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12.『案件3』問題の解決方法と先輩獣人族の存在

この作品はカクヨム先行で公開している作品です。

カクヨムのページはこちらです。

https://kakuyomu.jp/works/822139839209446983

バットの依頼からブライア用の専用防具を作るために商業都市の開けた商店街の中にある彫金ギルドへとリナは向かった。


ギルドの名前は『金の刻印』だ。

彫金ギルドらしく派手な看板を掲げた店で、この都市国家の中では彫金細工に定評がある店だった。


リナが店の扉を押し開けると、店内の中には様々な彫金細工が綺羅びやかに並べてあり光に溢れた綺麗な店内だ、お店に入ると看板娘が来訪の挨拶を交わしてくる。


「いらっしゃいませ」


彫金ギルドの店員でギルドの看板嬢フレイが挨拶で迎えてくれる。

薄い紺色の長髪で目元はキリッとしたツリ目だが顔立ちは整っており、真面目な雰囲気を醸し出している。アイリィ程ではないがかなりの美人だ。

綺麗な制服にスラリとしたボディラインが際立ちなかなか男好みの体型をしている。

リナは、目的の人物と会うためにフレイに呼びかける。


「ゲイルいるかい?」


「ギルドマスターですね、奥にいらっしゃいます、どうぞ」


奥の部屋に進むと右目に小さい顕微鏡のような眼鏡を掛け、金槌を叩きながら金属に細工を彫り込む作業をしている。

ドワーフ族であるため年の頃は定かではないが、彫金細工では都市国家では並ぶものがいない凄腕を持つ男性が作業を進めていた。


彼こそが、このギルドのマスターであり、最高の超金細工師である『ゲイル』だ。

リナが部屋に入るとすぐに誰が入って来たかを気づき声をかけてきた。


「なんだリナ?今忙しいんだがまた厄介事持ってきたんじゃないだろうな?」


ゲイルは、リナを一瞬見ただけで再び金槌を振り下ろし、細工作業を進めている。

その言葉には、入ってきた人の相手が出来ないほど忙しい様子が垣間見える。

リナは、そんな態度に臆することなく、冷静な口調で用件を切り出した。


「やあ、ゲイル。ちょっとあなたに特注品を依頼しに来たんだ。それもなるべく急ぎでな」


ゲイルは初めて手を止め、リナの顔に視線を向けて問いかけた。


「…おいおい、今彫金細工の依頼が立て込んでで急ぎの依頼は受けられんぞ?ちなみに要求の品は何だ?」


「なに『魔晶石』を埋め込んだ首輪ひとつと腕輪をふたつ作って欲しいだけだ、細工の模様は私が描くから、そのまま彫ってくれればいい、マナと魔力を首輪で分散して腕輪に収束・放出する機能を持たせたものだよ、もちろん急ぎの料金も払う」


ゲイルは相手の要求を聞き少し困ったような表情をして現状についてリナに語る


「魔晶石入りだって!?そいつは困ったな、実はここ最近魔晶石の供給が減っていて魔法系の彫金細工オーダーが滞ってるんだよ」


『魔晶石』とは、カルドラフで多く算出される貴重な鉱石で自然界に存在するマナ (精霊) エネルギーが白鉱石結晶に長い期間を得て蓄積された鉱石である。


ゲイルは棚に置いている帳簿を取り出し、依頼の件数を確認しだした。

制作待ちの件数の多さを見て鼻でフッと笑い、リナへ帳簿を見せながら語った。


「見てみろ、ざっと三十件はある。これは魔晶石の入荷待ちで全部待ってもらってるんだ、一番古いのだと二週間以上だ、それをすっ飛ばしてお主の依頼をやるとなると…かなり費用がかかるぞ?」


「ちなみに魔晶石の供給が減ってる理由は何だい?」


「魔晶石の採掘は都市国家が管理してるからな、細かい情報は入って来てない、だが何か採掘場で問題が起きてるんだろう、それ以上は知らん」


リナは相手の言葉を聞き、問題解決のための提案をゲイルに提示する。


「わかった、つまり魔晶石をなんとかすればいいわけだな?」


その言葉を聞き、ゲイルはアゴに手を当て自分のヒゲを伸ばしながら考える。

リナの強気な宣言に対して、自身の受注状況と天秤にかけ何が最適かを選択しているが、結果が出たのかリナに問いかけてきた。


「できるのか?確かに魔晶石があればこちらの仕事もある程度片付くから優先順位を上げる見返りとしては悪くない提案だ。…いいだろう。持ってきたら作ってやるさ」


「よーし!それなら魔晶石の問題をなんとかしてみるよ」


「わかった、しかしお主の依頼はいつも突拍子もないが何でまた突然彫金リングが必要になったんだ?」


「ちょっと珍しい依頼でね、獣人族のヒーラーに起きてる問題を解消してあげたくて」


相手からの目的を聞いてゲイルは突然驚いたように声を上げる。


「獣人族のヒーラーだって!?それはトラザ村の娘の事か?」


「トラザ村…いやその娘はカイネン村出身だが、他にそんな娘がいるのか!?」


「ああ、数年ほど前にその村に滞在したことがあってな、子どもたちが転んで怪我した時に獣人族の娘が魔法で治療してたんだ、その時は珍しい程度にしか思ってなかったが…」


ゲイルの話を聞き、まさか他にも獣人族で回復魔法が使える人物が存在していたとは驚いた、もしかすると別の解決策を見つけられるかもしれない、念の為実際に遭遇した時に起きた詳細を確認してみる事にした。


「その獣人族の娘は回復魔法を使っていた時に辛そうな顔をしていたか?」


過去の出来事を聞かれ、アゴ髭を伸ばし思い出し答えた。


「いや、至極当たり前の用に魔法を使って表情も平然としていたな、辛そうな感じには見えなかった」


装備以外での解決策があるかも知れないと感じたリナは善は急げと動き出す。


「解った!ありがとう!ちょっと、彫金リングの件は保留にしといてくれ、替わりに魔晶石の問題はなんとかするから」


ゲイルにお礼を伝えてリナは速攻でお店を後にした。


「おいおい!まったく…相変わらずだな…」


有益な情報を手に入れたのでリナは全速力でタリスマンへ戻ってきた。

偶然かちょうど入口にバットとブライアが来訪していたため、二人に事情を話す。


「ちょっとブライアの問題解決に、少し遠征してくるので二日程彼女を借りられないか?恐らく明日朝出発して翌日の夕方には帰ってこれる」


「ああ、問題ないぜ?それで治るのか?」


「行ってみないとわからないが可能性は高いと思う」


リナはブライアにも念の為了承を取る。


「ブライアもそれでいいか?」


「わかりました、お供します」


二人の返事を聞き、明日の朝に都市国家を出る約束をしてタリスマンに戻る。

翌朝、アイリィには数日間留守にする旨を伝えてタリスマン前に来ていたブライアと共に輸送馬車の乗り場へ向かう。


トラザ村は北のヴォルゼリア王国近くにある村落でカルドラフからは概ね半日ほどかかる、二人でヴォルゼリア王国行きの馬車に乗り込み目的の村まで出発した。


馬車の乗員は二人だけで後はほぼ荷物のため、二人きりの状態だ。

移動中にブライアは気になったのかリナへと問いかけてきた。


「あの、ちょっと聞いていいですか?なんで突然別の場所に行くことになったんでしょうか?」


相手の疑問はもっともだ、アイテムで治療をする事を伝えておいて突然の移動に困惑しているのであろう、疑問に答えるためこれまでの経緯を語る。


「実は彫金ギルドに依頼しに行ったんだけど、材料がなくて時間がかかると言われたんだ、それで依頼の内容でブライアの事を話したらトラザ村に獣人族で回復魔法が使える娘がいると教えられたんだ」


「私以外に獣人族で回復魔法が使える人がいるんですか!?」


「ああ、そうらしい。もう一つ驚いたのはその娘は魔法を行使する時に体に痛みがないようで、もしかしたら解決方法を知っているかもと思って二人で行く事に決めたんだ」


「そうなんですか、なんか他にも私みたいな人がいるなんて少し楽しみです」


「まあ、着くのは夕方になるから、私は朝早く起きたのでちょっと一眠りするわ」


「わかりました」


ブライアはこれから向かう先に解決方法があるかも知れないという希望に若干の高揚感を出しながら静かに時を待った。

二人は馬車に揺られながらトラザ村へと向かうのであった。


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