20.『案件4』都市国家への報告、見え隠れする思惑
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魔晶石採掘場からカルドラフに帰ったリナはディープダンジョンにて発生した出来事の顛末について報告するべく王城に向かう事にした。
アイリィには、夕食の用意をするため先に店に戻ってもらっている間に、簡単に報告するだけで終わるだろうと考えていた。
その足でリナは城で待機していたレオニス騎士団長をみつけ話しかけた。
「よう!レオ戻ったぞ」
「リナさん!守備はどうでしたか?」
「ああ、一応対策は出来たと思う」
「ありがとう、そうだ国王と大臣に報告するので一緒に来てもらえるか?」
「そこまで大事にすることか?」
「結構大事になっていたからな、難しかったら騎士団が出る事も検討していたから無事終わってよかったよ」
レオと軽く談笑しながら玉座の間に通されたリナは、カルドラフ国王とアバイア大臣と面会した。そこでリナはディープダンジョンにで起きた出来事と戦いの顛末も含め詳細に報告し全てを伝えてた。
「千年前から住み着いていた魔族の防衛対策に作られた巨兵か…」
国王は奥地で発生した出来事に驚いていた。
にわかに信じがたいような話ではあるからだ。
王族に対して敬意を持って跪いてリナは報告していた。
こういった公の場で切り替えが出来るのは店主としての彼女の振る舞いである。
「はい、恐らくカルドラフが建国されるよりかなり前から居を構えていたのではないかと思います」
続けて大臣が問いかけてきた。
「それで、もう採掘場に脅威はなくなったのか?」
「はい、巨兵がいる部屋は閉じられました、人が立ち入る事は出来なくなっています、あとは侵入禁止の看板をかけるだけでよいかと存じます」
「よくやった、リナリアよ。お主に依頼したのは正解だったぞ」
「はい、お褒めの言葉ありがとうございます」
大臣と会話の間に国王が入り、リナへ疑問を問いかけてきた。
「ところでリナリアよ、一つ尋ねたい事がある」
「なんでしょうか?」
「アルテロ殿の行方は分かっていないのか?」
「はい、師匠は生きてはいるようですが、行方は相変わらず不明です、ただ都市国家を守る防御結界は私が引き続き管理していますので当面の問題はございません」
「そうか…アルテロ殿は国の要でもある、マエストロが存在する事で他国に対する抑止力ともなるのだ、お主の力を信じていないわけではないが…やはり彼女の存在は大きいのだ、このまま平穏であればよいのだが…」
国王は明らかに師匠がいない事で何か不安になっているように感じられた。
改めて国内情勢の不安点について確認するべく問いかけてみた。
「何か問題でも起きているのでしょうか?」
「いや、今のところ何か起きているわけではないが…もしかしたら、今後あらためて依頼するかもしれん、今日はもう下がってよいぞ」
「わかりました、ではこれで失礼させていただきます」
リナは立ち上がり国王へと挨拶を交わし玉座より立ち去った。
彼女が立ち去った後に国王と大臣が先程の件について話し合っていた。
「国王様…あの件話さなくてもよいのですか?」
「ああ、まだ証拠が確定したわけではないしな、引き続き動向を監視してくれるか」
「解りました、監視体制を厳しくさせていただきます」
リナは、今日久しぶりに面会した国王の態度について帰路につく中で考えていた。
(国王様の態度…何か起きてるのか?今のところ脅威はないようだが、師匠がいないと対処出来ないような大きな出来事が裏で動いているのか?少し情報屋で探ってみるか)
都市国家に何らかの問題が起きてるのか、リナはタリスマンへは戻らず情報屋の方に足を向けた。
いつものよう裏通りに向かい情報屋の扉を暗号とした合図でノックする。
中からロックを開けてもらい久しぶりに情報屋のシルフィと顔をあわせる・
「ああ、リナ今日はどうしたんだい?」
リナは単刀直入に今日起きた出来事について確認してみた。
「シルフィ、単刀直入に聞くけどここ最近都市国家できな臭い出来事が起きてるのか?」
「どうしてそう思った?」
「今日久しぶりに国王様に会ったんだ、そこで師匠の行方を非常に気にしていた、都市国家が平和なら別に不在でも問題ないだろ、少しいつもと違う感じがしたんだ」
シルフィは手に持ったキセルからタバコの煙をふかしゆっくりと答えてきた。
「第一王子の事は覚えてるかい?」
第一王子とは『デイリック・エイルフォード』の事だ。
国王の息子ということで都市国家で放蕩の限りを尽くし、数々の不法行為や不正な蓄財を行っていたため国王に勘当を言い渡され辺境の領地に追いやられた人物だ。
「ああ、覚えてるよ、それがどうしたんだ」
「まだアタシのところでも詳細は掴みきれてないんだが、なんだか王子周辺で不穏な動きがあってねえ」
「不穏な動きってなんだ?また国の金でも盗もうとしてるのか」
「いや、王子がいる辺境の領地にストラグニル国の商人が頻繁に出入りして物資を搬入しているんだ、そこで大きな倉庫を作って何かやってるみたいなんだ、だが警備が厳重で何をやってるのか掴めてないんだ」
「つまり王子が何か企んで準備してる可能性があると言う事か、でもそれが都市国家に関係あるのか?」
「そこだよ…都市国家を狙うにしても絶対防御結界もあるし、お前もマエストロ級の魔法が使えるのは国の要人なら殆ど知ってる、クーデターとか狙って大量の兵士で攻めてきてもお前なら躊躇無く片付けるだろから、まず成功率は非常に低い。それを踏まえて何か考えて動いてるってことだ」
「そうか、ありがとうな…こちらもちょっと別ルートで探ってみることにするよ」
「あいよ、うちも都市国家が潰れたりしたら商売上がったりだからね、何か解ったら伝えに行くわ」
リナは情報屋を後にして都市国家の今後起きる事について更に考えていた。
(国王が師匠の帰りを気にしていたのはこの件か、だけど普通の軍勢だったら自分一人でも対処できる、それ以上の可能性があるって事か、まさかマエストロが攻めてくることがあるとも思えないが…)
「ストラグニル国家の商人とか言ってたな…ロゼリアのところはまだ引き継ぎで大変だろうし完全には動き出してないだろう、恐らく他の商人だろうが、時間が出来たらもう一度お嬢様に会いに行くか…」
リナはタリスマンに戻り、アイリィが用意してくれた夕食を食べ、西の国に向かう事を視野に入れて今後のスケジュールを検討した。
これが都市国家に起きる争乱の序章とは誰も考えてはいなかった。




