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第三十三話 デジタルなよろず屋へ


 アプリの試験運用が始まった。移動販売の売り上げも順調に伸びていき、アプリを入れたタブレットを導入することになった。その話を、町内会長にも話す予定で約束をしている。


 春となり、心地よい気候となっていた。この移動販売を始めて、一年の間にとてつもない変化をしていった『花守町よろず屋』はまだまだ変化を続けていく。茜の将来像はまだ先にあった。


 茜は久しぶりにバイクに乗り、町内会長の家へと向かった。春の風は心地よくバイクで風を切りながら走っていく。まずは町内会長に試験的に利用してもらうために、プレゼンをする。このアプリの素晴らしさを伝える必要があった。このアプリは買い物だけではなく、見守りの観点からも活躍すること、それを知ってもらいたかった。


 到着して、町内会長が部屋へと案内してくれた。


「駒田さん、今日はどうしたんだい?」

「今日は新たに導入したアプリを見てもらいたくて来ました。」


 茜は少し緊張しながらも、説明をした。最初は怪訝な顔をしていた町内会長も話しを続けるにあたって、納得をしてくれたようだ。


「こういう事で、佐藤さんにも試験的に行って頂きたいのですが、どうでしょうか?」

「俺は構わないんだが、ちょっと気になる点がある。ビデオ通話はわかったんだが、映像も映らないようにも出来るか?あまり、外には見せられない格好の時もあるだろうからな。その辺は配慮しないといけない。」

「確かにそうですね。一度清水さんに聞いてみます。」

「そうか、清水さん所の息子か。元気だったか?小さい時はやんちゃ坊主だったが、しっかりとしたもんだ。」

「ご存じなんですか?」

「あぁ、子供の頃はしょっちゅう悪さばかりしておって、叱ることが多かったな。ハハハ。」

「子供の頃はこの町に居たんですもんね。アプリを作るぐらい立派な人でしたよ。」

「懐かしいなぁ。今度会ったときは俺の所にも寄るように言っといてくれ。」


 茜は微笑み頷いた。町内会長はタブレットを机に出し、アプリをインストールした。試験的な運用には協力的だった。


「これで、注文があれば頼めばいいんだな。」

「はい。これを使えば、注文できますので。」


 町内会長は正直な人で、良いものはいいと伝える力を持っているので、判断次第では、上手くいかない場合もあるが、そこは清水さんの作ったアプリを信じて、託すことにした。


「今度から、こちらで、注文をお願いします。」

「おぅ、色々触って見て、感じたままに今度伝えるよ。」


 茜は説明を終え、町内会長の自宅から出た。

 次に向かうのは、清水のおばちゃんの家だ。息子の作ったアプリの試験的運用で、ぜひ使ってほしかったのだ。あんな事があった中で、元気に過ごしているかの確認も兼ねて会いに行ってみた。


「おばちゃ~ん、いる~?」

「はいはい、いますよ。茜ちゃん、午前中に来るなんて珍しいねぇ。」

「あれから、体の調子はどう?」

「大丈夫だよ。この通り、ピンピンしているよ。」


 清水のおばちゃんは体をストレッチして見せてくれ、問題ない事をアピールしてくれた。元気そうでよかったと思うとともに、あの時の事が今でも鮮明に蘇ってくる。みんなが辛い思いをしないためにも、茜は見守っていきたいと思った。


「そうそう、今日はね、おばちゃんの息子さんに作ってもらったアプリの試験的運用に協力してもらえないかと思ってさ。


「私が!?私でいいの?あの子、未だにどんな仕事なのか教えてくれないのよねぇ。アイチ―アイチ―って言うけど、私はわからないし。」

「おばちゃん、アイチーじゃなくて、ITあいてぃーだよ。プログラミングのお仕事だよ。」

「なぁに、その変な名前。フラミンゴみたいね。動物保護でもしてるのかねぇ。」

「違うよ。コンピューターのプログラミング。」

「コンピューターね。わかったわかった。それで、私は何をすればいいの?」

「このアプリを使って、注文も出来るし、町の人ともお喋りが出来るよ。」

「ほぅ、そりゃいいね~、寂しくなくなるねぇ。」

「なかなか、遊びに行けないときとかさ、皆で、お話しできるようにしてもらったんだよ。」

「注文もこれ一つで出来るのかい?有難いねぇ。」

「これだと、顔も見られるし、良いと思うんだよね。」


 茜は説明をして、納得してもらった。


「茜ちゃん、一回使ってみてもいい?」

「はい、どうぞ!」


 茜は身構え、タブレットが鳴るのをずっと待っていた。


———Prrrr———

『これ見えている?』

「はい、バッチリ映っています。」

「なるほどね。これで注文すればいいんだね。やってみるよ。」

「ありがとう、おばちゃん。」


 茜は皆に使ってもらえそうで安心していた。最初の説明で理解してくれたので、問題ないだろうと判断した。


 次に向かったのは、若夫婦のお宅だった。若いだけあって、やはり呑み込みは早く、ただ、懸念点として、映像をオフにしたいとの要望を貰った。この3世帯から、まず試験的に運用することにした。


 自宅へと戻った茜は早速、清水と連絡を取り合い、修正点の話し合いを始めた。


「清水さん。駒田です。試験的運用が本日から始まります。ただ、一つだけ懸念点があるんですが、映像のオンオフの切り替えするボタンも作ってもらえないでしょうか?話しを聞く中で、映像に移せない格好の時もあるみたいで、、、。」

「確かにプライバシーもありますしね。修正はこちらで始めておきますよ。教えて頂いて、ありがとうございます。」

「こちらこそ、こんな素晴らしいものをありがとうございます。」


 話し合いながら、作り上げていく。これは本当に、素晴らしいものが出来る予感しかなかった。あとは、3世帯で利用してみた感想が聞ければ、最終的に運用が出来ることとなる。その日から一週間は、試験してくれているお宅からはアプリから注文することが増えていき、時には楽しそうに森下さんと話している場面も見受けられた。


 『花守町よろず屋』は今日もみんなの見守り隊となっている。


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