19.『案件4』謎の人物、その目的とリナの意外な一面
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謎のダンジョン奥地で遭遇した巨兵を苦戦しながら倒したリナとアイリィの二人は奥の部屋から出てきた魔族がゴーレムを倒したことに称賛を示した。
『魔族』とはこの世界の太古から生きる少数民族で今では殆ど見られない種族だ。
見た目は人と大きな違いがないが特徴的なのは暗い場所でも周囲を見渡せる細く長い瞳孔を持ち、耳の形がエルフのように大きい、ただ魔族は耳が上に伸びている。
そして魔族はエルフと同様に寿命がほぼ無いに等しい、更に魔法は元々魔族のみが伝承し使えていた技術であった。過去のある出来事で人に魔法の力が伝わり、様々な人達が魔法を使えるようになったのが現在の魔法技術である。
眼の前の人物は白銀の短い髪で、神話から抜け出してきたような幻想な姿をしていた。黒を基調とした整った装束に身を包み、足元はズボンのような白い服に金の装飾が目立つ長めのブーツを履いている。そして体のラインから恐らく女性の魔族だと思われる。
「それで…こんな所になんの用だい?」
眼の前の人物が呟いた声は、ゴーレムを倒されたことに対する悔しさも滲ませず、二人がここに来た目的を尋ねてきた。
「あなたの姿から魔族と見えるが何故こんな所に?」
「質問に質問で返さないでくれ。先に問いかけたのはこちらだ、まずは答えを聞こうか」
リナは相手から相当な魔力があることは理解した。
ただ明確な殺意は今のところ感じられない、ここは相手の言葉に乗ってみることにした。
「まず、一応自己紹介からしておこう、私はエルフ族のリナリア・フローリアスだ、リナと呼んでくれていい、そしてこちらにいるのは私の妹分のアイリィだ」
「ほほう、ならこちらも名乗らないとな私の名は『ヴェルディム・バロウリウム』だ、それで改めて聞くがここに来た目的は?」
リナはウソや偽りは見抜かれると思いここに来た目的を素直に話す。
「まずこちらの近くの坑道は私が所属する国が魔晶石の採掘場として利用していた、そんな中こちらの洞窟に突き当り、奥に進んだところでそちらのゴーレムに遭遇し何名かが負傷して私たちに討伐依頼が舞い込んできたんだ」
相手は腕を組み静かに今の目的について更に問いかけてきた。
「事前情報から魔法が効きにくい相手だという情報は得ていなかったのか?」
「得ていましたよ、でも私の国で強い力を持っているのは私とアイリィだけだ、状況的に不利である事は理解していたが討伐依頼を断れずここに来たと言うわけだ」
「まあ、実際にゴーレムは倒されたからな確かに二人はかなり強いんだろう、なる程な言葉には真実性がある、それでこれからどうするんだ?」
リナは対峙した魔族との会話の中でお互いの妥協点を見出すため問いかけた。
「私たちの目的はあくまでゴーレムの討伐依頼で目的はほぼ達成している、あとはソイツが動かなければ問題はないが…一つ質問していいだろうか?」
「なんだい?討伐した報酬として特別に聞いてあげるよ」
「このゴーレムは貴方が作ったのか?今まで見たことがない種類だったが」
「ああ、コイツはこの場所を守るための護衛役として私が作ったんだ。私は色んな物を作る研究が好きでねえ、このゴーレムを作るのに二百年程かかったよ」
「こんな自動で防衛するゴーレムを貴方一人で作り上げたのか?そんな過去の技術などがあったのか?」
「なんだか質問攻めだねえ…私たち魔族は寿命が無いに等しい、エルフの君だって似たようなもんだろう?時間は無限にある、魔族がバラバラになってからここにたどり着いた私はここに住居を作って千年近くずっと色々な研究に没頭していた集大成の一つだよこれは」
「そうか…それなら」
リナは相手の言葉を聞き、新しいものを生み出す研究に没頭する相手を見てある衝動が抑えられなくなった、彼女は足早に相手へと近づいていった。
「お、なんだい?やる気かい」
戦うかと思ったリナはヴェルディムの両手をしっかりと握りキラキラとした目を輝かせながら突然相手に対して早口でまくし立てた。
「なあ!うちの都市国家に来て新しいアイテムや道具を作って商売してみないか!?まずはお試しでもいい、就職先も探すし困ったことがあれば手助けする。貴方の力はうちの国でこそ活かすことが出来る!ほんのちょっとだけでもいいから来てくれないか!ねえ!お願いだ!ぜひ頼むから来てくれ!うんと言ってくれるまでこの手は話さないぞ!さあ!答えを聞かせてくれ」
リナが余りの剣幕で迫ってきたので相手は顔が引きつっていた。
その状況を見てアイリィが珍しくツッコんできた。
「師匠…その方めちゃくちゃ引いてますよ?」
アイリィの冷静な指摘にハッと気付いたリナは咳払いをして改めて意思を確認した見た。
「どうだろうか?単刀直入に言う私たちの国に来て商売をしてみないか?」
しかし、その言葉を聞いて相手は険しい顔をしながら答えた。
「魔族の私が人間たちの国に行って商売だと?冗談は休み休みに言ってくれないか?私は人から忌み嫌われる魔族だぞ?」
リナは相手の立場を尊重しながら前向きな提案を示す。
「ここに何千年も引き籠もって研究したって、初戦自己満足に過ぎない。だが貴方の技術力は外に出てその力を活かす事が最善だと思うんだ」
「それと私がいるカルドラフ商業都市国家は、種族に関係なく国と臣民の繁栄を目的とした面白い国で、それに一人だが、魔族の人も実際に働いている」
「なんだと?魔族が実際に働いていると言うのか?奴隷としてか?」
「いや、その魔族は店を持っていてそこの主人だ、もちろん最初はどこかの店に入ってもらい実績を積んでもらう必要がある、ある程度稼げるようになったら独立してもいい」
「本当にそんな美味い話があるのか?なんでただの冒険者がそんな話を持ってくる?私を謀ったらタダじゃすまないぞ」
そんな中様子を見ていたアイリィが突如として会話に割り込んできた。
「ヴェルディム様、私と師匠はカルドラフで魔法店をやっています、ここでの討伐依頼はあくまで臨時のものです、本来は魔法店でアイテムを売ったり魔法の相談を請け負って商売を行っています。師匠の言葉は真実である事は私も保証します」
「私の技術を使って商売か…」
長年生き続けて来た相手はこちらからの提案を素直に受けるか、二人からの言葉を聞き相手は考えているようだ。
「もちろん最初はお試しでいいし、気に入らなければ出ていけばいい」
「少し考えさせてくれ」
リナは相手の意思を出来るだけ尊重し、相手がこちらに来てくれるように出来る限りの持て成しを考えながら簡潔に伝えた。
「わかった、答えは急いでいない。もしカルドラフに来ることがあったら門番の人間に魔法店のリナから紹介を受けて来たと伝えてくれ、それで私に確認が来るはずだ」
「わかったもしそちらに向かう事があったらそのツテを使わせてもらおう」
「再度にひとつお願いがあるのだが」
「なんだい?」
「この広間への入口を封鎖させて貰ってもいいだろうか?貴方への干渉を防ぐのとゴーレムが人を襲うのを防ぐためだ、もちろん人が通れる道は残して誰もここにこれないように警告の看板を立てる」
「ああ、それなら先程封鎖した入口はこの場所に入る扉の役目も兼ねている、私は通ることが出来るが他の人は通過できない、君たちが出ていったら封鎖しよう」
「わかった、ありがとう。では立入禁止の看板だけ扉の前に用意させよう」
「承知したよ、では扉を開けよう」
ヴェルディムは自分が出てきた部屋に戻り、遠隔で扉を開ける。
リナは、こういった技術も学びたいと心で考えていた。
二人は目的をある意味目的を達成し、カルドラフへの帰途へついた。




