14.『案件3』種族を超えた想い、踏み出す二人
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トラザ村にいた回復魔法が使えるもう一人の獣人族『ベロニカ』からブライアの体に起きている問題の解決方を教えてもらい、二人はみんなに見送られて早朝に待ち合わせていたカルドラフへ帰還する馬車に乗ってこれからの事について二人で打ち合わせをした。
リナがある提案をした。
それは今夜宿泊する宿をいつもの宿ではなくオススメの特別な所に行く提案だ。
「カルドラフに恋仲の男女が宿泊する豪華な宿屋『イカルス』ってのがある、そこにまずバットを誘い込むんだ、あとはブライアが告白して後は押し倒す流れでどうだ?」
「うまくいくでしょうか…?」
「私が思うにバットは少なくともブライアに対して好意はあると踏んでいる…ただの仲間にポンと大金を払うか?」
「でもバットは優しいから…」
「損得考えず仲間に対して全力で思いやる気持ち、それは気持ちの強さの現れだと私は感じている、二人は今の関係性が壊れるのを恐れてずっと二の足を踏んで進めずにいた、こういう時はどちらかが押す必要がある、ブライア勇気を出すんだ」
ブライアはリナの強烈な押しとベロニカに言われたことでかなり心は揺れ動く。
長年認めた秘めた想い、逃げ道は無いと決めて答えをだした。
「わかりました…頑張ってみます」
彼女が決断した後に馬車がカルドラフへ到着した、予定通り夕刻の到着だが帰還して早速作戦開始だ。
まずはバットを探す恐らく彼はブライアの帰りを待って今日の宿に行くはずだ。
タリスマンに言ったところに入口で丁度バットが待っていた。
リナはブライアとの去り際に耳元で小さくエールを送って彼女の覚悟を決めさせる。
「(…頑張って決めてこい!ブライアの覚悟を見せてやれ!)」
そう言って、軽くウインクしてリナはタリスマンへと戻っていた。
バットと二人きりになったブライアはまずは目的の場所へ誘い出す作戦に動き出す。
「あのね、バット今日は少し違う所に泊まりたいの…いいかな?」
「ん?なんでだ、普通の宿じゃダメなのか?」
いつも素直についていく自分が突然こんな誘いが来ると少し疑われていると感じた、ブライアは何時よりも必死にお願いしてみた。
「おねがい!何も聞かないで一緒に行って!」
必死に願ってくるブライアはを見てよくバットは状況が飲み込めていなかった、だがいつも大人しい彼女が必死に行きたいのは何か理由があるのだと感じ承諾した。
「わかったよ、ついていく」
いつもはブライアを隣に他愛もない話をしながら歩くバットだったが、今日は二人共全くの無言で歩幅を合わせながら歩いていく。
しばらくすると大きな『ICARUS』という看板が掲げられた建物に到着した。
大理石で作られたような白い柱で立てられた大きな建物で、いかにも高級宿という感じを醸し出している、
ブライアは躊躇せず中に入り、入口の中年女性に受付と料金を支払いを済ませる。
女性は部屋の鍵を渡し宿泊する部屋の案内を行って二人を歓迎した。
「階段上がって三階の一番奥の部屋だよ、ごゆっくりね」
鍵を受け取り、二人揃って階段を登り三階の奥の部屋へと進む。
扉の鍵を開け中に入ると部屋は既に快適な温度まで暖められていた。
室内では、直ぐに二人用の大きめのベットと別の部屋にお風呂まで用意されており、流石に高級宿のもてなしを感じられる快適な室内環境だ。
バットとブライアは剣と杖を荷物置き場に置き防具類とローブを脱ぎ捨てていく。
彼女は置いた荷物や洋服を綺麗にかけて丁寧に片付けていく間に彼にお風呂に入るように促す。
「バット…お風呂入ってきたら?体洗うとさっぱりするよ」
「お、おう…先に風呂浴びてくるよ」
バットは短くそう告げると、さっさと浴室の扉を開け中に入っていった。
体を備え付けの石鹸とタオルで洗い汚れを落とし湯船に軽く浸かってふと考える。
(なんか恋人どうしみたいだな…)
静かに考えながら今の状況を飲み込めずに混乱し早々に湯船から上り戻ってきた。
彼は宿屋が用意した簡素な風呂上がり用の衣服を無造作に羽織って、頭からは湯気をだして、スッキリとした雰囲気を出しながら戻ってきた。
「ふう…さっぱりしたぜ」
そう言ってバットはそのままベットの上に腰掛け座り込む。
ブライアは、バットが戻ってきたので入れ替わりでお風呂へ向かう。
「じゃあ、私もちょっと入ってくるね」
彼女は薄着だった衣服を脱ぎ捨て浴室へ入り、椅子に座る。
ブライアはこれからのために普段より念入りに髪と体を洗って汚れが全く無いくらい綺麗な体にして泡を洗い流す。
洗い流した後は湯船へを体を沈めて全身を暖め湯をはみながらこれからの事を考えていた。
(なるようになるかな…ううん弱気になっちゃいけない!頑張る!)
お風呂から上がった彼女は、宿屋が用意した浴衣ではなく大きめのタオルを無造作に体に一枚巻いて出てきた。湯上がりの熱で暖められた小麦色の肌からは、ほのかな桜色が差している。薄い布地を通して、まだ未成熟な女性の体を非常に魅力的な感じで浮かび上がっていた。
バットはその姿を見て思わず息を呑んだ。
いつもの大人しいブライアからは感じない、彼女の根源にある女性っぽさが溢れ出していた。
ブライアはベットに静かに腰を下ろし、湯気の残る髪をタオルで拭きながら、バットに寄り添う。
少し落ち着いてから彼女はそっと頭をバットの肩に預けた。
バットは、彼女の熱を帯びた肌から漂う石鹸の香りを深く吸い込んだ。
その様子を感じながらブライアは静かに肩に乗せたまま自分の気持ちを語りだした。
「あのね…私、バットにずっとに隠してたことが二つあるの…」
「な、なんだ…?」
「一つは回復魔法のこと、実はね魔法を使うと体に痛みが走っていたの、でもそれは貴方を守るためにずっと気付かれないように我慢していた、でもバットはそんな私の事を見抜いていたんでしょ?」
「それは初耳だった、でも何か辛そうにしているのは解ってた…そうか、魔法を使うと体が痛んでいたのか…だったらもう使うのやめないか?」
「ううん、これは私が好きでやってる事だからバットがやめてと言っても止める気はないの、でも解決方法は見つかったからもう大丈夫」
「そう…なのか?本当に治るのか」
「うん、たぶんね…そしてもう一つの隠し事も聞いてほしいの」
「わかった、聞くよ」
そこでブライアは少し言葉に詰まる。
今日のメインである二人の関係性が変わるかもしれない大事な事項だからだ。
しかし彼女は覚悟を決め自分の気持ちを語りだした。
「小さい時、バットに助けられてからずっと家族みたいだと思ってた、でも一緒に冒険して私は守られているのに気付いた、貴方はいつも優しくていつしか自分の中でその思いが変化していたの」
「……」
「でも、あなたは人族、私は獣人族…種族が違うからその思いはずっと我慢してた、だけどある人に出会ってもう我慢するなって言われたの…だから聞いて」
「私!バットが好きなの、もちろん一人の男性として!貴方以外考えられないの!」
「バットは私の事どう想ってるか聞かせてくれるかな…」
二人きりの部屋に長い沈黙が続く。
真剣なブライアの愛の告白に対して自分自身がどのような気持ちかバットは整理がつかなかった。その素直な気持ちを伝えた。
「正直わからない…ずっとブライアとは家族みたいだと思ってたから…」
「家族だから、獣人族だから恋愛対象にならないって事…?」
「一緒に冒険して家族の様に話して何も考えない等にしていた、でも俺が傷ついた時に回復魔法を掛けてくれている時、辛そうな表情が僅かに見えて心がゾワッとしたんだ、何か辛い事があるんじゃないかと」
「…続けて」
「二人で冒険がするのが嫌なのかとも思った、でも魔法を使うときだけ表情が曇る事に気付いた。だからなんとかしてやりたいと思ったから急いで魔法屋に来たんだ」
「…うん」
「でもブライアと数日離れてみて、寂しいと思った…気晴らしに色んな店を回ったり酒場に行ったりしたが一人でいる事だけで、心に穴が空いた感じが塞がらなかった」
「そうか…俺ブライアの事好きだったんだ…これが好きだという感情で無くてなんというんだ!わかったよ!」
「ブライア、好きだ!!人とか獣人とか関係ねえ!お前が好きだ!」
その言葉を聞き、ブライアの目から大粒の涙が流れた。
自分の想いを受け止めてくれ、優しくて頼りになる彼の真の気持ち、自分のことを好きだという気持ちを聞き、安堵と嬉しさに感情が高まり両手を広げ思いっきりバットに抱きつき泣いた。
「ううぅ…嬉しい…嬉しいよバットぉ!断られたらどうしようかど思っだよおお!」
バットはブライアの密着した体を肌に感じながら自身のよこしまな感情を抑え、泣きじゃくるブライアの頭を優しく撫でて落ち着けようとした。
数分程泣いたろうか、落ち着きを取り戻したブライアはバットの顔を見据え静かに目を閉じ口を上に向け差し出す。
バットは緊張しながらもゆっくりと目を閉じながら自分の唇をブライアにゆっくりと重ねた。二人ともファーストキスでぎこちない感じではあったが心の繋がりを確かめ合うのには充分であった。
しばらく唇を重ねた後、ゆっくり離れ高揚した表情を見せながらブライアは笑顔を見せてこう言った。
「私のファーストキス…バットにあげちゃった」
バットはその言葉を聞き自分の顔も真っ赤になって興奮している自分を感じてしまった。相手の状況を察してブライアは正面から両手で抱きついて耳元に顔を近づける。
そして甘い言葉で囁いた。
「あのね…もう一つのお願いがあるの」
「も…もうひとつって?」
「私…バットの赤ちゃんが欲しいです…だから今から私と子作り一杯してください」
バットはブライアの口づけと体の感触を感じている中、彼女の甘い囁きを聞いて興奮を我慢できずに理性が吹っ飛んでしまいブライアをベットに押し倒した。
押し倒されたブライアは、恍惚とした表情を見せながらとても嬉しそうだった。
ランプの光から壁に映る二人の薄い影は、ベッドで重なりあい安らぎの夜を静かに溶け合っていき二人は朝まで長く熱い夜を過ごしていくのであった。




