4.『案件1』魔法使いが暴走した結末
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昨日の冒険者騒動から日をまたぎ翌日タリスマンは通常どおり営業していた。
先日の喧騒から一転、本日はお客さんも殆ど無く静かに営業している。
その中、扉が開き来訪者が訪れた事を鐘の音が鳴り響く。
「いらっしゃいませ!」
アイリが来訪者に対して挨拶を返すと、現れたのは昨日の狩りで騒動を起こした、魔法使いレフィの姿だった
ただ、その表情は以前の不満そうな顔ではない、憑き物が落ちたように以前とは比べ物にならない清々しい表情であった。
その目元には弱冠の赤みを滲ませていた、恐らく昨日は泣き続けていたのであろう。
そしてとても落ち着いていた、これがレフィの本来の姿なのだ。
彼女は勇気を振り絞り店員の女性に対して話しかける。
「あの…店長さんいらっしゃいますか?」
言葉使いも先日の生意気な感じとは変わって大人しい口調になっていた。
アイリはその言葉を聞き奥にいる店長を呼び出しに行き連れてきた。
現れたリナに対して深々と頭を下げレフィが感謝の言葉を告げる。
「店長さん、あの…ありがとうございました!」
「あの時、お二人に助けてもらえなければ、みんなが大怪我を負って、私も再起不能になっていたと思います」
「ガイウスさん達にも会ってお礼と謝罪を伝えてきました、今までありがとうと」
その言葉を聞き、リナは相手の禊について素直に賛辞を述べた。
「自分の仕出かしたことを理解し、正しく謝罪するのは当たり前の行為だ、だけど逃げずにしっかりとそれが出来たことはとてもいいことだ」
「それで、レフィはこれからどうするんだ?」
静かにそして自分のこれからの目的を相手に伝えた。
「はい、国に…ベイネン村に帰ろうと思います」
「ベイネン村というと北のヴォルゼリア国領地か、しかしかなり遠くないか?女一人で帰るなら輸送の馬車で帰るしかないだろ、その費用はあるのか?」
「はい、昨日の討伐費用としてガイウスさんが馬車の費用をだしてくれました」
「本当はお断りしたかったけど、女一人で帰るには危険だからと言われて、私も新しい仲間を見つけて頑張って貰うよう伝えてきました」
「本当は冒険者を続けて、ガイウスさん達に対して贖罪も込めて恩を返したいでも、今の私では足手まといにしかならないですから…」
相手の決意を聞き、素直に聞き入るリナは意思の決意を再度確認する。
「じゃあ一つ聞く、お前は冒険者を続ける気はあるか?冒険者を続けると昨日みたいな危険な目にあう事もある、命を落とす可能性だってある、それでも続ける意思はあるのか」
レフィは天を見上げ少しだけ考えた。
まだしっかりとした考えはまとまっていないが素直な気持ちを吐露する。
「正直な気持ちはわかりません…でも受けた恩は返したい気持ちは本当です」
リナは続けて質問を重ねてる。
「じゃあもう一つ、魔法使いとして更なる高みを目指す志はあるか?」
レフィはその問いには迷いなく答えを返す。
「それは、あります」
相手の瞳から感じられる真剣さ、自身の志を受け取り、その信念が本物だとリナは理解した。
「わかった、アイリィ…あれを出してやれ」
「わかりました」
アイリは商品の棚から一冊の分厚い書物を取り出し、レフィの前に差し出す。
茶色くて少し古びた感じだが重厚な重みを感じる書物を手渡される。
「これは?」
突然に書物を渡され疑問を呈すレフィ、今渡したものが何であるかリナは解説した。
「それは、魔法の使い方を記した魔法の基礎練習に関する本だ、お前は魔法の基礎が全然できていなかった、恐らく独学で魔法を覚えたんだろう」
「だけど基礎が出来てないと魔法が育つ土壌はできない、だからその本を熟読して、修行しなおしてこい、そうだな…期限を決めないとダラダラやるから今から一年後だ、基礎を勉強して、成長した証を私に見せに来い」
昨日みせたリナの厳しさとは逆に自身が成長するように優しさを施してくれる相手の心遣いを感じて、レフィは書物を胸元に抱えながら大粒の涙をこぼす。
そして感謝の言葉を静かに告げた。
「ありがとう…ありがとうございます」
レフィは涙を拭い力強い感じを見せながら、リナに対して告げた。
「わかりました!一年後、成長した私をまた見せに来ます!」
相手の目を見据え、意思の強さを垣間見たリナは最後に激励した。
「ああ、頑張れよ」
レフィは踵を返し魔法店から出ていき、石畳の地面を一歩、また一歩と踏みしめて、歩み続けていく。
まるでこれからの未来を見据えるように真っ直ぐと迷いなく進んでいった。
静かになった店内で、アイリィが昨日の出来事について問いかけた。
「店長ちょっと聞いてもいいですか?」
「どうした?」
「昨日、ガイウスさんにレフィさんのリング・オブ・ウインドブレードが直撃時に、魔法が分散して威力が弱まってましたけど何かしてたんですか?」
「ああ、風魔法が当たると魔力が分散する呪符をガイウスの背中に貼っておいた、あれで怪我はかすり傷程度の軽症になったはずだ」
「でも師匠なら、アレくらいの魔法だったら効果すら打ち消せますよね?私でも防御魔法で防げる位のことは出来ましたが、何もしないようにいいました、魔法をあそこで当てさせたのは何か理由があったのですか?」
「それはな、仲間を攻撃したという事実がほしかったんだ、魔法を消したり防御したのでは、あの娘が自身がやらかした事に気づかない、それをわからせるためあえてそうしたんだ」
アイリィはリナの目的を聞いて素直に驚く、そこまで計算していたのかと。
「あともう一つ、グレートボアがあの子に追突しようとした瞬間、風の圧縮魔法で体を吹き飛ばしてましたよね」
「ああ、衝突の威力を相殺したんだ」
「グレートボアの追突であの娘に直撃したら肋骨骨折や内蔵破裂して死ぬ可能性もあったからな、死なせないようにするための措置だ、そのためにトラブル解決分の代金をもらったんだ、だからその分仕事しないとな」
「ああ!だからいつもより多く金額を貰っていたんですね!」
「お店の一日の休業費用と私とアイリィの派遣代諸々含んだ金額だ」
「でも、魔法を教えるだけだけではダメだったんですか?」
「あのパーティをみた時、何らかの問題を抱えてるのは目に見えていた」
「冒険者には危険がつきものだ、あんなふうに怪我を負ってそれでも続けることが出来る人間は一握りだ、あいつらはその意思の強さを見せた」
「だったらその意思を尊重して冒険者として更に強くなってもらうべきだ、彼らがいてこそ、うちの店の商売も成り立つし今後のリピーターとして来てもらえる可能性もある、更にうちの名声も高められる」
「だから依頼と共にそのトラブルを解決するべきだと感じた」
アイリィは驚きをもってリナの魔法屋としての商売を考える姿を見て素直に感動し、賛辞を述べる。
「相変わらず先見の明が凄いです、師匠…」
「魔法に関する相談事を解決する、それも『魔法屋タリスマン』の仕事だからな」
本日も、魔法屋タリスマンは変わらず営業を続けていた。




