17.『案件4』謎の敵と遭遇、苦戦する二人
この作品はカクヨム先行で公開している作品です。
カクヨムのページはこちらです。
https://kakuyomu.jp/works/822139839209446983
魔晶石採掘場の奥に現れた新しいダンジョンと謎の魔物退治を王国から依頼されて、リナとアイリィは探検に来ていた。
――そして現在
コウモリ登場の余韻からアイリィは先程よりリナの背中に密着してピッタリとくっつきながら歩いてる。
「アイリィ…歩きにくいって…」
「だってだって…怖いんですよ…」
余りにも密着しすぎて歩いてるアイリィに対してリナはいたずらっぽく警告する。
「あんまり近くにいると時々あたってるその胸のデカイ奴揉みしだくぞ」
「えっ…」
リナは自身の左手で何かを揉むような仕草をアイリィに見せて離れるように警告した、だがアイリィは顎に左手を当てて顔を赤らめながら恥ずかしそうに答える。
「し…師匠なら別にいいですよ…」
冗談で言ったのに真顔で返してきたアイリィの言葉を聞いてリナは顔を真っ赤にして思わず大きく反応してしまう。
「ばっ…バカッ!恥ずかしいこと真顔で言うんじゃない!冗談だよ冗談!」
冗談と言われ少し残念そうに見えるアイリィ。
彼女にはちゃんとした伴侶を見つけ幸せになって欲しいと考えていたリナは、もう少し情操教育が必要だなと感じた。
そんな中、リナの鋭敏なエルフ耳は不気味な静寂の奥に潜む、わずかな異音を捉えていた。
「この先に大きい空洞というか空間がある…そこになにかデカイ存在がいるな」
「えっ!?な、なんですか!?」
「正体はわからん、ただ生命反応がないのが気になるが…魔法の力を僅かに感じる」
リナは杖を構え地形と敵の正体を確認しようとした。
だが地形は読み取れるが巨大な存在については確認が出来ない、魔法で探知出来ない何かがそこにいるのだけが解るくらいだ。
「アイリィ行こう、目的の魔物かもしれん」
「は、はい…」
二人は狭く暗く湿った通路を突き進み続けると洞窟とは思えないような光が見える。
ダンジョンの最深部と思われる場所に出ると、まるで人工的に作られたような巨大なドーム状の空洞が広がっていた。
周囲には無数の蒼白い水晶が埋め込まれており、淡い燐光を放って空間全体を幻想的な光に包んでいる。
「なんだここは…?あきらかに人工的に作られた空間だな……」
「すごいです…洞窟なのに外みたいに明るいです」
「明かりがあるからランタン置いて節約だな、アイリィも外して置いてこうな」
「はい、わかりました」
ランタンの光を消した後入口近くに置き、リナは杖を右手で強く握りしめ周囲の様子を確認する。
二人の呼吸音しか聞こえない静寂の空間で僅かな地鳴りのような音が聞こえている。彼女は手にした杖から音の反応を確かめ発生源を調べていた。
「……こいつか?何かレンガで出来た柱の円柱みたいだが」
リナが空間の中央に立ちそびえている柱へと視線を向け歩き出す。
そこには、巨大な円柱のような蒼い岩塊が鎮座していた。
「……ただの柱じゃないんですか?」
アイリィが柱に近づいた瞬間、突如として地鳴りのような重低音が空洞内に響き渡り柱が動き出し始める。
「アイリィ!!コイツから離れろ!!」
「は、はいっ!」
リナとアイリィは風魔法を使い動き出した物体から一瞬で数メートル後ろに飛ぶ。
巨大な柱に積み上げられた薄青い煉瓦が、まるで意志を持った生き物のように蠢き、巨大な人型へと形を変えていく。
ゴゴゴゴゴ……。
関節が擦れ合うたびに軋むような音が響きが、その巨体が全貌を現した。
全身が純度の高い青い結晶石で作られたよう不気味さを見せる石像の巨兵。
頭部の顔らしき場所から二つの赤く燃え上がるような光が目の様に不気味に光る。
巨兵は何かに気付き重い一歩を踏み出す、振動で床の石畳は悲鳴を上げて凄まじい足音が周囲の空気を震わせる。
「こいつゴーレムか?今まで見たこと無いタイプだな」
「し、ししし、師匠!どうしましょう!?」
立ち上がった巨兵はアイリィの方向に向かって進んできている。
歩く速度はそれ程早くないが丸太のように太い腕を振りながら徐々に距離を詰めて来た。
リナは迫りくる巨兵がなぜアイリィを狙って来ているのか考える。
(なんだ?なぜアイリィを狙う?魔法使いの魔力に反応するならこっちを狙って来てもおかしくないが、もしかして!)
「魔力解放!」
リナは自身の体内に封じ込めている魔力を解放した。
すると巨兵は突如として進む方向を変更し魔力が高いリナへと直進して来た。
相手の動きを見てアイリィを狙った理由をリナは即座に理解した、恐らく初めて来たダンジョンで動揺したのか彼女の体内から微妙に魔力が漏れていたからだ。
(こんな動揺で魔力漏らすなんて、あとでアイリィはキツイ修行確定だな)
ゴーレムが咆哮に似た重い駆動音を上げ、どんどんと迫ってくる。
腕が届く距離まで来ると巨大な拳を振り上げこちらへ向けて振り下ろしてきた、だがリナは動じる事なく網の目のように張り巡らせた物理防御魔法を自身の眼の前へ展開して相手の攻撃を受けとめようとした。
だが相手の拳は防御魔法をいとも簡単に打ち破りリナへと振り降ろしてきた。
「なにっ!?」
魔法防御を突破してきた相手の拳をリナは左に飛んで攻撃をかわした。体勢を戻しながら次の一手を考える間に敵の特性を探るためアイリィに攻撃の指示を出す。
「アイリィ!攻撃しろ!魔力解放して雷魔法だ!」
「は、はいっ!魔力解放します」
アイリィが魔力解放を行うと彼女の体内で抑え込まれていたマナエネルギーが青白いオーラの様な光として具現化し、彼女の体が強力な魔力に包まれた魔術師としての本来の力を取り戻す。
「厄災の雷鳴!」
アイリの掛け声によりゴーレム頭上に大型の魔法陣が現れ極太で強大な三本の雷撃を巨体に落とす。余りにも巨大な雷のせいで周辺に電気が帯電し光を放っている。
電撃の影響か巨兵は腕を地面につけて動きを止めた。
「やったか?」
だが巨兵は何事もなかったかのように、またも動き出し今度は魔法攻撃を当てたアイリィの方へ向き直す。
「し、師匠!雷を思いっきりぶつけたのに効いてません!」
リナは巨兵の行動を見て相手の攻撃に対し自動で反撃に向かう能力もあると気付く。
それを見て間髪入れず次の攻撃へと移る。
「だったら!」
掛け声と共にリナが杖を構えると周囲の空気が一気に極大な冷気に包まれる。
同時に巨兵の足元から一瞬で冷気が登り巨大な体全体を氷漬けにして固めて動きをとめた。
「これでどうだ?」
氷塊の一部となった巨兵は動きを停めたかに見えた、しかし固まっていた両腕が徐々に動き出し氷にヒビが入る。そのまま両腕を振り上げ体に纏わりついていた氷を吹き飛ばして何事もなかったかのように次の攻撃行動に移る。
「マジかよ…関節まで凍らせたんだぞ」
「し…師匠…これどうしようもなくないですか!?」
「アイリィ!燃やせ!全力だ!!」
「は、はい!深淵の煉獄炎!!
アイリィの掛け声と共に巨兵の周辺に大量の火の玉が出現し、杖を振りかざすと一気にその巨体へと降り注ぐ。集中した炎は強大な火球へ変貌し全身を包み鉄をも溶かすような高熱の火球に包まれた巨兵は、成すすべもなく燃え盛る。
強大な熱でその姿を変えるかと思ったが突然に両手を挙げ周辺の炎を自身の腹部へとまるで掃除機で吸い込むように体内に取り込んでしまう。
炎の熱で溶けると思った体は全くキズもなく平然として立ち尽くしている。
「うそ…鉄をも溶かすアビサル・フレアがあんな簡単に…」
「マズイぞ…コイツは魔法自体の効果を弱体化している」
自分たちの前に立ちはだかる魔法が効かない巨兵を前に苦戦する二人の少女は打開策を探すべく動き出す。
次回 二人でディープダンジョン 3 に続く




