22. 『案件5』 珍しい魔法杖の修理の行方
都市国家の武器屋ランクルで魔法使いの杖修理依頼を受けたが法外な修理金額のため冒険者達が諦めようとしたその時、リナがある取引を持ちかけた。
「その壊れた杖、私が買い取ろうか?」
魔法使いは突然の申し出に若干困惑気味に問いかける。
「買い取る?この壊れた杖を…一体幾らで?」
こういった時、どのように取引を行えばいいか、魔法店の店主ととして知っている、相手の妥協点と有無を言わせない交渉術を見せるが彼女には気がかりな点があった。
「そうだな…復元に要する金額は最低四千だが、戻せなければ使えない、だから杖で生きている部品を取り出して使えるかどうかを調べなければならない、査定の為に二日程時間を貰うが構わないか?状態が良ければ金貨ニ千程度、断るなら無しだ」
魔法使いは悩んでいる、破損した杖を持ち帰りどこかで修理するか、それとも良い金額を手に入れて新しい杖を買うか、だが他メンバーの進言により決めたようだ。
「わかった、二日だな?待とう」
「よし、では預かろう!マスター武器預かりしてもらっていいか?」
「ああ、コレット保管庫で預かっておけ」
「了解です!マスター!」
武器を預かることになり冒険者パーティは店を出て外に去っていく。
店内に残ったリナに対してマスターのヴォルデムが問いかけてきた。
「リナ、どうしたんだ?お前ならこういう時即決で決めるだろ、相手に猶予持たせたのは何故だ?」
「ちょっとこの杖で気になることがあってね」
「なんだ気になることって?」
「これは、もしかすると聖遺物の可能性がある」
「聖遺物だと!?神々が残したとされる伝説の武器か?」
聖遺物とは、過去の神話で伝えられる伝説の十三武器である。
突如地上に降臨し強大な力により世界崩壊を目論む破壊神により人類は未曾有の危機に晒された、神は人類を守るため神人と呼ばれる十三人の英雄を召喚し、激闘の上世界を救った。
その時に神人が使用した武器は聖遺物として世界に封印されたのだ。
「ああ、マスターも感じたろ?この世界ではあり得ない複雑な構造の作り」
「そうだが、ワシなら部材さえあれば再現は出来るぞ?」
「マスターの技術力は信頼してるが、これは復元したらダメだ」
「どういう事だ?」
「入手先が気になるって事さ」
「そういやダンジョンで手に入れたとか言っていたが胡散臭い話だったな」
「だろう?聖遺物は強力な封印がかかっていて簡単には解除できない、過去に一度だけ封印解除の場所に立ち会ったがマエストロクラスの魔法使いで数年から数十年はかかる強力な結界魔法が施されていた、それをあんな冒険者に解除出来るわけがない」
「という事は可能性は絞られるな、普通に買えるような資金を持っている様子は感じられなかった、だとすると…なるほど盗品という事か」
「さすがマスターだ、洞察力鋭いな」
「何年生きてると思ってるんだ、リナよりも相当年上なのは知ってるだろ」
「フフッ、そうだね念の為だけど対策はよろしくね」
「ああ、杖は絶対盗まれないように管理しておく、調べの方は任せたぞ」
「乗りかかった船だ、キッチリと片付けるよ」
ランクルを出たリナは、聖遺物の所在について調査するため都市国家の裏手にある情報屋へと向かう。いつもの来訪を知らせる三回ノックの合図とともに入口のカギが外され中へと入る。
「やあ、リナ…最近多いね今日は何用だい?」
「今回は余りお金にならない話で申し訳ないんだが…ちょっと知っているかだけの確認だ」
「なんだい、金にならない依頼ってあまり好ましくないねえ」
「すまない、早速だがここ最近でどこかから聖遺物が盗まれたって情報はないか?」
「聖遺物?いやそんな情報は入れてないけど、どうしたんだい?」
「武器屋ランクルに聖遺物らしき武器の修理が持ち込まれてね、入手先が怪しいんでどこからか盗まれていないか調べに来たんだ」
「生憎だがそんな情報は入ってないね、本格的に調べるかい?」
「本気で調べたら結構金かかるだろ…今回うちは報酬が殆ど望めないし、下手すりゃマイナスになるから経費かけられないんだよ」
「そうかい…ああ、そう言えばニ年ほど前に東のイグロニスで何か王家の秘宝が盗まれたって騒動が起きてたのは聞いてるよ、もしかしてそれかい?」
「王家の秘宝?それは何だか詳しく知ってるか?」
「確か魔法の杖だったか、未だに見つかってないらしいが」
「それだ!シルフィありがとう!」
「あいよ、今度は金になる話持ってきてくれよ」
「ご期待に添えるよう善処するよ、それじゃあ!」
情報屋を後にしたリナは、その足で王城方面へと向かい騎士団長に会いに向かう。
騎士団詰め所に到着して団長を呼び出して貰い、面会まで待つことにした。
しばらくすると奥から見知った顔の人物がこちらに歩いて来てくれたので挨拶する。
「よう、レオ来てくれたか」
「リナさん…今訓練中だったんだよ、突然呼び出しって何用なんだい?」
「ちょっと捕物の話があってな、騎士団の力を貸して欲しいんだよ」
「捕物だって!?一体何があったんだ」
「簡単に説明するとだな、ランクルに冒険者達からとある武器の修理依頼が持ち込まれたんだがどうもその武器がイグロニス王家の盗品である可能性がある」
「どうしてそんな事がわかるんだ、ただの武器じゃないのか?」
「滅多に見れないような物凄い武器だったのでピンと来たんだ、普通の冒険者では手に入れられないような代物で恐らくこれは聖遺物だと核心した」
「聖遺物だって!?あの世界に十三しかない伝説の武器か」
「ああ、聖遺物なんて普通の冒険者が手に入れる事は出来ない、ということは盗品に違いないと思ってな、シルフィと話してイグロニクス王家で魔法の杖が盗まれた情報を仕入れてきた裏付けは大体済ませたよ」
「他国王家の盗品か…それはこちらも動くしか無いな、いつ決行するんだ?」
「期限は二日後だ、相手に気取られないように周囲に騎士達を配置してもらえるか?突入の合図はコレットにでも出させるから」
「わかった、手配しておくよ。しかしどうやって王家の秘宝を手に入れたんだろうな?警備や保護だって厳重だったろうに」
「それは捕まえてから調べるさ、じゃあ手筈は頼んだよ!また二日後な」
「任せておいてくれ、こちらの手配は済ませておくよ」
手筈を整えたのでランクルに一旦戻って店主と打ち合わせするため戻ろうかとリナが思ったところ突然一人の騎士が詰め所に向かって走って団長へと報告を伝える。
「団長、報告します!先程東門の所に突然女性の魔族が現れて中に入らせてくれと嘆願されました!なんでもリナ殿の知り合いと言っております」
リナは騎士の話を聞いてピンと来た、ディープダンジョンで出会った魔族の女性ヴェルディムが来たんだと。
長期間悩むかと考えていたが以外と早い来訪だったなと心に感じていた。
「リナさん、何か聞いているかい?」
「ああ、その人は私の知り合いだ。すまないが案内してくれないか?」
「承知しました!ではこちらにどうぞ」
リナは、都市国家で働いてくれそうな魔族と面会するため東門に向かい歩き出した。




