8. 『案件2』お嬢様の過去、それを知る貴族の思い
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暖炉の火が静かに燃える応接室で、ギルフォード伯爵はロゼリアの名前を聞き、
目の前の少女ををじっと見つめていた。
沈黙を破るためにリナはロゼリアが伯爵に会う目的を伝えようとした。
「こちらのロゼリアお嬢様は貴方の過去について尋ねたくて、わざわざこちらに伺った次第です」
言葉を続けようとしたリナを静止して、ロゼリアは自身の言葉で語り出した。
「ギルフォード卿、貴方がワタクシの母を殺害した事実、そしてその理由について尋ねるために何度も面会を求めました、しかしそれは叶わず断られました」
「正攻法では無理だと思い、別方向からのアプローチでこちらのリナ様のツテを頼り面会求め、本当は敵討ちを望んでいました」
「何故貴方は私の母を殺したのですか!その事実を明らかにしてください!」
伯爵は低い声でロゼリアに問いただす。
「私が貴方の母を殺したという根拠は何だ?それを教えてくれたまえ」
ロゼリアは力強く、そして一片の迷いもなく事実を語りだした。
「ワタクシは、貴方と母が戦っている場面をみていました、そして貴方が剣の魔法で母を貫き殺害したことを!」
静かに考え伯爵は納得したようにその言葉を受け入れた。
「そうか…あの時、相手にスキが出来たのは娘が見ているのに気づいたからか」
ちょうどその頃にドアがノックされ先程の執事がお茶を持って部屋へ入ってきた。
全員にお茶を静かに配膳し、そのまま役目を終え部屋から退室していく。
真剣に自身を見つめてくるロゼリアに対して、伯爵は過去の事件や出来事に対して、本当に真実に追求するべきか問いかけてきた。
「これから話すことは、貴方にとってとても辛い事実だがそれでも知りたいか?
私は、このまま大人しく自分の家に戻り、商人の仕事に精を出す事をお勧めする」
ロゼリアは何故そのように問いかけられるのか困惑した。
母の死に殺されるだけの真実が隠されている、そのような申し出だが真実を知りたい彼女は大きく叫んだ。
「一体何があったんですか!教えて下さい!」
真実を追い求めるロゼリアに対して、伯爵の言葉を真実足り得ることを示すために。リナがある提案を行う。
「伯爵、その前に後で嘘だ真だと言い合いにならないように『忠誠の儀』を持って
語ることを約束してくれないでしょうか」
『忠誠の儀』とは自身の家の名誉をかけて王政に対して嘘偽り無く語ることを約束しする誓いであり、この宣誓を破り嘘を述べた場合は死罪もやむを得ない、王政に対する真実のみを語る宣誓である。
「解った、私ギルフォード・パーセイムは『忠誠の儀』をもって嘘偽り無く真実を語ることを約束しよう」
ギルフォード卿はロゼリアの目を見ながら静かに語りだした。
「今から二十年前、この領地は隣国との領土争い通称エクスデンス紛争により実質戦争状態だった」
「紛争は二年ほど続き終戦したが、各領地にも甚大な被害をもたらした、私は王政と各貴族と協力し戦後復興をおこっていたが、しばらくすると街の中に奇妙な出来ことが起きるようになった」
「最初は兵士や騎士など紛争にて現地に赴いた戦士たちを発端に、精神状態が異常に陥り廃人状態になるものが続出した」
「原因を調査すると正体不明の粉…人間が吸い込むと異常なほどの快楽を与える薬、しばらく服用を続けると中毒のように薬を求め始める、時には薬を買うために犯罪を行い、時には精神をやられ狂人となって人を襲う事もあった」
「我々はこれを魔に魅了される薬『魔薬』と呼んだ」
「魔薬は、この国全土にまで広がりを見せ、特に領地を収める貴族達にも広がっており国力の低下をもたらした、更に犯罪の広がりにより国内の治安も悪化し各地の復興が遅々として進まなくなっていた」
「そのため国王は、信頼できる貴族である私の父、デルハイム・パーセイムに魔薬組織壊滅と組織の首領捕縛を命令し、全力でその所在を追い求めてるよう指示した」
「私は当時騎士として参加しており魔薬組織に対して数年間にわたる調査を行った、
その結果人里離れた辺境の村フィオーラが生産拠点になっていることを突き止めた」
「その村は、表向きは薬草栽培で栄えているとされていたが、魔薬の元となる植物を裏で大量生産し、地下で生産拠点を作り巧妙に偽装していた」
「私は生産拠点を抑えるために、五百名の兵士を持って村を包囲し、首領捕縛作戦を指揮した」
「そして組織の首領を追い詰め、首領が誰かを突き止めた…それは貴方の母君である『アンナ・グレイシオス』…今はグレイスバーグその人だった」
ロゼリアは絶句した、自分の母が裏社会の首領だった犯罪者という事実に。
そして信じられないのか伯爵に対して思い出の母の姿を語った。
「そ、そんな…!母は、いつも優しく、とても気品のある女性でした!」
しかし伯爵は冷静にロゼリアの母の正体について調査済みなのか、どのような素性なのかを話した。
「表向きは商人の妻として気丈に振る舞っていた。だが裏では裏社会の首領だったと言うことだ」
伯爵はそこで言葉を切った、そして、続けて深く溜息をつき話を続けた。
「夕刻から始めた包囲作戦の結果、私は貴方の母君を離れの森の袋小路まで追い詰めた」
「私は彼女に、大人しく投降するように伝えたが、彼女は抵抗してきた、相手は強力な魔法使いでもあったのだ、お互い魔法による激しい戦いが繰り広げられた」
「戦いは苦戦をしいられた、だが戦いの最中に一瞬彼女の様子にスキが生まれた」
伯爵はロゼリアの方向を向き、先程の話から自身が推測した彼女の行動を語った。
「そう、恐らく自分の娘がその戦いを見ている事に気づいたのだ、私は彼女の動きを止めるため氷剣魔法にて足を狙い攻撃したが、彼女は魔法をお腹で受けたのだ」
「これは私の推測に過ぎないが、貴方の母君を恐らく自分の正体を娘に知られないようあえて自決したのであろう」
静かにそして全てを語り終えたように話を締めくくる。
「これが私が貴方の母親を殺してしまった事件の全容だ」
応接室には、伯爵の告白の重さだけが、圧倒的な沈黙として残された。
ロゼリアはその時思い出した、母が殺された際、母の元へ行こうとしたその時、突然背後から口を塞がれその場から誰かに連れ去られた。
自分を抱えた人物は全力で逃げでやがて家にたどり着いた、それは自分の家だった。
そう、連れ去った人物は父であった、父は母の死に触れず荷物をまとめるように言われ準備もそこそこに馬車に乗せられ家から逃げたのだ。
自身の過去の記憶と今の話を聞きロゼリアは全ての事実を知り無言になった、よほど衝撃を受けたのが見受けられる。
自身の母が実は裏社会を取り仕切った凶悪な犯罪者だった事を。
だが伯爵はその時にあった、もうひとつの事実についてロゼリアに語りはじめる。




