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15.『案件3』二人の恋愛、その結末

この作品はカクヨム先行で公開している作品です。

カクヨムのページはこちらです。

https://kakuyomu.jp/works/822139839209446983

二人の冒険者が長年の想いを確かめ合い、一夜を共に過ごして翌日の事。街はいつも通りの日常を送っていた。


外は眩しいほどの快晴で、登りきった太陽の位置から既に正午になっているのが見て取れる。。

宿屋の奥から最初に現れたのはバットで疲れた表情をしながらもどこか抜け落ちたように穏やかで、充足感に満ちている感じをかもし出していた。


その後ろからは、ブライアがいつもより慎重な足取りで現れた。

彼女の頬は内側から上気したような熱を帯びており、昨夜の『濃密な時間』を思い出すかのように眼の前の彼に視線を合わせにくくく目を泳がせていた。


だが勇気を出し、入口で立ち止まっていたバットのそばに寄り添い、そっと彼の手を握りしめる。バットは少し驚いたが視線を合わせることもせず、しっかりと握り返して相手をいたわる。


「……いこうか」


「…うん」


その言葉をきっかけに、二人は初々しい恋人同士のように歩幅を合わせ、ぎこちなくも幸せそうな足取りで石畳を歩き出した。

お互い昨夜の光景を心のなかでリフレインしながら二人の間に甘くて気恥ずかしい沈黙が流れる。明らかに昨日まで相棒という関係ではない、二人の男女は恋人に変わってしまったのだ。


街を行き交う人々は、そんな二人を見て微笑ましい視線を送る。

初々しい二人は握られた手の熱さだけを感じとり幸せを噛み締めお互い口元を綻ばせていた。恋人のような甘いひと時を噛み締めながら歩く二人に突然と後ろから声をかけてきた人物がいた。


「おやおや…ゆうべはお楽しみでしたかぁ?お熱いですねえ」


声を掛けてきたのは、魔法店のリナであった。

仲睦まじい二人の姿を見て少しからかうような口調で話しかけて来た。

店主の視線を感じた二人は突然と握っていた手を勢いよく離し普段通りのように取り繕うとする。


「恥ずかしがること無いじゃないか、手を繋いでたって別に悪くはない」


リナは、ブライアに視線を送り二人の態度から目的が達成出来たと察した。

彼女に確認の意味も込めて改めて聞いていく。


「ブライア、想いは届いたな、上手くいったんだな?」


「はい…ありがとうございます、リナさんとベロニカさんのおかげです」


だが、この状況に何故か若干納得していないようにバットがリナに詰め寄ってくる。


「おい魔法屋!どういう事だよ!ブライアの問題解決がなんか変な方向に行ってるじゃねえか!」


しかし、リナは全く動じず二人の事について事実だけを説明した。


「いいじゃないか、これが良いきっかけだったんだよ二人の距離も縮まったし悪いことじゃないだろ?それにブライアの問題も解決できる、まさに一石二鳥だ」


「ほ…本当にこんな事で解決できるのか?」


「先輩からの大事なアドバイスだ、恐らく治るだろうさ」


「ああ…これから一週間は冒険に行くなよ、筋肉密度を下げなきゃいけないから、休暇のつもりでゆっくり過ごして最後はうちに来てくれ、あと毎日ブライアを愛してあげろよ、これも必要なことだ」


「い…一週間ずっと…?」


リナからの突然の要求を聞き、バットはチラリと横目にブライアに視線を送り相手の表情を見て様子を伺う。しかしまんざらでも無いようで頬を赤く染めモジモジと体を捻らせながら肯定の意味を込めて照れながら答えた。


「わ…私は毎日でも大丈夫だよ…?」


リナは本来の目的を思い出し仲睦まじい二人を見送るように別れの挨拶をした。


「それじゃあ、お熱いお二人の邪魔をしちゃ悪いから私は商売に出かけるよ、また来週に店で会おうな」


手を振りながら去っていく店主の後ろ姿を見ながら二人は静かに見つめ合い、また街の方に消えていくのであった。


――それから一週間後


お昼前の時間、魔法店の鐘が鳴り、約束通り二人の冒険者がやってきた。

店には待ち構えていたようにリナとアイリィが店頭に立っていた。

店主を見つけたバットが元気よく呼びかけてきた。


「よう!約束通り来たぞ」


二人を見たリナは、今日の目的について外で確認を行うため移動する事にした。


「約束通り来てくれたか、じゃあちょっと表に出てから店の裏手に来てくれ、そこで結果を見てみよう」


三人は店から揃って裏手の広場に移動した、ブライアの回復魔法による体への影響を確認するためだ。リナは突如としてバットに指を向け魔法を飛ばす。


「…って痛えじゃないか!」


リナが飛ばした魔法はバットの腕に当たり、大体2cm程度の切り傷が出来た。


「悪いな、指先程度の傷では効果が解りにくいから少しだけ傷を作らせてもらった、ブライア回復してもらっていいか?」


「はい、わかりました」


ブライアは杖を構え魔法の詠唱を始めバットの腕に回復魔法をかける。


『大地と水の精霊よ…その息吹をもって彼の者の肉体の調和を取り戻し、新たなる活力を結べ!ボディ・マナヒール!』」


回復魔法を使ったブライアは、自身に起きている体の変化に対して驚きを隠せなかった。


「ウソ…体の痛みが殆ど感じない位まで下がってる…」


「先輩の教えは確かだったって事だな、私から見てもブライアの体内を流れるマナが以前よりスムーズに通っているのが見えた、もう少し時間は掛かりそうだが大丈夫そうだな」


「ありがとうございます!これで他にも色々魔法を覚えてバットを助けられます」


「それじゃあ、これお返しするよ」


リナは懐から袋を取り出しバットへと渡す。

バットは袋を開けて中身を確認すると金貨が入っていた。


「必要経費分の金貨三枚だけ差し引いた、あとの残りだ受け取ってくれ」


その言葉を聞いてバット報酬の変換に納得がいかないようでリナへ返そうとした。


「いや!こちらから依頼したのに報酬返すってどういう事だ、貰ってくれていいよ!」


ブライアも同じ意見でバットに同調するように変換を拒否した。


「そうですよ!貰ってください」


納得言っていない二人に対してリナは事情を説明した。


「元々は彫金師に専用防具を依頼する為の費用も含めてたんだ、今回はうちの手数料だけで充分だ、獣人族への回復魔法への付与と問題の解決方法を勉強させてもらったからな今後の商売のネタになる、それを含めての報酬減額だ」


それでもブライアは納得していないようで変換を拒否してきた。


「ダメですよ!一度払ったんだから貰ってください!」


リナは正攻法ではダメだと感じバットを呼び寄せて説得を試みた。


「ちょっとバット近くに来て耳を貸せ」


呼ばれたバットはリナの近くに寄り腰を屈めて耳を寄せて話を聞いた。


「(…先輩の獣人族からの話だがブライアはどんどん大人の体になっていくはずだ、そうすると洋服や装備を頻繁に変える必要が出てくるぞ)」


「(そ…そうなのか?)」


「(…ああ、先日あった獣人族の女性は色っぽい体してたぞ、そうなる可能性は高いからこのお金で装備代に備えておけ、あとブライアにはお祝いとか何とか言ってあとで誤魔化しといてくれ説得はたのんだ)」


二人で秘密の会話という密約が終わった後に、バットが納得したような雰囲気を醸し出しながら代金の変換に応じた。


「そ…そういう事なら解った、依頼しておいて何かタダ働きさせたみたいで悪いな」


「まあ、それは大丈夫だ、一応最低限の経費は貰ってるタダ働きではないから気にするな」


「ブライア、後で話すからとりあえず受け取ることにしたよ」


「わかりました、後で何があったか教えてね」


リナは心のなかで今回の依頼について考えていた。


(二人には内緒だけど師匠が適当にやった後始末も含めてるんだ、だからそんな報酬は貰えないんだよ…これはタリスマンを経営する店長としてのケジメの意味だ)


「目的も達成出来たし、それじゃあ行くか、リナありがとうな!」


「リナさんありがとうございました!」


「まあ、今回私の出番は少なかったがな、頑張って旅を続けてくれ」


リナは二人に手を振り別れを告げ見送った。

魔法店を後にした二人の冒険者は、恋人という新たな関係に昇華し幸せそうに街の中へと消えていった。その後二人は元々住んでいた村へ戻り、夫婦となって幸せに暮らし始めたという噂があったが、それはまた別の話。

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