21. 『案件5』 武器屋『ランクル』の依頼
都市国家で様々な武器制作を一手に担う店舗が存在する。
武器屋の名前は『ランクル』、そこに四人の冒険者が訪れた。
パーティーの装備から中々の手練であることが感じられる。
戦士にレンジャー、魔法使いに僧侶の四人組で、その内の一人、魔法使いが依頼を伝えてきた。
「すまないがこの魔法杖の修理をお願いできないか?」
魔法使いがカウンターに置いた杖を見て、店員であるドワーフ族のコレットは、普通の杖ではない事を直ぐに察した。
自分では判断出来ないため裏にいるマスターに確認してもらうべく大声で呼び出す。
「マスター!ちょっとヤバイものが修理依頼で来たので見てもらえませんか?」
彼女の声を聞き、奥にいたマスターは、武器を精錬していたハンマーを置き、煤で汚れた太い指先で鼻頭を掻きながら、店頭へ出てきた。
「なんだぁ?ヤバイものって」
コレットはカウンターに置かれた杖を指さしマスターと呼ばれる人物に伝える。
「コレですよこれ!ヤバイっす!普通の魔法杖じゃないですよ!」
マスターと呼ばれる人物は目前の品を凝視した。武器屋として働き始め長年、数多の名剣や魔槍、更に魔法の杖を作り上げてきた彼の眼識をもってしても、この杖の正体は謎だった。白く長い杖が中心から柄が折れていて破損している。
杖の先端は花の蕾のような形状に複数の宝石で飾られている。
一般的な魔法杖ではこのようなモノはありえない、そう思った店主はポツリと呟いた。
「……こいつは、ただの『魔法杖』じゃねえな」
店主は、カウンター越しに立つコレットに鋭い声を飛ばし命令した。
「コレット!魔法店のリナを呼んでこい!今直ぐだ!」
突然の命令に、コレットは肩を跳ねさせた驚き指示に従い返事を出す。
「えっ、あっはい! マスター!行ってきます」
コレットは事の重大さを察し、慌ててエプロンを脱ぎ捨てると、表の扉を勢いよく開けて都市国家の魔法店へと駆け出していった。
マスターは再び杖に視線を戻し、腕組みをし依頼人に尋ねた。
「さて……客人。魔法店の主が来るまで、あんたにはたっぷり話を聞かせてもらうぜ、こんな代物は普通の武器店で売っているような代物ではない、こいつをどこで入手した!?」
まるで恫喝するようなマスターの声に依頼人の魔法使いは若干怯え気味に答えた。
あるダンジョンで入手した一品だと言うことを語りだす。
──場所は替わりタリスマン近郊
全力ダッシュで走ってきたコレットはタリスマンの扉を勢いよく開き店の中にいる人物に呼びかけた。
「店長さんいるかい!?」
「あら、コレットさんいらっしゃい。店長ですね、すぐ呼んできます」
アイリィは店の裏に向かい、ドワーフのコレットが呼んでいることを伝えた。
話を聞いたリナは店頭に出てきて、焦っている相手に要件を確認する。
「よう、コレットどうしたんだ?」
「うちのマスターがリナを呼んでこいって言われたので連れに来た、多分修理に持ち込まれた杖の件について聞きたいんだと思うよ」
「持ち込まれた杖?なんだそれ」
「とにかくヤバイ一品だ、わたしでもそれはわかる、だから来てくれない?」
「わかった、一緒にいくよ、アイリィ店番頼むな」
「わかりました、いってらっしゃい」
コレットに連れられリナは武器屋に急いで向かう。
彼女はドワーフ族だが都市国家を日常的に走り回って材料を仕入れたりしているので、メチャクチャ脚が速いのである。
道は解っているので後ろから急いでリナは追いかける。
武器屋の扉を勢いよく開き自身が店の主に大声で呼びかける。
「マスター!連れてきたよ!」
「コレット…お前足早すぎるって…」
息を切らしながら武器屋に到着したリナを見た店長が単刀直入に要件を伝えてくる。
「よお、リナ来たか!ちょっとコイツ見てくれ、俺でも解らない一品だ」
待っていたのは武器屋ランクルのマスターである『ヴォルデム・ゼフィリウム』
頭にタオルを巻き付けているので見た目では分からないが、銀髪の髪に上に尖った耳を持ち鋭い目つきに意外と女性にモテそうな顔、鍛冶屋で鍛え上げた全身の筋肉からとても魔法が得意な人種には見えないが彼こそは都市国家に由一存在しているニ千年の時を生きる魔族、そして今はリナしか知らないが元魔王と呼ばれていた人物である。
リナはカウンターの上に置かれた魔法の杖をマジマジと見つめる。
「確かにこの杖ヤバイな、柄の中心に暗黒結晶石が埋め込まれてる…そして花蕾のように見える先端には、属性魔晶石が四つもはめ込まれていて、先端は魔晶石で出力を強化しているのか…しかも杖全体の継ぎ目が無いワンオフで作った一品だな、私も始めてみたよこんな一品は」
「だろう?で、魔法部材の方はお前の得意分野だろ、材料費でいくら掛かる?」
「軽く見積もって金貨四千からってところか…」
リナの言葉を聞いて依頼主の魔法使いが驚きの声を出す。
「き、ききき…金貨四千枚だって!?なんでそんな莫大な修理費がかかるんだ!!」
相手の動揺など全く気にもせず、リナは冷静に相手を問い詰める。
「どこで入手したのかは知らないが、こんな杖を日常使いしてたなんて知識がなさすぎるぞ、見た感じそれなりのベテラン魔法使いのようだが、この杖を使って魔法を使った時に違和感を感じなかったのか?」
「い、違和感って…この杖を使うと魔法の威力がかなり強くなるなとは思ってましたけど…」
リナは相手の言葉を聞いて大きいため息を付きながら杖の構成を語り始める。
「まず杖の柄に使われている暗黒結晶石、これは暗黒石という魔力を純度99.9%で伝えることが出来る幻の鉱石だ、しかもこんな長さを作れるのは相当な巨大な石が必要で、材料費だけで最低でも金貨千五百枚は下らない、加工費も含めるとプラス二百枚ってところだ」
「こ…ここだけで金貨千七百枚…?」
「そして杖の先に埋め込まれてる宝石、火、水、土、風の四属性分の属性魔晶石、これは魔晶石に属性の力を長年蓄積させて作る物だが、一個作るのに百年近くかかるから、各石毎に金貨四百枚で合計千六百枚だ」
「あと、七百枚の費用は…?」
「この花の蕾みたいな先端の構造、恐らく各属性ごとに魔法が先端の魔晶石に伝える構造になっていると予想する、この部分の解析と分解、ワンオフで作られたものなので調べるのは相当困難だ、だから手数料として幅に開きがある、どうだわかったか?」
「もしかして、この杖見つけた時点で売ったほうがよかったのか?」
「ああ、今頃大金持ちになってただろうなあ」
魔法使いは地面に手をついて落ち込んでいる。
高額な杖を軽く扱って破損させた自分の所業について反省しているのだろう。
そんな二人のやり取りを見ていた武器屋のマスターは、話を聞いて修理続行の意思を確認してきた。
「で、どうするよ?客人、このまま修理に出すか?それとも持ち帰るか」
魔法使いは参ったような表情を見せながら諦め気味に答えた。
「金貨四千枚なんて出せませんよ…持ち帰ります」
持ち帰ろうとしたところでリナが魔法使いを静止した。
「まあ、ちょっといい話があるんだ、一つ取引といこうじゃないか」
リナは不敵な笑みを浮かべ、魔法使いと杖の件について交渉を開始した。
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