容なのかをぼかしている。

 暫く思案気に尻尾で水面を叩いていた千里だが、そろそろのぼせてきたのかそっと湯から出た。

 ぶるぶると顔を振って水気を払う。

「お、出るのか?」

「…先行く。別に気にしないでくれ」

 ぺたぺたと濡れたタイルの上を歩いて脱衣所に向かい、角のある頭をゴシゴシと乱暴にタオルで拭う。

 誰が用意してくれたのか…おそらくは佐藤だろうが、新しい服が置いてあったので遠慮なくそれに袖を通させてもらった。

 髪を結ぼうにもまだ乾ききっていない髪を結うのは少し憚られて、結局そのままにして脱衣所を出る。

 塔の中には千里のことを理解してくれない人はいない。

 日ごろ衣服の中に押し込めている尾を開放することができた。

 扉をあけてすぐの廊下を歩いていると、偶然にも目の前に魔王の姿を確認することができた。

「魔王?」

「お、千里か。俺のことはイグレアって呼べよ」

 こちらに気がついたのか、壁に飾られている絵から千里へと視線を移す。

「魔王のほうが言いやすいんだ、イグレアって…失礼だけどあんたに似合わない」

「そうか?…そうか。…で、どうだ?魔王の住まう塔の居心地は?」

「快適…だけどいいのか?こんな風にだらだらと滞在して」

「構わねぇよ、どうせ一人で住むには狭すぎる場所だ」

「そっか…ん、これは?」

 魔王の眺めていた絵には二人の人物が描かれている。片方は魔王によくにた…しかし年齢は二十代程の青年。

 それに寄り添うにようにして青年より若い女性が立っている。

 微笑を称えた…しかし気の強そうな目をした女性だ。

「あ、かわいいだろ?俺の嫁さんだ」

「嫁?…妻がいたのか…見てないぞ?」

「そりゃお前、実物見たら惚れられちまうだろ?だから隠してんだ。大事な人だからな…認めた奴にしか見せない」

「名前は?」

「んー…勇者様だ」

「勇者?」

 魔王に相反する存在の勇者のことだろうか?

 だとすれば魔王と勇者が愛し合い添い遂げてしまった…この世界は随分とおかしな世界だということになる。

(流石…佐藤の友達だ)

 生半可に常識の通じる相手ではない。

「俺を殺すってな…攻め込んできたんだ。話が妙にあってね…んで一緒にいることになったわけだ」

「独りじゃなくなったんだな」

「おう、お前は共感してくれるみたいだな…世界の全てが敵だった俺がようやく得た理解者だ」

「佐藤は?」

 意外な人物の名だったのか魔王は驚いた後に苦笑する。

「確かにあいつは理解者というか共感をしてくれた奴だがな、そもそも人間じゃねぇしすぐにここを立ち去った。それに、あいつじゃ俺は止められなかった」

「止める?」

「そ、千里」

 魔王は許しを請うように千里に目配せする。伸びた手が角に向かっていることに気づき、千里は了承に頷いた。

 伸ばされた手が固い角を撫でる。

「お前なら分かるはずだ…世界規模での村八分。誰も味方になってくれる人はいない。こちらが何をしなくとも敵とみなされる苦痛。俺だって聖人じゃねぇんだ…憎かったよ、何もかもが」

「…ああ」

(俺だって)

 堪えていた憎しみや悲しさがなかったわけもない。

 自分を見下す人間、自分を差別する人間が大嫌いで仕方なく…それでも心のどこかで人を信じようとする自分がいた。

 だからこそ佐藤達が現れたときに素直についていった。

「俺はさ…魔王って祭り上げられるほど強い力を持ってた。それこそ世界を滅ぼせるぐらいのな…全盛期は」

「……」

「この世界の仕組みを知ってるか?」

「…いや」

「この世界はな…何か一つのものに憎悪を向けされることで平和を保っている世界なんだ。いってみれば憎しみの矛先が人間同士にならないように…俺っていう、魔王という象徴を作り出して憎ませる。それで世界を平和に保っている世界だ」

 力を持つが故に嫉妬を浴び、強大な力を持つが故に恐れられ、恐怖の対象、憎しみの対象として祭り上げられた。

 いつしか魔王と呼ばれるようになった。

「佐藤はな…あいつはお前と似た境遇だったんだよ、千里。俺も奴から話を聞いただけだから詳しいことは知らんが…だから俺が世界を滅ぼそうと考えていたとき、あいつが傍にいたら今頃この世界はなかった。お前達と俺が会うこともなかったわけだ」

「でもこの世界は残ってる」

 千里の言葉にその通りだと魔王は笑った。

 肖像画に描かれている女性を慈しむように見上げている。

「どうして…」

「ん?」

「どうしてあんたは世界を許せた?どうしてあんたは笑っていられるんだ?」

「んー難しいけど単純な質問だな」

 首元を覆うマフラーをそっと掴んだ魔王は言葉を選ぶようにしばらく虚空を見つめて黙り込み、そして照れくさそうに口を開いた。

「陳腐になるけど…愛ってやつだな」

「魔王が…愛?」

 似合わないことの筆頭に位置する言葉だ。

「恥ずかしいが勇者が大好きだったぜ、俺は…だから俺は世界を壊すことを思いとどまった。なんつぅかな…」

 相応しい言葉を探して魔王は髪をかき乱す。

「良かったんだよ、世界に嫌われてようとよ…俺の世界は勇者と自分、それにこの塔だけだった。だからあいつに好かれてるってことは俺は世界から愛されてるってことで、あいつが好きだってことは俺は世界を愛してるってことだったんだ」

 それは世界ではなく自分の世界だったのかもしれない。

 だが魔王にとってはそれが紛れもなく世界であり、それだけで満足だった。たとえそれが自己満足に過ぎないとしても


「まー簡単に言っちまえば、俺は妥協したわけだ」

「…俺には」

「分からないってか?…ま、俺もその境地に至るまでに千年かかったわけだ。お前は分からなくていいよ」

 突き放すような物言いではなく、穏やかに言い切ると魔王はふと笑った。

 その笑顔を見て何故か胸が痛む。

(幸せだっていうなら)

 どうしてそんなに悲しそうに笑うんだ?


 千里を追って浴場を出た佐藤だったが、彼を魔王が話し込んでいるのを知ると壁際に身を寄せて隠れた。

 柱の影から二人の会話を窺う。

 会話の内容はとても良い話で、最悪な話だった。

(なるほど)

 魔王の発言で大体のことを把握する。

 自分がこの世界を以前訪れて去ったあと何があったのか…そして今、何が起ころうとしていて依頼人は何を求めているのか。

 だとすれば答えは簡単だった。

 だがそのことを簡単に果たしてしまえば、それは千里の意思にそぐわない可能性がある。

 依頼に千里は関係なかったが、彼の意思を尊重してやりたい。

(だとすれば千里に真実を知らせる必要があるな)

 彼を騙すような行為になるのは嫌だが仕方ない。

 聞こえてくる言葉に目を伏せた。

 勝手なことを魔王が千里に伝えなかったことは喜ぶべきことだが。

「千里」

(お前はまだ独りなのか?)

 満たせぬことが歯がゆい。


 魔王の塔に滞在して二日目、やることもなく塔の内部を探索していた千里の前に、佐藤が現れた。

 千里を待っていたらしく壁に背中をつけて立っている。

「佐藤、何か用でもあるのか?」

「少し繁華街に下りて来い」

「繁華街?…人間達の都市のことか?」

 塔にある窓から見下ろすことができる町はかなりの規模を誇り、興味がなかったといえば嘘になるがどういう風の吹き


回しだろう?

 佐藤が理由もなく危険なことに手を出すはずもない。

「下りて来いってことは佐藤は来ないのか?」

「俺は以前この世界に来た際に魔王と共に色々あった…確実に人間達からは魔王の味方だと思われている」

 だから迂闊に出歩く事はできないということだろう。

「鋏に話をしておいた…少し羽を伸ばして来い。角と尻尾は隠したほうがいいと思うが」

「ん、でも何か用事があるからじゃないのか?」

「…この世界は珍しいだろう?適当に見回って来い…俺からお前に課すことがあるとすれば…そうだな、魔王について学べばいい」

「魔王について?」

 知りたいのならば直接魔王に聞くか、本人に聞きにくいことがあれば近しい佐藤に尋ねればいい話だ。

 そちらのほうが確実な情報が手に入る。

「俺達からは聞けない…人間の視点からの話も経験になる」

「分かった」

 釈然としないものがあったが、佐藤がいうのなら何か大切な意味があるのかもしれない。

 佐藤は頷くと鋏を探して駆け出した。


 意外にあっさりと鋏の姿が見つかる。

 鋏は魔王の部屋におり、魔王と談笑している様子だった。

 会話に割り込むのは悪い…と思いつつ、佐藤は鋏に話をしてあると言っていたのでそっと部屋に入る。

 扉の閉まる音で二人がこちらに気づいた。

「あ、おはよう千里」

「鋏さん…それに魔王、何してたんだ?」

「何してたってお前、お前等が塔の外に出かけたいって言ったんだろーが。ま、魔術が使える佐藤が同行するなら俺も寛大に許してやるところなんだが、二人とも素質はねぇみたいだしな」

「それが何か困るのか?」

 悩ましげに腕を組む魔王を見て千里が尋ねる。

「困るも困る…行きは俺が送るとして、帰りはどうするつもりだ?常に遠距離に魔術飛ばせるほど俺は器用じゃないぞ?


この塔に来るときは佐藤が合図をだした一瞬だけでよかったが」

「そうなんだよね…で、そのことについて今相談してたってわけ」

 塔を物理的に上れば解決するのだろうが、流石に千里にもそれがいかに面倒で無謀なことなのかは分かる。

 人から憎まれている魔王、しかし人間が塔に攻め入ってくることがないのは、塔を上ってこられないからだ。

 魔王らしくはないとはいえ魔王、おそらく塔の中に人間の上がってこられないようなトラップや化物を配置しているのだろう。

「不要な心配だ…帰りは俺が」

「お前は遠くには魔術飛ばせないだろ?」

「俺が下に降りて二人をここに送れば問題ない」

 それならば可能だろうが、しかしそれだと問題が残る。

「佐藤はどうするんだ?」

「飛んで戻る」

「なるほど、それで解決だ。じゃ行ってらっしゃいお二人さん!」

 飛んで戻るとはどういうことなのか…と千里が問いかける前に魔王が二人の前に立って肩を軽く押す。

 地面がいつの間にか消えていて衝撃でそのまま落下した。

 浮遊する感覚…二度目だ。

(移動魔術!)

 相変わらずの吐き気を催す感覚が体中を支配し、目の前が真っ暗になった。


 意識がはっきりとしてくると町並みが自分達を囲っていることに気づいた。

 隣に立って千里の肩に手を回し、倒れないように見守ってくれていた鋏は移動に慣れているのか、まったく変化が見られなかった。

「大丈夫?」

「…あまり大丈夫じゃない」

 フラフラする頭を片手で抑えてぶれる視界が定まるまで待つ。

 喧騒がだんだんと鮮明に聞こえるようになってきた。

 ぼすっと頭から帽子が落ちてくる。

「隠さないとね」

 慌てて尻尾をくるくると丸めてズボンの中に突っ込む。鋏はその間に周囲の様子を確認し、千里が一連の動きを終えたと同時に腕を掴んで歩き出した。

 千里の歩幅と歩くペースにさりげなくあわせてくれている。

「どうして鋏さんは俺に優しいんだ?」

 考えていたことがつい口に出てしまった。

 無意識のうちに尋ねてしまう。

 鋏は質問に驚いたようだったが、適当に答えることはせず暫く考えてから丁寧に答えてくれる。

「俺だけじゃないよ…佐藤だって、ちょっと…じゃないね、かなり歪んでるけど紙袋だって、君を探す為に旅をしてたんだ。それだけの理由があるに決まってる」

「理由」

「それぞれ…あるんだよ。ほら、辛気臭い話は止めよう?きっとこれからもっと嫌な話、聞かないといけなくなるんだから」

 佐藤は人間から見た魔王に対する批評を聞いてこいと言った。内容がどうなのかは正確にはわからないが、聞いている限りの魔王の扱われ方から推測すると、どうせろくな話ではない。

 鋏は指示を受けているのかはっきりとした足取りで人ごみの中を進む。

 町の様子は中世風ではあったが、人の様子と気配は千里のいた世界に臭いが似ていて少し不愉快だ。

 はぐれないように握ってくれている鋏の手を握り返し、できるだけ人と目を合わせないようにして歩いた。


「おはよーさん…ってうわ、最悪な目覚めだな。俺の癒しはどこに行ったんだよ?」

 丁度二人を送り出した直後、魔王の部屋に入ってきた紙袋は佐藤の顔を見て露骨に顔を顰める。

「もう一人のお仲間さんか、紙袋は送らないでいいのか?」

「大人数だと目立つ…それにこいつと千里を二人で行かせるわけにもいかない」

「どういう意味だよ」

「…とにかく、こいつには必要ない。紙袋…しばらく千里と鋏は留守にする。お前は好きにしていろ」

「おーおー俺だけ仲間はずれ、涙が出ちゃうね」

 ふざけたように呟くと肩をすくめて紙袋は回れ右をする。佐藤のほうを振り返ることもせずに手を振ると部屋を大人しく出て行った。

 扉が閉まる音を聞くと佐藤は目をそっと閉じた。

 決心をつけると目を開いて魔王を向き合う。

「悪いが…この前お前と千里が話しているところに居合わせた」

「ん?…ああ、あんときか。聞かれちまったのかぁ…ま、仕方ないわな。で、それがどうかしたのか?千里と俺が仲良くしてたのが気に食わない…とかっていう苦情なら受け付けないぞ」

(誰がそんなしょうもないことで…)

「単刀直入に言おう…勇者とやらにあわせろ」

「……」

 顔から一切の表情を消して魔王は佐藤と正面からにらみ合う。

 最初に折れたのは魔王だった。視線を逸らして頭を掻く。

「…測りかねるな」

「何をだ?」

「お前の真意だ…どちらの意味でその言葉を口にしているのか。ただ俺の勇者に興味があるのか…それとも」

「おそらく後者だ、話せ千里…何故イグレアなどという名前を名乗っている?お前は今何を考えている?」

「止せよ…俺はお前の求める千里じゃない。分かってるんだろ?俺は最早違う人間だってこと」

「分かっているつもりだ…捨てた魂は次へ引き継がれた。俺はお前をあの千里としてみた事はないが、それでも赤の他人と割り切ることは出来ない」

 それに…と魔王の姿を見て悲しげに、そして感謝するように佐藤は呟く。

「お前が全てを引き受けたことで千里は普通に生きていけるかもしれない。俺の我が侭につき合わせて悪いと思っている」

「違うな、俺は千里じゃねぇが…あの頃の俺だったらお前の我が侭だなんて思わない。感謝すると思う…今の俺があの頃の俺じゃなくてもどかしいけどな、お前の苦労を労ってやれない」

「充分だ」

 その言葉だけでも充分に救われる。

 佐藤は胸に手を当てて俯いた。

「…話すぜ、俺の口から。終わらせる」

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