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2 .『案件1』不揃い冒険者の魔法相談

この作品はカクヨム先行で公開している作品です。

カクヨムのページはこちらです。

https://kakuyomu.jp/works/822139839209446983

先程の喧騒から静かさを取り戻した魔法店タリスマンに均整の取れた四人の冒険者が訪れ、仲間に新しい魔法を伝授して欲しいと依頼を伝えてきた。


珍しい依頼を受け眼の前に対峙する相手に対して真意を問いただすため、あらためて店主が問いかける。


「魔法を教えて欲しいって、その魔法使いに?」


パーティの中で恐らくリーダーと思われる戦士は、自分の言葉に嘘偽りない事を表すよう静かに力強く答えた。


「ああ、そうだ」


相手の真意を聞き、リナは依頼主から魔法使いに視線を移す。

魔法使いと思われる人物は、店に入ってきた頃から不満そうな表情をしていた。

だが、商売と割り切って相手の身なりや装備に加え全体の雰囲気を見回す。


時間にしてほんの数秒だったがまるで相手の全てを理解したように大きく頷き、これからの魔法習得にかかる必要な事項について語りだす。


「魔法習得はいくつか方法あるが…そちらの魔法使いに習得させるには魔法契約での習得しかないな、それでいいか?」


魔法の習得方法には、いくつの手順がある。

実技で魔法を見せて本人に魔法を使わせて伝える『伝承型』

既に自身が習得した魔法を、触媒を使い体に覚え込ませる『魔法契約型』


あまり聞き慣れない言葉に戦士が改めて内容について質問してくる。


「魔法契約というのはあまり聞かない方法だがどのような方法だか教えてほしい」


リナは『魔法契約』について相手にわかるように端的に解説していく。


「なに簡単だよ、魔法の使い方をマナの触媒を使って体に覚えさせる技だ」


「そんなに時間はかからないが若干費用は高くなるな」


「どのくらいの費用が必要だろうか?」


「そうだな…」


リナは目を閉じ少し考える。

自分の頭の中で必要な費用を算出して目を開けて静かに金額を伝えた。


「ざっと費用は金貨十五枚ってとこだな」


習得にかかる費用を聞き、後方にいた銀髪の女性が提示されたあまりの金額の高さに驚いたように大声で叫ぶ


「ちょっとまって!それじゃあほぼ一月分の稼ぎがなくなるじゃないの!」


「なんでそんなに費用がかかるのよ!」


リナは驚き叫ぶ女性に視線を向けてその理由について説明を行う。


「この店で魔法を教えるって事は、私が作りあげた大事な魔法を教えるいわば秘伝を伝承する特別な依頼だ」


「私が伝承する魔法は相手の力量と、その人が習得出来るレベルを判断し使える魔法を選択する、そして即日で魔法が習得出来る特別なものだから基本時価だ、値段は私が決める」


「嫌なら他に行くか、自分で新たな魔法を習得するんだな」


説明を受けた銀髪の女性はそれでも納得できないように更に言葉を重ねてくる


「…だけど!」


言葉を続けようとした仲間を、戦士が左手を伸ばし静止する。

隣のレンジャーも肩を叩いて落ち着くように促す。

隣の二人をみつめ、首を横に振った戦士の姿をみて自身が吐き出そうとした言葉を飲み込む。


戦士はリナの方に体を向け、あらためて依頼を告げていく。


「仲間が強くなるためには仕方がない、頼めるか?」


「わかった、じゃあ契約成立!報酬は前金で頼む」


戦士は銀髪の女性を促し、背中の方に仕舞ってあった袋を取り出させた。

袋を手に受け取り中から金貨十五枚を取り出してカウンターの上に置く。


「アイリィ、会計して」


アイリィは金貨を手に取り金額を確認する。


「はい、確かに金貨十五枚受け取りました、受領書を発行しますか?」


相手は首を振り不要という意思を示す。


「…ところで名前を知らないと色々と話しづらいから、貴方達のメンバーの名を教えてもらえるか?」


戦士は静かに頷き自分たちの紹介を始めた。


「私がパーティリーダーで戦士の『ガイウス』だ」


「そして右にいる銀髪の女性は、ヒーラーの『フレン』」


「その隣はレンジャーの『フリッツ』」


「そして最後は魔法使いの『レフィ』だ」


全員の氏名を記憶に留めリナは相手に謝意を示す。


「ありがとう、わかった」


自身の手を胸に当て相手にあらためて紹介をした。


「私はこの魔法店タリスマンの店長兼マエストロ『アルテロ』の一番弟子リナリア・フローリアスだリナと呼んでくれていい、呼称は不要だ」


「私達も呼び捨てで構わない、よろしくな」


そう言いながらガイウスは右腕を差し出してきた、リナも席を立ち向かって右手を

差し出し相手の手を強く握り締め固い握手を交わす。


「じゃあ、そこの魔法使い…レフィだっけか、得意な属性はなんだ?」


入ってきたときから一言も喋らず、あいも変わらず不満そうな表情を見せながら自分の得意な属性が何であるか少し強めの口調で囁く。


「……風属性よ!」


相手の機嫌など関係ないように冷静に頷き言葉を続ける。


「わかった、…そうだな、では風の切断系魔法はどうだ?」


魔法の効果が理解できないガイウスが伝授される魔法について問いかける。


「それはどんなものだ」


「魔法は術者がイメージする事でどんな使いかたも出来るが、それだけでは戦士には解りにくいな…」


「簡単に説明すると魔力とマナを遣い圧縮した風の刃作り出す、その刃を相手に強力な風圧で飛ばし斬りつける魔法と言ったらわかってくれるか?」


「モブ相手に深い傷を与えて動きを止める、冒険者にはもってこいの魔法だ」


「よくわかった、では進めてくれ」


「今からちょっと準備するから、店の裏手にある広間に先に行っててくれ」


「ああ、では先に向かっている」


四人が扉を開け外に出たところで、リナは準備を始める。

店の片隅に置いてあった白柄にさすまたのよう形状をした杖を持ち、商品が並んでいる棚の中から緑色をした宝石のような形の魔法触媒を手にする。


そして、外に向かう前に小さな紙に近くの筆で何かを書き懐に忍ばせる。

扉を開け外に出るところで一瞬止まり、店にいるアイリへと声をかける。


「じゃあ店番たのむな」


「はい、わかりました。いってらっしゃい」


外に出て裏手に歩いて行くと先程の四人は店主が来るのを静かに待っていた。


「では、始めようか」


その言葉でガイウスと他の二人が静かに頷いた。


「レフィと言ったか、まずはそこの四角い土台の上に乗ってくれ」


魔法使いのレフィは相変わらず無言でスタスタと土台の上に立つ。

変わらず不機嫌な様子が垣間見える。


「では、手に持ってる杖を自身の前に立てて正面に持ち目を閉じて」


言われたとおりに杖を構えをそのまま瞼を閉じ立ちつくす。

リナは立っているレフィの足元に緑色に透き通った碁石のようなアイテムを配置して三歩ほど下がって自分の杖を構え相手に向ける。


「では、いくぞ」


その言葉と同時に石の上に丸い輪と三角形が組み合わさった魔法陣と共に、足元から緑色のオーラのような物体が現れレフィの全身を包みこむ。

そして魔法陣が一瞬光ったと思うと先程出現したもの全てが消失する


「終わったぞ、楽にしていい」


レフィは目を開け自分の体を見回すが何も変わったような感じは見えない。

だが何か体の中で変化したような違和感を感じ取ってはいた。


ほんの数秒で終わった魔法伝承についてヒーラーのフレンが疑問を呈す。


「え、これでもう終わりなの?こんな事で金貨十五枚なの!?」


「時間と費用は比例しない。これで終わりだ」


「詠唱も何もなかったけど、本当にもう出来たの?」


次々と問われる疑問にリナは力強くそして起きた事象を解説する。


「魔法なら使ったさ、魔法陣から魔法が発動するの見えただろ?」


「でも魔法を使う時に何も唱えなかったじゃない」


「私に魔法の詠唱は必要ない」


「それって…いわゆる無詠唱魔法って事!?」


「違う、無詠唱魔法ではない」


今まで見たこともなく自分に理解できない魔法の発動方法について、必死に頭の中で理解しようとするが疑問だらけのフレンに対して無詠唱魔法と自分の魔法の違いを細かく説明を始める。


「まあ知らないなら私の使う魔法について説明してやろう」


「無詠唱魔法は魔法発動時の事前詠唱を短縮しているので、詠唱魔法より早く打ち出す事が出来る、それは解るな?」


「…ええ」


「でも、実際には詠唱がないだけで、魔力とマナの収束、魔法の具現化、打ち出しの動作を経て魔法を発動させる、という事は魔法を繰り出すまでに僅かな時間がかかる、それがいわゆる無詠唱魔法だ」


「だが、私が使う魔法はそれら全てを短縮している、似て非なるものだ、私の魔法を打ち出す速度は特別な魔法を除き一瞬だ、無詠唱より遥かに早い」


「魔法の発動速度を究極まで高めるには、魔力とマナの流れを体内で常にコントロールし、魔法の構築を瞬間的に済ませ即時に打ち出す」


「この動作が出来てはじめてマエストロと呼ばれる人+-たちの力に匹敵するレベルに到達できる、理解してくれたか?」


説明を受けて自身の前にいる魔法使いが恐ろしい程の卓越した魔法技術を持っている事を理解できたフレンは、驚きを隠し切れず素直に相手へと惨事を述べる。


「…半信半疑だったけど、それを聞いて理解したわ、さすがマエストロの弟子という事ね…」


二人の会話が一息付いた後に魔法使いのレフィがリナに向かって問いかけた。


「…私は呪文詠唱はどうすればいいの?」


相手を見ると習得した魔法を今すぐ使用してみたい衝動が垣間見える。


「今から言う詠唱を杖を構えて唱えてみろ、そこの藁筒を使って試すといい」


すぐ近くに藁を束ねて人と同じくらい大きさを見据えた練習用藁筒が立ててある。

リナは、その対象指差し一瞬考えて詠唱の呪文を伝える。


『世界を覆う風の精霊よ、我が意思と魔力と共に刃となれ。 空を裂き触れる物を全てを分け隔てよ! 【輪の風刃リング・オブ・ウインドブレード!】』


レフィが杖を構えて近くに立ててあった藁筒対して杖を構える


「世界を覆う風の精霊よ、我が意思と魔力と共に刃となれ。 空を裂き触れる物を全てを分け隔てよ… 」


詠唱を始めると自身の眼の前に円月輪のような形をした緑色の魔法が現れ、更に発射の意思を魔法名称で叫ぶ。


「輪の風刃リング・オブ・ウインドブレード!」


刃が対象に向かって勢いよく飛翔し藁筒の中心を真っ二つに切り裂き地に落下した。

後ろで見ていた仲間も魔法の威力を見て弱冠の驚きを見せながら魔法の威力に納得したように頷いていた。


魔法の威力が気になるのかレフィは藁筒へと歩き落下した破片を細かくみている。

その切断面をみながら、先程まで不機嫌だった表情から僅かに口元の広角があがるのをリナは見逃さなかった


相手の仕草を見てリナはこれから恐らく起きるであろう出来事を予感していた。


「(概ね予想は当たりそうだな)」


魔法の試し打ちが終わったところでガイウスに向かって今後の予定を確認する。


「ところで狩りは今から行くのか?」


ガイウスは軽く顔を振り、狩りの予定について答える。


「いや、今日は運び屋の手配が出来なかった、沢山の冒険者が依頼したようでな、明日の枠を予約したので明日向かう予定だ」


運び屋とは、モンスター等を討伐した際に街まで運んでくれる輸送屋だ。

先程の店頭の喧騒から今日は沢山の冒険者たちが依頼しているようで恐らく枠がないのであろう。


「目的はグレートボアか?」


「ああ、ギルドのグレートボア討伐依頼を既に受けている、幸い狩りつくせないくらいの獲物がいるようだから、明日でも充分大丈夫だろう」


「明日は、いつ頃出発の予定だ?」


「奴らの動きが鈍い早朝を予定している」


相手の目的を確認したリナはガイウスに対して歩いて向かい激励するように軽く背中を叩く。


「わかった、じゃあ頑張ってな!」


叩かれた背中には何かの紙が貼られており、そして背中の紙は薄くなり消えた。


「じゃあ、お店に戻るよ。何かあったらまた来てくれ」


「わかった、すまないな」


手のひらをクルクルさせながら別れの挨拶をする。

リナはガイウス達のパーティと別れ、タリスマンへ帰宅した。

店に戻ったリナに対して朝の売上を計算していたアイリィが自身が感じた疑問をぶつけてきた。


「おかえりなさい、店長ちょっといいですか?」


「なんだ?」


「さっき魔法使いの方に教えたのは輪の風刀 (リング・オブ・ウインドブレード) ですよね」


「そうだな」


「初心者から中級者まで使えるそれくらいの魔法だったら、触媒の消費も少ないし、例え伝承型でもいつもの相場だったら金貨五枚くらいじゃないですか?」


「なぜ、そんなに費用を取るか疑問だって事?」


アイリィは大きく何度もうなずく。

疑問を浮かべる眼の前の少女に対してリナは逆に質問を返す。


「じゃあ、聞くがさっきのパーティーを見てどう思った?素直に感想を言ってくれ」


アイリィは少し上を向き先程の冒険者達を思い出し自身が感じた事を伝えた。


「ちょっと変なパーティでしたよね」


「変って何か気づいたか」


「戦士、レンジャー、ヒーラーの三人は熟練者パーティって感じでしたけど、魔法使いだけが変な違和感を感じました、長く冒険してるようだけど合ってない違和感というか…」


その言葉を聞いてリナは薄っすらを笑みを浮かべ相手に賛辞を送る。


「ほほう、アイリィもなかなかよく解るようになってきたな」


「違和感の正体までは、読みきれなかったですけど……」


「いや、そこに気づいただけでもいい読みしてるよ、さすが私の妹だ」


アイリィは褒められたことを嬉しく思い、照れくさいのか自身の手を頭に乗せて頭を掻いていた。


「まあ、明日は休みにしてちょっと外に出るから違和感の正体はその時にわかるさ、アイリィも一緒に行くぞ」


突然の休業宣言に驚きアイリィは疑問を浮かべ聞き返した。


「え?臨時休業するんですか?」


「ああ、スクロール欲しかった人たちにはだいたい行き渡っただろうし、休んでも問題ないだろ」


リナは予感していた、これから起きるであろう先程の冒険者達の問題を。


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