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第二十二話 灯りのついた場所

 茜は後日、保健所へと足を運んだ。豚汁を販売するにあたって何度も足を運んだあの場所。懐かしさを抱えながら、営業許可の取り直しに来たのだ。新しいお店をオープンするにはその場所での営業許可を取る必要があった。ただ、今回の訪問は事前相談のみだ。修繕個所も教えてもらえる。


 保健所に着いた茜は、まず担当窓口へと向かった。受付で確認し、呼ばれるのを待っていると、一人の男性が呼びに来てくれた。前回も担当してくれた立花さんだった。


「駒田さん、こちらにどうぞ。」


 呼ばれたのは小さな部屋の面談室だった。殺風景な部屋に机と椅子だけ置いてあった。


「駒田さん、今度はどんなご用件でしたか?」

「今度、元飲食店の建物を使って、営業したいので、修繕する予定で、どこを修繕するべきか教えてほしくて。一応、写真を撮ってきたのですが、見てもらえますか?」


 立花さんは茜の持ってきた資料を手に取り、確認を始めた。黙々と資料に目を通す立花の姿に茜は不安を募らせていた。


「ありがとうございます。率直なことを話すと、所々修繕してほしい箇所はありますが、そこさえ直せば、店舗として活用できますよ。この写真で十分わかるので、現地の確認もいらないでしょう。」

「そうですか、、、。安心しました。」

「それでは、修繕個所ですが、まず、壁のひび割れが気になります。これは早急に直すようにしてください。そして、床、蛇口、換気扇、照明、コンセント、厨房機器だけ直してもらえば、店舗として活用できますよ。」

「ありがとうございます。これから、修繕に向けて、依頼してみます。」

「この辺だと、工藤工務店さんが飲食店の工事をしているので、お話し伺ってみたらどうでしょうか?」

「そうします。ありがとうございます。」


 茜は工藤工務店の連絡先を聞いて、保健所を後にした。

 早速、工藤工務店に連絡することにした。


———Prrrr———

『はい、工藤工務店です。』

「こんにちは。私は『花守町よろず屋』の駒田と申します。少しお伺いしたいことがありまして、今大丈夫ですか?」

『えぇ、どうぞ。』

「これから、元飲食店を修繕して、お店を開きたいと思っているんですが、修繕をお願いしたくて。」

『あぁ、なるほど。修繕の依頼ですね。かしこまりました。一度現地にお伺いして、確認させていただきたいのですが、空いている日時がわかれば、そのように、現地に向かいますよ。』

「あ、わかりました。明日の午前中でも大丈夫ですか?」

『大丈夫です!じゃ、明日お伺いしますので。よろしくどうぞー。』

「あ、よろしくお願いします。」


 なんというか、無機質な会話であっという間に話が終わってしまった。何はともあれ、明日の午前中に落ち合う約束をした。しかし、無機質すぎて、住所を伝え忘れてしまって、また再度電話して、伝えることが出来た。


 翌日、元飲食店の建物に行き、シャッターの鍵を開けて、待っていた。すると、工藤工務店と書いてある軽トラが目の前に止まった。


「おはようございます。電話を頂いた駒田さんですか?」

「あ、はいそうです。この物件を見て頂きたくて。」

「早速、中を見せてもらいますね。」


 軽トラから降りてきたのは、中年男性で中肉中背の少し綺麗な作業着を着た人だった。ガラスの扉を開けて、ザッザと中に入っていった。まず床を眺め、ひび割れた個所をメモしていった。タイルの欠損も見逃さない。


「少しずつ見ていきますね~。」


 茜に合間に話しかけてくれた。そして、一つ一つ確認をしていった。厨房の方でもキョロキョロと視界を移動させながら、目視での確認をする。長年やってきた経験で培ったもののようだ。茜は安心してみることが出来た。たまに気になった部分は触って確認をして、メモを取っていた。外も確認してもらい、全ての確認が終了した。


「状況はわかりました。これなら、およそ、三週間ぐらいで直しますよ。どうしますか?このまま進めてもよろしいですか?」

「はい!お願いします。」


 茜は見積書も見て確認したが、思っていたよりも安くできそうで安堵していた。修繕工事を依頼してよかったとさえ思った。丁寧な仕事ぶりに、見とれてしまっていた。


 この元飲食店の空き家は、以前の借りていた人が住んでいたようで、住居スペースもあった。住居用の台所も備え付けており、トイレや風呂場もしっかり完備されていた。六畳の個室が二個あり、住むには申し分のないほどだった。住居スペースはもし使うことがあれば、修繕を、また工藤工務店に依頼しよう茜は思っている。


 時が経ち、あれから、三週間がたった。寒空の下で豚汁や玉子スープなど、汁物のバリエーションも日替わりで作り続けた。手がかじかみ、肌が出ているところが寒さで痛い。もうすぐ、そんな日々からサヨナラできる。みんなの為にと始めたことも修行のような日々へと変わっていた。茜を支えたのは住人の笑顔だった。寒い中わざわざ足を運んで買いに来てくれ、茜が作った料理を美味しい美味しいと食べてくれたことが本当に救いだった。


(寒い中、頑張ってこられたのは皆のお陰。今日から、また頑張ろう!)


 そんな事を、いつも考えながら作り続けていた。


 いよいよ、修繕が終了し、現地で確認をする。ドキドキしていた。

 茜は店舗前に行くと、工藤工務店の方が並んで待ってくれていた。


「皆さん、ありがとうございます。」

「いえいえ、とてもいい感じに仕上がりましたよ。早速、確認してもらえますか?」


 茜は壁のひび割れも修繕されているのも確認した。多少パテの後は残っているにしても、とてもきれいな仕上がりだった。

 ガラスの扉を開けて、中に入っていくと。床が綺麗になっていた。一部張替えと聞いていたが、まるで、全て替えたかのような綺麗さで茜は驚きを隠せない。一つ一つに驚いて見せる茜の姿が可愛く見えたのだろう。工藤工務店の皆さんもニコニコしながら見ていた。厨房設備もピカピカで、調理台も鏡のように光っていた。

 すべての修繕個所を見て回り、茜は高揚した。これからの『花守町よろず屋』の展望が見えたような気がした。


「ありがとうございます!こんなに綺麗にしてもらって、とても嬉しいです。」

「気に入っていただけて良かったです。確認してもらったという事で、書類にサインしてもらって終了です。」


 茜は書類にサインをした。これで、保健所へ営業許可を取りに行ける。

 ここから、なんだって出来るのだ。茜はワクワクした。アイデアが実現できる。お客さんの要望もなんだって叶えられると思った。

 『花守町よろず屋』は何処までも進化していく。周りの皆の為に茜は今日も働いている。


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